「女心は難しい」ピアノ・レッスン(1993) 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
女心は難しい
1993年制作にして、日本初公開は翌年1994年の本作。20年程前の作品でしたが、今回4Kデジタルリマスター版として改めて上映されたので観に行って来ました。
20年前の作品とは言え、舞台が1852年の当時イギリスの植民地だったニュージーランドということで、映像も一新されたこともあり、全く古さは感じませんでした。ニュージーランドがイギリスの直轄植民地になったのが1840年とのことなので、当時のイギリスにとってもニュージーランドは完全なフロンティアだったのでしょう。
そんなニュージーランドに、主人公のエイダが愛娘のフロラを連れて輿入れするところから物語は始まりました。彼女はあることをきっかけに喋ることが出来なくなり、結婚はしていなかったらしいフロラの父親も既に亡くなっている状態のようで、本国の家族とすれば扱いに困っていたのではないかと推測されます。そんな中、道路すら整備されていないフロンティアに進出していたスチュアートが嫁探しをしていて、両家の利害が一致した結果の輿入れだったと思われました。まあ厄介払いですね。
そんな結婚話にエイダの意思は反映されていないようでしたが、女性の自己決定権が認められていなかった時代の産物だったのでしょう。行きたくもないニュージーランドに行かされた挙句、荒れ狂う海原を乗り越えてようやく辿り着いたニュージーランドの海岸で、夫のスチュアートは、愛娘の次に大事にしていたピアノを家まで運んでくれず、海岸に放置してしまう。それに加えて海岸に放置されたピアノを、土地と引き換えに夫が勝手にベインズに渡してしまうに至り、彼女の夫に対する敵愾心とも言うべき気持ちは決定づけられました。
ここまでは彼女に対する同情を禁じ得ない展開だったのですが、ピアノを手に入れたベインズの求めに従って彼の家に行き、ピアノを弾いているうちに彼と男女の関係に陥っていくエイダの心情は、イマイチ理解出来ないものでした。確かにベインズは、ピアノが放置された海岸まで連れて行ってくれたり、ピアノを引き取って家まで運び、さらには調律師に調整させたりと、彼女の大事なピアノを保護してくれたのはその通りでした。それでも何故彼に惹かれたのかが、イマイチ分からぬまま、最終的に指1本と引き換えにベインズとの生活を手に入れたところで物語は幕となりました。まあ私が女心を解しない朴念仁だということなのかも知れませんが、モヤモヤ感が残るお話でした。
そんな訳で、俳優陣の演技は非常に良かったとは思うものの、お話自体は今ひとつヒットしなかったので、本作の評価は★4とします。