「己の欲望に背かずに」8 1/2 田沼(+−×÷)さんの映画レビュー(感想・評価)
己の欲望に背かずに
フェデリコ・フェリーニ監督のイタリア映画。
「創作に行き詰まった映画監督の苦悩…巨匠フェデリコ・フェリーニが現実と幻想を交えて描く自伝的名作」(「洋画専門チャンネル ザ・シネマ」からの引用)。
最初のシーンからすごい。リアリズムに徹した映画ばかり最近みていたが、こんなにも現実と幻想を交錯させ、現実を超越する映像表現が映画でできることを改めて気づかされる。
グイドも物語中で言っているが、映画は何でもありなのだ。もちろん肯定的な意味で。
グイドを取り巻く女たち。女たちは、彼の過去や欲望や母性の希求の表象である。それを物語の現実と幻想に同じ強度で登場させ、境界を融解させる。それは監督自身の現実が映画の幻想に反映され、またその幻想が現実にも作用していることを示しているようである。
ハーレムを幻想することは、現代のポリティカル・コレクトに反するように思える。しかしそれでも己の欲望に背かず描く姿勢は名作と呼ばれる所以であろう。
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