「アメリカの金持ちはヨーロッパ製がお好き」ビバリーヒルズ・コップ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの金持ちはヨーロッパ製がお好き
若い頃に観た時は、アメリカ自動車産業の中心地デトロイトの街を走るクルマがどれもオンボロなのに対し、西海岸ビバリーヒルズのクルマはパトカーにいたるまで全てピカピカだという皮肉の演出に感心したものだ。
今回もその土地と貧富のイメージの繋がりについて考えさせられた。
ビバリーヒルズでは、中間層でもピカピカのクルマに乗っているが、それらはデザインのセンスに欠けるアメリカ製である。金持ちはドイツ製に乗る。
そういえば、主人公がビバリーヒルズに到着した時に眺めるロデオなんとかの通りに居並ぶ高級ブティックも全てフランスやイタリアといったヨーロッパのブランドである。
アメリカの金持ちたちはヨーロッパの製品が好きだということが端的に示されているのがこの映画なのだ。
劇中の犯罪組織がコカインやドイツの(偽?)債権の密輸をしているのも、彼らの投資先が海外であり、アメリカ国内からは金を吸い上げるだけであることに他ならず、これは単に倫理や法律上の問題ではなく、犯罪組織がアメリカ社会から収奪しているという階級闘争的な反感を刺激している。
アメリカの金持ちはアメリカ社会に貢献しようとはしていない。母国から吸い上げた金をヨーロッパにバラ撒く連中なのだ。
つい最近、この国で行われた大統領選を征した候補者は、この映画と同様に、アメリカのエリートたちが母国ではなく外国に貢献することに価値を見出だしていると批判した。
その彼が就任した直後にこの映画を放映するとは、さすがNHK である。
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