フィッシャー・キングのレビュー・感想・評価
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【”聖杯”或る出来事により、心に深い傷を負った二人の男の不思議な友情と再生していく様を描いたファンタジックな作品。ロビン・ウィリアムズの優しい笑顔は唯一無二のモノだなと実感する作品でもある。】
■過激なトークが売りの人気DJジャック・ルーカス(ジェフ・ブリッジス)の不用意なひと言であるバーで凄惨な発砲事件が発生する。
ジャックは社会的に非難され職を失い、やがて恋人・アン(マーセデス・ルール)の元で酒浸りの居候生活に入る。
ある日の晩、ジャックが暴漢に襲われているところをホームレスのペリー(ロビン・ウィリアムズ)に助けられる。
実はペリーは昔、大学教授であったが、ジャックの不用意な一言で起きた事件で、愛する美しい妻を亡くして以来、精神を病んでホームレスになっていたのである。
その事実を知ったジャックは、贖罪の為ペリーが好きなリディア(アマンダ・プラマー)との恋を実らせようとする。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作を鑑賞すると、矢張りロビン・ウィリアムズが浮かべる優しい笑顔は、唯一無二のモノだな、と実感する。
・妻を失ったペリーは、精神を病み屡々、”赤い騎士”がマントを翻させて、襲って来る妄想を観るのである。そして、彼は大学教授であった事を完全に忘れ、ホームレスとして暮らしている。
その事実を知ったジャックは、深い苦悩に陥るが、彼はアンの協力の基、ペリーに対し償いの行為を始めるのである。
・この償いの数々の行為の描き方が、クスクス笑える。アンが経営するレンタルビデオ屋の無料会員にしたり、アンとのWデートをしたり・・。
そして、ペリーとリディアは、良い仲になって行くのである。
・だが、ジャックは自分の仕事が再び軌道に乗り始めると、昔の様な人間に戻りつつあった。だが、そんな時にペリーは再び”赤い騎士”(この時の犯人は、実際はホームレス狩りの若者達)に襲われ、重傷を負う。
その報を聞いたジャックは、富豪の家に忍び込みトロフィー”聖杯”を盗み出し、ベッドに横たわるペリーの胸に置き、抱かせるのである。
<聖杯を手にしたペリーは奇跡的な回復をし、ジャックも又、優しき心を取り戻しアンに愛を告げるのである。
今作は、或る出来事により、心に深い傷を負った二人の男の奇妙で不思議なる友情と再生していく様を描いたファンタジックな作品なのである。
そして、観る側は”ロビン・ウィリアムズが浮かべる優しい笑顔は、唯一無二のモノだな”と実感する作品でもあるのである。>
釈然としない部分もあり…
ロヴィンウィリアムズ作品はチェックするようにしているのだけれど、これは観たことがなかったので。
毒舌を売りにしているラジオパーソナリティのジャックがいらぬことを言ってしまい、テロが起きてしまう。
事件を起こしたのは犯人の責任なんやけど、自分が余計なことを言わなければと鬱々とした生活を送るジャックは見ていて辛い。
パリーと出会ってからは、なんやかんや文句を言いつつ、パリーのために力になれることを考えちょっとずつ生き生きしはじめる。お互い出会ったことにより心の傷を癒しあっていく。
辛い記憶を変えることはできないけれど、2人で会えたことで親友になることができたし、これから支え合って生きていくんやろうなと感じられるラスト。
ジャックが立ち直りかけて、アンから距離を置こうとしてたけど(結局最後は仲直り)今まで支えてくれた人に対してあっさり切り捨てようとする感じがジャックという登場人物に好感を持てず…非情や。
パリーの記憶が戻ってジャックの言動とリンクしてしまったらその時はどうなるんやろうと、深読みしてしまった。
ロビンの笑顔
いつも笑っているような優しい眼差し。
ロビンの笑顔が大好きだった。
悲劇をコメディタッチにしてしまう監督、脚本もすごいと思った。
しかし、いつもふざけているばかりではない。
ぶっ飛んでるホームレス、憧れの彼女を前に恥じらう中年オヤジ、愛妻を亡くしたショックから立ち直れない(逆戻り?)夫。
全てが豹変するあたり、すごい。
ちょっとファンタジーっぽい、ご都合主義的なところもあり、うーん?という感じもあったかな。
仕事帰りの人達が駅構内で踊るシーンと中華レストランのシーンが好きだった。
テリー・ギリアムが「普通の名匠」になってしまった異色の名作
これを、音楽に例えて言うとですね。
前衛的な非音楽的演奏で、観客に音楽への嫌悪を植え付けることに快感を覚えてるんじゃないか?的なピアニストに、「月の光」を弾いてもらったら、はかなく沁みる美しいピアノを弾きやがったよ。
みたいな映画なわけですよ。
ヤバイなぁ。
この地下鉄駅のホールの、コントロールされた「集団行動」のごときシーン。ギリアム?え?テリー・ギリアムやよね、監督って。と、戸惑うしかありませんわ、こりゃ。いやいや、これ、マイフェアレディちゃうか?
