馬上の二人

劇場公開日:

解説

サタデイ・イヴニング・ポスト連載のウィル・ククの西部小説を「捜索者」のフランク・ニュージェントが脚色、「バファロー大隊」のジョン・フォードが監督した異色西部劇。撮影はチャールズ・ロートン・ジュニア、音楽はジョージ・ダニング。出演は「戦略爆破部隊」のジェームズ・スチュアート、「アラモ」のリチャード・ウィドマークとリンダ・クリスタル、それに「ペペ」のシャーリー・ジョーンズ、ほかにジョン・マッキンタイア、ハリー・ケイリー・ジュニアなど。製作スタン・シュペトナー。

1961年製作/アメリカ
原題または英題:Two Rode Together
配給:コロムビア
劇場公開日:1961年5月24日

ストーリー

1880年、テキサスのタスコサ町の保安官ガスリー・マケーブ(ジェームズ・スチュアート)は、町から40哩離れたグランド砦の司令官フレーザー少佐の招きで砦へ行った。少佐はコマンチ族に拉致された白人の救出を依頼した。マケーブは酒場のマダム・ベルの執拗な求愛から逃れるために砦へ行ったのだが、この仕事に気が進まない。が、1ヵ月80ドル、白人1人につき500ドルという報酬に承諾した。少佐はとくに17歳くらいの少年を探すようにつけ加えた。マケーブは旧友のジム・ゲイリイ中尉(リチャード・ウィドマーク)を護衛に捜索隊を連れてコマンチ領へ。だが、気の乗らないマケーブは酒を飲み、一行の中のブロンド娘マーティ(シャーリー・ジョーンズ)をよくからかった。彼女の弟も拉致されていた。一行のキャンプがコマンチ族に襲われ、集落に連行された。そこでマケーブは、ウルフという17歳くらいの少年に目を止めた。からだは褐色に塗っているが、まぎれもない白人だ。マケーブとゲイリイは酋長クワナと取り引き、ウルフと陸軍仕官の婚約者で、その任地に向かう途中捕まったエレナ(リンダ・クリスタル)とを連れて砦に帰った。砦でウルフは好奇心の的になった。暴れ回る彼を誰も白人とは思わない。が、頭の異常なマッケンドレス夫人だけは我が子と信じ興奮していた。実際ウルフは真実の子ではなく、マッケンドレス夫人の夫リングルが、マケーブに1000ドル渡して連れてこさせたものだった。エレナも砦の人々に軽蔑の目で見られた。一方、マーティは、弟を探す見込みがなくなったので砦を発とうとしていた。ゲイリイは彼女を慰め、その夜のダンス・パーティに誘った。マケーブもエレナとともに出席した。パーティの最中ウルフが「我が息子、我が息子」と傍を離れぬマッケンドレス夫人を殺した。私刑の場所へ連行される途中、ウルフはマーティの部屋から流れるオルゴールの音楽を聞いて愕然とした表情をみせ「俺の音楽だ」と叫んだ。マーティは驚いた。オルゴールは弟の愛用していたものであり、ウルフこそ弟だったのだ。が、ウルフは救われなかった。マーケーブはエレナを連れタコサに帰った。が、ここでもエレナは冷たく扱われた。絶望と悲しみで1人カリフォルニアへ帰ろうとする彼女をマケーブが追った。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0拉致被害者とその家族の苦悩を直視した西部劇にあるジョン・フォード監督の思い

