「騙され上手の至福」バベットの晩餐会 masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
騙され上手の至福
未知なる料理への恐怖を、共に騙されるふりをすることで解消しようとした登場人物たちが、人間臭くて愛らしい。
現代は事実を暴くことが全てだ。
映画も含めた多くのメディアが、知る権利を盾にして、知られざる過去、知りたくもない理由、知る必然性のない経緯を、次々と白日の下に晒していく。現代のメディアは、それが面白みになって成立している。
この作品では、事実はほとんど明らかにならない。
唯一、バベットの出自が、それを知るべき姉妹だけに明かされるだけだ。
それなのに、誰もが忘れていた一つの真実が、明快に、映画史に残る大円団で描かれる。
信じる者は救われると言うが、真心から信じるふりをする者も救われるのだ。
二度と会うことのない人と、数十年、数百キロを隔てても繋がっていると、真心から信じようとする人たちが、ささやかな幸せを獲得する。
エンドロールが流れる中、すっと溜飲が下がる思いになった映画を観たのは、実に久しぶりだった。
長きにわたり、多くの支持者に語り継がれるのも納得である。
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