ピアニストを撃てのレビュー・感想・評価
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【”シャルル・アズナブールって、俳優でもあったんだ!”高名なピアニストが、場末のカフェのピアニストになった訳。そしてギャングの抗争に巻き込まれていく、フィルムノワール。】
ー 中坊の時に、フランソワーズ・アルディやジェーン・バーキン、ヴァネッサ・パラディなどを聞いていたからか、シャルル・アズナブールと言う名は知っていた。
だが、俳優もやっていたとは、知らなかったなあ。-
■シャルリ(シャルル・アズナブール)はパリの場末のカフェのピアノ弾きだった。
郊外で小さな弟フィドとひっそり暮らす彼は、2人の兄の悪事によって、ギャングとのいざこざに巻き込まれる。
サローヤンと言う名の高名なピアニストだった頃に、妻を自死で亡くした悲しい過去を持つシャルリは、やっと見つけた愛するカフェの給仕女レナさえも銃撃戦で失ってしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、ノワール映画なのであるが、トリュフォーの遊び心なのか、前半はコミカルなシーンが、頻繁に映される。
・だが、徐々に物語はサローヤン時代の哀しき想い出と共に、シャルリの心を開かせようとするレナの思いと、シャルリの悪の兄二人の登場により、一気に切ない展開になって行くのである。
・そして、ラスト、再び悲しげな顔でカフェでピアノを弾くシャルリの表情が印象的である。
<今作は、トリュフォーの長編第2作であり、シャンソン界のレジェンド、シャルル・アズナヴールの切ない演技が光る作品なのである。>
女性陣がすてきな、小粋な映画
シャンソン歌手のアズナヴールが主演ということで、当時は話題になり観客を集めたのだろうか。
作品の中では彼はモテすぎていた。女としてはそこにすこし違和感を感じる。でも、この映画はもともと男性向きかなと思うから、女の立場から細かい事は問わないでおきたいと思う。笑
全体的には娯楽的に観れる映画だけれど、人生を感じさせ、粋なユーモアもあり、洒落ていると思った。
何よりよかったのは、女性たちが皆うつくしく映し出されていたこと。それも彼女らは皆、姿かたちだけでなく、こころ根が美しい。彼女らには、それぞれ包容力や愛情がある。男の勝手な理想像が描かれていると言ってしまえばそれまでだけれど、彼女らは、女のわたしからみてもなかなか素敵で、見ていると心が洗われる気がして好感が持てるから、歓迎したい。そのステキな女たちを幸せにしてやれない男の、ジレンマと情けなさがなんとも言えない。
最初の通りすがりの男が結婚についてシャーリーに語る場面が、全体を通すと粋に思えてくる。誰でもできそうな平凡にみえることが、意外に実はなかなか難しいのだろうと思えてくる。
楽しめば良い映画だとおもう。
でもさりげなく人の世の本質が詰まっている。
トリュフォーの繊細なタッチに滲む映画愛
トリュフォー監督の初期の佳作。恋愛ものとギャングものを一緒にして映画作りを楽しんでいるトリュフォー監督の趣向が、ヒッチコック監督に近いものを感じさせる。危うい登場人物と背景ながら、トリュフォータッチが映画通には堪らない味わい。
トリュフォーらしさ溢れるフィルムノワール
シャルル・アズナヴール主演、本作主演時36歳
世界的な大シャンソン歌手にして映画俳優でもあった
その94歳での突然の死去は世界中を驚かせ、その葬儀はフランスの国葬として執り行われたほど
その歌は誰しも耳にしたことがあるはず
しかし本作ではピアニストとしての役であり、歌は歌うことはない
にしても主人公の虚無感を漂わせた風情を巧みに演じてみせる
主人公の兄のようにエキセントリックな性格で有名なアルメニア人の主人公がこのような虚無感を漂わせているところがみそであり、それを本人自身がアルメニア人移民の子である彼がそのギャップ感を見事に表現している
トリュフォー監督の長編第二作
フィルムノワールの娯楽作品を撮って映画業界で食っていく意志を表しながら、ヌーべルバーグの若々しい感覚で気概を示している
導入部の巧みな入り方
主人公が虚無感に支配されるにいたった原因の女性の記憶と現在の女性を、ベッドシーンで対比させる見せ方
現在の女性とのなれそめシーンでの触れるか触れないで手を繋ぐかどうか躊躇するシーン等々
トリュフォー監督らしさを様々なところで、フィルムノワールの娯楽作品でもしっかりだせることを証明してみせている
ヌーベルバーグ
実は世界的なピアニストだったなんてくだりは、もっと後半に入れてくれたほうがよかったな。ヌーベルバーグの世界とハードボイルドの世界。落ちぶれたピアニストという設定が渋くていい。浮気した娼婦はどうなったんだろう。
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