2024年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

怖い

難しい

コマンチ族に拉致された白人の救出に駆り出されたガスリー・マケーブ保安官を主人公にしたジョン・フォード監督67歳時の西部劇の秀作。5年前の「捜索者」と似たような題材でも、親族の復讐に執念を貫徹するイーサン・エドワーズの人格とは違って、ジョン・フォード作品初出演のジェームズ・スチュアート演じるマケーブは、正義感より打算的価値観のお金とお酒が好きな俗人気質の持主であり、善人役の多かったスチュアートにとって珍しい役柄になっている。却って悪役が似合う性格俳優として名を成したリチャード・ウィドマークが女性に優しく良識のあるジム・ゲーリー中尉役にキャスティングされていて、このふたりの名優の新境地の演技が見られます。コマンチ族と平和協定を結んでいる軍の事情もあって、南北戦争頃から身内を拉致されてきたテキサスの開拓民の願いは、コマンチ族のクワナ酋長と何度か交渉してきた経験のあるマケーブ保安官に頼わざるを得ないのが、この物語の社会背景です。しかし旧知の仲のマケーブとゲーリー二人の価値観の衝突を経て描かれる救出劇は、最後に娯楽映画らしい結末で締めくくるも、拉致被害者家族の諦観を再認識させる残酷さを描き切っています。フォード演出の大らかさの中にある、この厳しい視点は、勧善懲悪の西部劇とは一線を画す深さと味わいと言えるでしょう。コーヒーで例えるなら、ほのかな甘みと苦みのバランスの良さ、それがコク(酷)となって後を引く味です。 子供の頃に拉致された白人はコマンチ族として育てられ、英語も忘れ、勿論教育も白人社会のマナーも身に付けられず、女性ならコマンチ族の男性と結婚し混血の子を儲けてコマンチ族に同化していく。西部開拓を錦の御旗にしてネイティブアメリカンを数多く殺戮していった歴史には、原住民と騎兵隊の犠牲だけではなく、一般人にも様々な被害者がいた事実を含めてのアメリカ。映画中盤では、拉致された初老の婦人が、ふたりを持て成し告発しながらも、救出を求めない不思議な場面があります。開拓キャンプに待機する家族と名前も家族構成も一致するにも関わらず、帰還を拒むこの白人女性を説得できない複雑な障壁。そして8歳の時に拉致されて17歳のコマンチ族の闘士に激変した少年は、その凶暴さ故に差別され更生されることなく事件を起こし処罰される。白人優位の価値観の恐ろしさと差別的な視線を送るアメリカ人を偽りなく描いています。17歳の時白人士官の夫を殺されコマンチ族のストーン・カフという戦闘隊長の妻になったエレナは、その弱い立場と生きるために服従せざるを得なかった境遇への理解も同情も、極少数の女性からしか掛けてもらえません。最後そんなテキサスの町から逃れるように去るエレナを、保安官を首になったマケーブが追い掛ける。正義を守るべき保安官の職を棄てたマケーブが差別に怒り、女性に優しくなって終わるこのアメリカ映画は、アメリカの歴史を直視し、人種差別と白人至上主義を批判する立場にあります。「捜索者」の孤独な西部男の一貫した執念とは違い、スチュアートのマケーブは報酬に拘り酒に酔いながらも一人の女性を愛せる男性に変化した姿を見せてくれるのです。 この性格の悪いマケーブをジェームズ・スチュアートが演じることで伝わらないのは、それまでの善良なイメージを長年維持したから仕方ないかも知れません。しかし、よく観ればマケーブの狡さや適当な性格を丁寧に演じています。リチャード・ウィドマークは、女性にはっきりと告白できない純真さまで演じているのが、とても興味深かった。17歳の少年の姉役マーティのシャーリー・ジョーンズとエレナを演じたアルゼンチン出身のリンダ・クリステル共に27歳の若き女優ですが、フォード演出の妙か、とても奇麗で確りした演技。ヒッチコック監督に負けず劣らず、フォード映画の女優も美しく描かれているのも見所でしょう。他に「駅馬車」のアンディ・ディヴァインが巨体を生かしたユーモアを醸し出し、常連ハリー・ケリー・ジュニアはマーティにちょっかいを出すクレッグ兄弟のおとうと役で出演、そして黒人俳優の先駆者ウディ・ストロードはコマンチ族のストーン・カフを堂々と演じて存在感を示します。アンナ・リーは最後の舞踏会に現れて、エレナに軽蔑の視線を送る婦人役のゲスト出演でした。原題は『Tow Rode Together=二人は一緒に乗った』、脚本は「アパッチ砦」「黄色いリボン」「静かなる男」「捜索者」のフランク・ニュージェント。原作はウィル・クックの『Comanche Captives=コマンチ族の捕虜』1959年。撮影はフォード作品には珍しいチャールズ・ロートン・jr。

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Gustav

3.5コマンチ族に拉致された白人の顛末

2022年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ジェームズスチュアート扮するガスリーマケーブ保安官は、昼間からビールを飲みながら町の様子を見ていた。判事も飲み過ぎて裁判所へ行けなくなる町だ。しかし少佐命令でガスリーは60km離れたグランド砦に赴いた。コマンチ族に拉致された白人を救うためだった。しかし救われた白人も決して幸せとは言えなかった。罪な話だね。

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重

3.0軽妙でテンポの良い会話のやり取りで始まり、軽いタッチの西部劇かと思...

2019年4月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

軽妙でテンポの良い会話のやり取りで始まり、軽いタッチの西部劇かと思っていたが、話が進むにつれてそれぞれの立場人間の身勝手さが見えてくる。実は奥深いストーリーの映画だった。

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tsumumiki

3.5人間中心の独自の西部劇

2013年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )  前半を観ている段階では、白人至上主義な一方的な見方をしている昔ながらの西部劇なのかと思って良い印象ではなかった。ネイティブ・アメリカンは野蛮で残酷で悪者として描かれていて、全ては白人社会の価値観を中心に判断されていた。このあたりは悪い意味で昔ながらの伝統的作品だった。  だが白人が彼らと戦ってやっつけるだけの単純な映画ではなく、彼らと関わった白人たちの社会の中での生活を描くという意味で面白さがあった。西部劇でも撃ち合いは殆どなく、物語の中心は登場人物たちの恋愛であったり人生の選択であったりする。実際にコマンチ族による白人の誘拐事件というのが一般的にあったのかどうか知らないが、設定も物語も独特だし、白人側からの一方的な見方の良い悪いは別にして当時の社会に生きる人々の姿は興味をそそられた。

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Cape God

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