「マイルストン版よりも、このシニーズ版に軍配!」二十日鼠と人間(1992) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
マイルストン版よりも、このシニーズ版に軍配!
マイルストン監督版に引き続いて
1992年のロードショー以来
再鑑賞したが、映像化作品としては
かなり進歩した印象だった。
マイルストン版は原作をなぞっただけの
イメージだったが、
このゲイリー・シニーズ監督版では、
翻訳同士の比較で恐縮ですが、
原作に無い台詞や場面設定で、
原作の行間を見事に埋め、
主役二人の心象を
分かりやすく描いていたと思う。
映像としても、
物語の背景となる牧場の全貌を見事に描き、
観客に、舞台設定情報を上手く提供していた
のではないだろうか。
また、レニーの怪力が故の各悲劇が、
これも分かりやすく系統付けられて描かれ、
更には、限られた世界に閉じ込められた
カーリーの妻の危険な苛立ちも
上手く表現出来ていたように感じる。
なかなか見事なゲイリー・シニーズ監督の
演出だったと思うが、
何故か、彼はこの後に監督することは無く、
次回作を観れなかったのは
残念に思える出来映えではなかったろうか。
最下層の人々が這い上がろうとする内容の
多いスタインベックの作品、
この物語も過去の話のようで、
しかし、中産階級の厚い層が失われ、
最下層が膨らみつつある現代にも
通じているのかと思うと、
まだまだ価値のある作品なのかも知れない。
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