フィラデルフィア物語

劇場公開日:

解説

キャサリン・ヘプバーンを主役として、シアター・ギルドが上演してヒットしたフィリップ・バリー作の喜劇の映画化で、ヘプバーンがブロードウェイで一年間演じた役をつとめ「断崖」のケーリー・グラントと「桃色の店」のジェームズ・スチュアートが共に主演している。「恋愛手帳」の台詞を書いた劇作家であり、映画脚本家であるドナルド・オグデン・スチュワートが脚色し「ガス燈」「若草物語(1933)」のジョージ・キューカーが監督に当り「心の旅路」「ガス燈」のジョゼフ・ルッテンバーグが撮影を指揮し、音楽は「断崖」フランツ・ワックスマンが書いた。助演にはルース・ハッシー、ローランド・ヤング、ジョン・ハワード、ジョン・ホリデイ、メアリー・ナッシュ及び少女俳優ヴァジニア・ウィードラー、ヘンリー・ダニエルと腕利き逹をそろえている。なおヘプバーン主演のキューカー作品には「素晴らしい休日」「若草物語(1933)」「愛の鳴咽」等がある。またこれは1940年作品で、同年度のアカデミー脚本賞、主演男優賞を、両スチュワートが得たものである。

1940年製作/アメリカ
原題または英題:The Philadelphia Story
劇場公開日:1948年2月

ストーリー

フィアデルフィアの大富豪ロード家の長女トレイシーは、同じく上流のG・K・デクスター・ヘイヴンと恋愛におちて結婚したが、たちまち破境の嘆きを見た。それはトレイシーが世間知らずで、人の欠点を許容することが出来ず、完全な人格を相手に求めるところに原因して、デクスターがやけ酒を飲みすぎたのが直接の動機だった。しかしデクルターはなお彼女を愛している。そのトレイシーが貧困から身を起こして出世したジョージ・キットリッジと結婚することとなる。スパイという黄表紙雑誌の記者となり、南米へ行っていたデクスターは、トレイシーが間違った結婚をするのを助けようと帰ってくる。彼はスパイの記者マコーレイ・コナーとその恋人で写真班のエリザベス・イムブリーを、南米にいるトレイシーの弟の親友だといってつれて来る。コナーは小説家であるが、パンのためにいやいやスパイの記者をしている男で、フィラデルフィア名門の結婚式の模様などをすっぱ抜き記事にしたくなかったのである。さてデクスターをいまだに怒っているトレイシーは、彼のお節介に腹を立てたが、断ると父のあるダンサーのことをスパイが発表するというので、彼らを表向き客として泊めることになる。父のセスが別居しているのも、トレイシーが完全人格を望むくせで、母に無理矢理に追い出させたのである。花婿たるベキトリッジは、トレイシーを理解していないし、名門との縁組を最も関心事としているがトレイシーはそれに気づかず、立派な人格者として見ている。ところがデクスターのとコナーのあけっぷろげの愛すべき性格は、トレイシーの目を少しばかりあけたようであった。そして結婚式前夜のパーティーで、トレイシーとコナーはシャムパンを飲みすぎ、2人は暁近く恋を語り、二度ほどキッスする。そしてプールへ泳ぎに行き、酔い倒れたトレイシーを抱いてコナーが戻ってくるところに、デクスターとキトリッジが来合わせた。デクスターには分かったがキトリッジはコナーの話しを信じなかった。それで翌日トレイシーはキトリッジとの婚約を破棄した。今は人間には欠点ありと悟った彼女は、デクスターがどんなに彼女に適した男であるかが分かり彼と結婚式をあげる。

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映画レビュー

4.0ソフィスティケートされたスクリューボール・コメディの傑作

2024年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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映画ジャンルでいうロマンチック・コメディは、主人公の奇想天外な行動で物語を展開させるスクリューボール・コメディと、男女の粋で都会的な会話のやり取りで物語を展開するソフィスティケート・コメディに分類され、前者の代表作にはキャプラの「或る夜の出来事」やホークスの「教授と美女」などがあり、後者にはルビッチの「極楽特急」「ニノチカ」やワイルダーの「お熱いのがお好き」「アパートの鍵貸します」があります。ハリウッド全盛期の女性映画の名手ジョージ・キューカー監督のこの作品は、一応スクリューボール・コメディ扱いされるようですが、ブロードウェイのヒット舞台を映画化した脚本には洒落た台詞が散りばめられ、主要登場人物の無駄の無い場面登場の計算された話術と相俟って、ソフィスティケート(洗練された、上品な、大人的な、趣味の良い)されたものになっています。それでも1940年の戦前に製作されて漸く戦後の1948年に日本公開された当時の評価では、日本の批評家から特に注目される作品ではありませんでした。英会話が全くできない私がアメリカ映画の会話劇の面白さを指摘しても説得力がありませんが、主演のキャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント、そしてアカデミー賞を受賞したジェームズ・スチュワートの演技、特に会話時の表情演技を補足して観れば、十分以上の面白さを感じると思います。その的確な演出にキューカー監督の手堅さと、技巧を見せびらかさない自然な流れの巧さがあります。