中華レストランで気持ちよく自作の歌を歌うロビン・ウィリアムス。カメラは後ろに引いて行きます。フレームの中に入ってくる、レストランのスタッフが一人、二人、三人。えぇ。何?この気の利いた綺麗なフレーム設計。むちゃくちゃ良いです。
いや、違う。これはテリー・ギリアムじゃない。地下のボイラー室とホームレスが集う廃墟以外は、テリー・ギリアムじゃないですw
だって、清潔なんですよ。いや、綺麗なんです。美しいんですもん。芸術的なんですもん。ね?ギリアムじゃないでしょ?
と言いたくなるくらい、普通の映画でした。
本質はダブル・ラブコメ。
ドジっ子眼鏡のリディアに萌え。
アパートまで送っていくパリーに見せるリディアの「女子の姿」に萌え萌え。
完遂していないデートのあと、病院に出入りしているリディアに、更に萌え萌え萌え。
良かった。
とっても。
午前十時の映画祭で。
初鑑賞でした。ギリアムが苦手な方なんでスルーしてましたw
素晴らしかった
公開時に映画館で見て、その前に見た『未来世紀ブラジル』『バロン』みたいなSFやファンタジーを期待していたせいか、すごく地味で退屈に感じた。それ以来、いまひとつのギリアム作品と思っており、今回もこれより他に上映すべき作品があるではないかと思い、スルーしようかとすらしていたのだけど、ギリアム作品がスクリーンで見られる機会も滅多にないことで、足を運んだところ、素晴らしい人間ドラマでハッピーエンドに大感動し涙が出るほどだ。劇場公開時に期待しすぎてハードルを上げたのと、現代ものの人間ドラマで、SFやファンタジー要素がなく物足りなかったことで、きちんと受け止めておらず、愚かだ。
恋人のアンが素晴らしくて、あんないい子になぜ結婚を申し込まないのだとジェフ・ブリッジスに腹立たしくなる。いくらロビン・ウィリアムスがナイスガイだとしてもホームレスだし、頭もおかしくて、そんな彼に好きな子との仲を取り持ったとしても成立せず自己満足ではないかと思う。しかも、その好きな子は相当なおっちょこちょいというか、発達障害みたいなタイプで、付き合いが深くなったらイライラしないだろうか。しかし、そんな負の側面を魅力として受け止めるロビン・ウィリアムスの心が素晴らしい。こっちの心配をよそに、彼女はロビン・ウィリアムスに魅力を感じて病院で看病する。そして、調子がよくなった途端、アンと距離を置きたがるジェフ・ブリッジスにイライラしたと思ったら、いろいろあって愛を告げる。そんなハッピーエンドに大感動で、心が満たされる。
ロビン・ウィリアムスが燃えている騎士の幻覚に怯えたり、挑んだりするのはギリアム作品に共通するテーマだ。
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