バベットの晩餐会のレビュー・感想・評価
全68件中、61~68件目を表示
我慢を強いる映画
北欧独特の光線が屋外のシーンを特徴的にする。その点でベルイマンの映画と共通している。 そして、また共通しているのがキリスト教の信仰を描いていること。 ただし、この作品にはベルイマンにあるような皮肉が見られず、ただひたすら純粋な信仰生活を送る姉妹が描かれるのだ。田舎の厚い信仰者の退屈な生活をひたすらに映し出すことが本作の仕掛けといってもよい。 タイトルにあるバベットなる人物は後半になってようやく登場し、その女性が作る晩餐の料理は映画の最後になってようやく映し出されるのだ。それまでは貧しい北欧の貧相な食事しか出てこない。 バベットがふるまう料理はどれも美味そうで、グルメ映画としても素晴らしい。ただし、この料理をつくる話が出てくるまでは、ひたすら敬虔な信仰心を持つ姉妹が男たちを袖にするというもので、見続けることに忍耐を要する。最後まで静かで禁欲的な生活の描写で引っ張っておいて、最後に極上のフランス料理を観客に見せつけるのだ。 とことんじらされた観客にとって、ここで供される品々は文字通り垂涎の的ととなる。
食事の場面が長すぎて飽きた
総合:55点 ( ストーリー:55点|キャスト:65点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:60点 ) 恐らく初めて観たデンマーク映画。前半のデンマークの寒村での質素な生活の場面はまだ悪くなかった。作品としては真面目で質感はむしろ良い。しかし後半、食材を用意し調理し食べるだけの場面に数十分も費やされると、単調すぎて流石に飽きが来る。 慎ましい人生を送ってきた彼らにもたらされる一流の晩餐がただの晩餐ではないのだろうが、些細な出来事を中心に据えた主題にひきつけられなかった。無論この晩餐は、その裏に潜む登場人物たちの数十年の半生を示唆しているのだが、それがはっきりとしないままに食事だけが進む展開が好きになれなかった。この映画はここに尽きる。むしろ将軍やバベットといった、劇中ではっきりと描かれなかった登場人物たちの人生のほうに興味をそそられた。
人生の喜び
バベットは芸術家だ。一世一代の「大盤振る舞い」は、芸術家としての、やむにやまれぬ彼女の衝動だ。献身ではないところが、渋くて粋でかっこいい。 バベットの料理の芸術を理解できるのは、社交界を知る将軍だけだ。 村人たちも、正しく受け止めてはいたが、言葉にすることはない。 芸術は、全ての人に等しい深さで享受されるものではなく、素養とか経験値を問われる残酷な一面がある。だか、圧倒的な本物を前にすると、誰もが感覚的な喜びを味わうことができる。 一方、恋の成就や夢の実現は叶わぬとも、置かれた場所でひたむきに花を咲かせようとする、姉妹の生き方もまた、芸術だと思った。 天使も微笑む生き方は、本格の芸術。人生の喜びを見た。
秀逸
やや退屈な始まりから、徐々に引き込まれ、 気が付けば見入っていた。 良い意味で、予想していたガストロノミー(美食)映画ではなかった。もちろん晩餐会は堪能させていただいたが。 フランス革命後のパリのレストラン文化の雄 「カフェ アングレ」のことを知っていたらより楽しめるだろう。 良かった
心がじんわりと温かくなる映画です。
見終わったあと、心がじんわりと温かくなる、そんな映画でした。あんな風に年を取りたいと、思いました。 基本的には宗教にあまり関心のないワタシですが、この映画の姉妹のように心の糧となり、人との結びつきを色濃くしてくれるのならば、宗教も悪くはない、と思わせてくれました。 おいしいものは、心をこめて作った料理は、人を温かく、幸せにしてくれるのですね。 そして、後半のバベットの見事な料理の手際のよさ、に見惚れ、給仕をする地元の少年への見事な指示。 本格フランス料理など食べたことのないデンマークの漁村のお年寄りたちの最初は恐る恐る、だが料理のおいしさと見事さにどんどんと舌鼓を打ち食事を楽しむ風景。 美しかった牧師の娘姉妹が、なぜ結婚をしなかったのか、という伏線の張り方。 小編ではありますが、見事な作品だと思いました。
バベットの晩餐会
百点満点の藝術作品。これに並ぶ完璧な映画は歴史上数作しかない。嫌われたのはドンジョバンニ(お手をどうぞ:色事師の唄)なのに、オペラ座の天才歌手パパンが報いを受ける。あの深みのある可笑しさは類を見ない。キリスト教を越えた思想表現、料理を超える味わい、ワインを超える香り、それは映画の随所にちりばめられた製作チームの世界観と魔法の様な技術に支えられている。主義も主張も要らない。表層感情にも拘らない。デンマークだからこそ、ディーネセンほどの人物ゆえに捉えた大きな世界がある。価値観の変わる百年後でさえ、映画史のベスト10に残る完全主義の花開いた名作かと思う。
バベットに乾杯!
20年ほど前に見た時、私は若かりし頃の姉妹に近い年代だった。
さわやかで、美味しそうで、バベットがカッコイイ映画というのが
最初に見た時の印象だった。
今回「午前10時の映画祭」で見て、大人の為の寓話だった事に
初めて気がついた。
「料理は人を幸せにする」
「私に最高の仕事をさせて!」
「貧しい芸術家はいない」
「あの世へ持っていけるのは、人に与えた物だけ」等々
印象深い言葉の数々。
姉に一目ぼれした軍人は、立身出世を望み地位を手に入れたが
年老いて自分の人生に虚しさを感じている。
妹に求愛したオペラ歌手は、すでに名声を手中にしていたが、
才能の衰えに怯えていた。
清貧を絵に描いたような姉妹は、神父である父親の教えを守って、
慈愛に満ちた生活をおくり、年老いていく。
バベットも潔く、姉妹を助けこの土地で生きる事を選ぶ。
自分の居場所があり
誇れる仕事があり
その仕事で人を幸せにできる
それが心豊かで幸せな生き方である事を彼女達は知っている。
さて、バベットが思いのままに腕をふるう晩餐会である。
最初に見た時は、素晴らしい料理に目を奪われた。
今回は、料理と組み合わせた多彩なワインに舌を巻いた。
見終わって、こんなに幸せな気分に浸れる映画は、めったにない。
全68件中、61~68件目を表示