劇場公開日 1970年8月25日

「ザ・ビートルズもイギリス市民もスタイリッシュだった」ザ・ビートルズ Let It Be regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ザ・ビートルズもイギリス市民もスタイリッシュだった

2024年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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輸入盤ブートレグDVDで鑑賞。YouTubeやニコ動で断片的にアップされていた映像は観ていたが、最初から通して鑑賞したのは今回が初。
本作に関して散見する、「メンバー間の不協和音を余すところなく映している」という評だが、確かにポールとジョージが意見を衝突させるシーンはあるものの、実際観るとそこまでは感じられず。
そもそも本作は、メンバーの不仲を強調したかのような編集が施されていたことが後年判明していることからも、今となっては「ドキュメンタリーは嘘をつく」の典型例となった感がある。
ただ、アルバムにも収録されているポール作詞の「トゥー・オブ・アス」、「ゲット・バック」などの曲は、ビッグビジネスになりすぎたグループ活動を原点に戻ってやり直そうという心情が込められているとされるが、改めて映像で観るとそれを如実に感じる。クライマックスのルーフトップ・コンサートの素晴らしさについては言うまでもなし。このコンサートを下から見つめるイギリス市民が、軒並みスタイリッシュなのも印象的。
ついでにDVDに関して触れると、正規版ではないためにやはり画像が粗い上に、日本語字幕がかなり意訳されている。特に曲の歌詞字幕が、本来口に出してないフレーズを臆面もなく盛り込んでいて笑ってしまった。

ピーター・ジャクソン監督による再編集版『ザ・ビートルズ:Get Back』発表により、本作『レット・イット・ビー』は永久封印の可能性が高い。
メンバー的には(というかポール的には)観てほしくないのだろうけど、同じ映像を使ってもこうもニュアンスが違う作品が出来るのかというのを比較できる意味でも、もっといえばドキュメンタリー映画の作り方のマニュアルとして、できれば正規ルートでの再発表を望むところ。

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と、以上は2021,10/11時点のレビューだが、24年5月にディズニープラスで本作の配信がスタートするとの事。「永久封印の可能性が高い」と上で書いたが、まさか正規に公開されるとは思わなんだ。
おそらく大多数の人は同一フッテージを再編集した『ザ・ビートルズ:Get Back』を先に観た上で本作を観る事になるだろうし、本作と『Get Back』のどちらが好みか、またはどちらがドキュメンタリーとして優れているかは人それぞれだろう。ただ一つ言えるのは、フッテージ使用量の差こそあれ、編集次第でこうも印象が異なってくるから面白いもの。これぞ映画のマジック。『ロッキー4/炎の友情』と『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』同様、映画制作を学びたい人にとってはいい教材となるはず。

regency