「ちょっとふり向いてみただけの」異邦人 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとふり向いてみただけの
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肝心のアラブ人殺しよりも、母親の死の翌日に女の子と海に泳ぎに行って喜劇映画を見たことで断罪されるかのような不条理な物語はそのままなぞってはいるが、原作の文体は消えてしまう。「きょう、ママンが死んだ」と小説で読むのと、映像にヴォイスオーヴァーで語られるのではまるで印象が違う。もちろん映画作家にも映画としての文体はあるが、ルキノ・ヴィスコンティの文体はカミュには合っていないように思える(たとえばロベール・ブレッソンならどうか?)。
原作は若い頃読んで感銘を受けた作品だが、殺人のくだりなどこうして絵解きされてしまうと、何だか白々しさが目立つ。熱中症でふらついた挙句、岩場をちょっとふり向いただけで…なんてね。
仏領アルジェリアが舞台なのに、全員イタリア語を話しているのもやはり違和感がある。
ちなみに、イギリスのロックバンド、キュアーがデビュー曲の“KILLING AN ARAB”でほぼそのままの内容を歌っている。
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