先ずヘプバーンのために書き下ろしたフィリップ・バリーの戯曲から創作されたドナルド・オグデン・スチュワートの完成度が高い脚本が素晴しい。上流階級の贅沢で何不自由のない環境で育ち、知性も美貌も持ち合わせて女王のように振舞うトレイシー・サマンサ・ロードの設定が、気品と知的さを併せ持つヘプバーンにピッタリで、唯一の欠点である思いやりの無さを元夫のデクスター・ヘイブンと父セス・ロードに連続して指摘され落ち込む演技が見所となる。時間もお金もあって特にすることが無いのは精神衛生上良くないし、結婚すれば全てが思うように行かなくなる不満も募る。劇中でトレイシーが婚約者ジョージ・キットリッジに人の役に立つことがしたいと告白するが、それが本音とは身近にいる人ほど気付かないものです。これが男性だと、喧嘩別れで離婚したデグスターのように酒に溺れて失敗するパターンでしょう。人間の弱さを認めてから、初めて人間関係が築けるというのが、この映画の隠された主題とも言えます。貧乏暇なしは、考え方次第で幸せな事かも知れません。作家志望の雑誌記者マコーレイ・コナーは、女性カメラマンのエリザベスとコンビで舞台のロード邸で取材を遂行しようとシドニー社長の命令で仕方なく登場するのが面白い。お金持ちの豪邸を、観客の代わりになって徘徊する役目です。トレイシーからの逆取材でエリザベスのバツイチが発覚してコナーが驚くところが可笑しい。そこからエリザベスと会話を交わすデクスターが、ふたりの関係に気付く脚本の厚み。それは酒に酔ったコナーとトレイシーが男女の関係に行きそうになって婚約者ジョージの怒りを買う展開になって、ギブアンドテイクの結末を迎える大団円のラストシーンに繋がります。社会通念で時代を窺わせるのが、父親セスの浮気理由でしょう。妻のマーガレットは自分の責任と諦めても、長女のトレイシーは頑なに許せない。でも理由を聞くと、それはトレイシーが冷たいからだと言い訳します。父親がいつまでも若く居るには娘が優しくしてくれることが大事と言って、温か味のない家庭だから若い女性の愛人に走ると宣う。居場所が無いのは解りますが、そんな娘に育てた父親の自己責任はどこにいったのかと言いたくなります。登場人物の中で、この父親セスが一番子供です。次女シドニーの大人びてやんちゃな設定も、適度にストーリーに関わり分かり易いユーモアを出しているのもアメリカ映画らしさの1つ。主演3人に脇役7名が絡んで舞台劇の緊張感そのままに、無駄なく展開する女と男の愚痴喧嘩のコメディ。題材は風俗劇のようでも、ヘップバーンの気品ある演技、クールを貫くグラントの落ち着き、キャリアでは一番浅いスチュワートの親しみが持てるキャラクター確立のコンビネーションがいい。ジェームズ・スチュワートの演技が彼のベストとは言い切れないものの、泥酔した演技の巧さが光ります。ラストカットの写真を撮るのがスパイ社の社長シドニーのオチもユーモアたっぷり。何処かで観た顔と調べるとチャップリンの「独裁者」で印象に残るヘンリー・ダニエルでした。

音楽は「サンセット大通り」「陽のあたる場所」などのフランツ・ワックスマン、撮影は「哀愁」「心の旅路」のジョセフ・ルッテンバーグ、そして製作が「イブの総て」のジョセフ・L・マンキウイッツと超一流揃い。室内シーンが殆どでも、ルッテンバーグの美しい映像美は健在。ヘップバーンが水着姿でプールにダイビングするサービスシーンもあります。1930年代から40年代のハリウッド映画の中で確立したスクリューボール・コメディの逸品として後世に遺したい、大人のための傑作でした。

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Gustav

3.5リメイクの「上流社会」よりずっと良い映画。フィラデルフィアのブルジ...

2020年1月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

リメイクの「上流社会」よりずっと良い映画。フィラデルフィアのブルジョア家庭を舞台にした話だが、スノッブさが鼻につく前にジョージ・キューカーの流麗な演出に酔わされてしまう。ヒロインは一歩間違えばかなりイヤ味な女なのだが、そこをチャーミングすれすれに演じるキャサリン・ヘップバーンの上手さ。流れるような身体のラインも素晴らしい。ジェームズ・スチュワートはこの映画でオスカーを取ったが、演技はともかく主演とは言えない役(主演はケーリー・グランドでしょう)役なのに不思議。数多いオスカーの謎の一つでしょう。多分ハリウッドメジャー映画会社間の裏取引があったのでしょうね。

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もーさん

3.0「俺は記者ではない作家だ」とこだわるジェームズ・スチュアート

2019年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 金持ち・上流階級をある程度皮肉っている作風ではあるが、上流階級の結婚式というだけで記事になるアメリカもどこかおかしいし、それを真似てか、日本は芸能人の結婚式となると躍起になる。

 トレイシーはデクスターとは顔も合わせたくなかったが、彼女の妹とは大の仲良し。父親がダンサーと浮気中というネタもあるので、ややこしいことになっている。父親が来ないことを恥じたため伯父を父として紹介してしまったのだが、そこへ表れたのが本物の父親。などとコメディタッチの部分も含め前夜祭を迎える・・・

 酔ったコナーとキスしたりして、結婚は彼と行うのか?と思わせておいてしっかりとデクスターが見守っていた。トレイシーの心のゆれ具合がイマイチわかり辛かったのが残念。

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kossy

1.0タイトルなし(ネタバレ)

2018年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

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Takehiro

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