「映画ファンの知性を判定するリトマス試験紙」フォレスト・ガンプ 一期一会 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
映画ファンの知性を判定するリトマス試験紙
本作は、デジタル映像技術の進歩を映画ファンに見せつけるのが第一の狙い。
第二に、その映像技術で米国現代史をパロディ化したら、さぞ面白かろうという発想がある。
この狙いの下、フォレストはケネディ大統領やジョン・レノンをはじめ米現代史上のヒーロー達と、デジタル映像で「共演」し、ウォーターゲートホテルに宿泊しニクソン陣営の工作員を目撃する狂言回しの役を担う。
同様にしてフォレストはアメフト人気を体現し、プレスリーのエロビス風腰使いを編み出し、ベトナム戦争に従軍しては勲章を貰う大活躍をしながら反戦集会で演説し、中国とのピンポン外交で主役を演じて、挙げ句にはアップル株でボロ儲けして、北米を何回も横断してはジョギングブームをつくり出す超人w それがフォレストガンプである。
同様にヒロインも時代のトピックスを引き回す道化役として、フォーク音楽ブームやヒッピーカルチャーを体現し、そのたびにガンプに難所を救出される人格破綻女を演じることになる。
映画で描かれた米国現代史のあれこれのエピソードは、日本でも有名なものが多く、それなりに楽しめるし、それだけが本作の価値だろう。
そもそも米国の全ての家庭で共有されている流行や政治的、社会的事件と地続きで、そのパロディを楽しむ土壌を前提に作られた映画なのである。
例えば小生は、本作BGMのヒット曲を全部持っているし、ジョン・レノンのイマジンの歌詞も暗唱できる。だから、無所有、無宗教、イマジンという会話の流れがとても面白い。しかし知らないと、単なるデジタル映像の加工シーンにしか見えないはずだ。
要は米国現代史に疎い人には面白い訳がない。そういう種類の映画なのである。しかし、そうは考えていない人も多いので困るw
例えば、フォレストとヒロインの恋愛ドラマとして観る人がいる。しかし、二人とも人物造形を諦めた道化回しだから、二人の関係のドラマとして観ると、かなり悲惨な内容になるしかない。超人vs.人格破綻女の純愛物語だって? 凄いなオイw という感じか。
また、エビ漁船の大成功などにより資産家となる出世物語と見ても、なかなか面白いが…まあ御伽話だし、これを見て出世の参考になることは一つもない。
さらには人間アタマが悪くても、善良で他人に親切にしていれば、幸運が訪れるという人生訓を読み取る方々もいるらしいが…まあ、知性を疑われるだろう。フォレストは人間を超えた超人であり、単なるアタマの弱い男などではない。
以上のようなわけで、本作は映画ファンの知性を判定するリトマス試験紙と化している、と言っても言い過ぎではなかろう。
その知性とは、「一期一会」などとあざと過ぎる副題をつけた日本の映画産業の、タチの悪い儲け主義を見抜く知性である。
え、お前は意地が悪いだろうって?
レビューから評者の性格判断するのはやめましょうねw