バラの刻印のレビュー・感想・評価
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ニジンスキーとデュポン
パトリック・デュポンはイイ。
ほんとにイイ。
私は20世紀の天才を一人選べと言われたら彼を選ぶ。
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本作は、1910年代に活躍したバレエの「神様」ニジンスキーを題材にした映画。彼の実の娘キラのインタビューなどで構成されている。
そしてニジンスキーの代表作を、パトリック・デュポンが踊るシーンも少し入っている。デュポンは1980年代に活躍し「天才」と称えられたダンサー。撮影当時は一番勢いのある頃だろう。
ニジンスキー自身の踊る映像は現在残っていないけれど、「天才」デュポンを通して「神様」ニジンスキーを幻視しているような気持ちになる。
本作の中で、デュポンが踊る『薔薇の精』は素晴らしい。何だろう、あの手の動き、アゴの角度。人間じゃないみたいだ。美しいというよりも異形の生物を見ているようだ(数多くの人が『薔薇の精』を舞台で踊っているが、異形っぷりを発揮してるのはデュポンだけだろう)。
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ニジンスキーは最高峰の踊り手だったが、精神に変調をきたし活躍した時期は10年足らずと短かった。
デュポンも天才でパリオペラ座の芸術監督まで務めたが、様々なトラブルがあったりで順風満帆なダンサー人生ではない。後年、ブクブクに太ってジャバザハットみたいになってしまった彼を見た時には何とも言えない気持ちになった。
神様も天才も儚い。
天才が天才として輝ける一瞬を、フィルムに収めてくれているだけでも、この映画は有り難いなあと思う。
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感謝しておきながら何だが、この映画が撮られた丁度その頃、バレエ映画の名作『愛と哀しみのボレロ』も作られている。『愛と哀しみ〜』のジョルジュ・ドンよりも、断然デュポンの方を贔屓にしている私にとって、なんか悔しい気もする。デュポンも『バラの刻印』だけじゃなく、ちゃんとした映画に出させてあげたかったなあとも思う(『バラの刻印』が映画として名作かっつうとかなり微妙だからなあ…)。
もはや映画と関係ない話で恐縮だが、デュポン来日時に踊った『ボレロ』は本当に素晴らしかった。
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