「美しく哀しい抒情詩」ひまわり(1970) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
美しく哀しい抒情詩
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総合:80点
ストーリー: 75
キャスト: 75
演出: 80
ビジュアル: 80
音楽: 80
戦争の悲劇。戦争そのものの残酷さを描くのではなく、戦争の後の余波を美しく哀しく残酷に描く。
地平線の果てまで無限に広がる一面のひまわり畑。のどかで平和で美しいはずの風景の下には、実は数え切れないほどの悲劇と死体が埋まっている。マンシーニの哀愁を誘う音楽とともにひまわりが風にたなびく風景は、かつて一組の男女の愛を切り裂き運命を翻弄した戦場の跡。どうにもならない厳しい現実がもたらす残酷な悲しみも大地の果てまで広がっていっている、そんな抒情詩のような感情を揺さぶる作品。
ソフィア・ローレンが演じるのは貧乏で安っぽい服装の情熱的なイタリア南部の女。かなり気が強く気性が激しい典型的なイタリア南部女で、こういう女は最初は日本人には少し刺激が強そうに見えたのだが、夫を思い続け諦めず一途に行動する健気さにだんだんと好感度が上がっていく。そんな彼女を打ちのめす、突きつけられた現実のなんと厳しいことか。その厳しさを受け止めた後の彼女は情熱的な女ではいられなくなり、深みと憂いを秘めた表情をするようになる。やむを得なかったとはいえ自分が不幸を引き起こした一因であるマルチェロ・マストロヤンニの苦悩もまた深い。そして戦争の後にもそれぞれが犠牲者として生きていかなければいけない不条理さが心に残る。
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