「発見の妙」バージニア・ウルフなんかこわくない kawamoさんの映画レビュー(感想・評価)
発見の妙
不条理劇「動物園物語」を書いたエドワード・オールビーのもう一つの“題名は聞いた事のある”戯曲が同作。
そもそもバージニア・ウルフという人にしてからが、名前は耳に馴染みがあるのに、謎。ウィキを見れば記憶の通り前世紀前半に活躍した先鋭的な女性作家。舞台でもおなじみの「オーランドー」や「ダロウェイ夫人」を書いたが、カギ括弧のない一人称の語りがページを埋め尽くしてるのを見ると「またいつかね」と閉じてしまう。
閑話休題。モノクロ映画。熟年夫婦二人の宅に、若い夫婦二人が夜遅く訪れる開始から引き込まれて目が離せない。この映画を撮ったマイク・ニコルズは元々舞台俳優でこれが監督一作目というが、秀作。次作「卒業」で賞を取った。
見終えた後クレジットにエリザベス・テーラーの名を発見。ヘプバーンに先行する米映画界の国民的ヒロイン、といった評を昔から耳にしていたが、この女優の演技姿を初めてちゃんと見たのが、一ヶ月ほど前、ジェームス・ディーンが出演した僅か3本の一つでついぞ観なかった「ジャイアンツ」。
この作品が長尺ながら名作と言える内容であった。(確か中学の頃JD出演のこれは「理由なき反抗」「エデンの東」に比べていまいち、なんて無神経な風評が流れていた。十代とはそういうもの)
「ジャイアンツ」の10年後が、「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」(1966)。モノクロ映像という事もあるが、気づかなかった。計算すればこの時エリザベスは30代。50代と見紛う爛れた風情は仰天ものだ。その夫を演じた、実生活でも夫だったリチャード・バートンは40過ぎだがこれも定年間近な教授の風情。
学長の娘に惚れられ、結婚を選んだ夫と妻の晩年の悲哀がじわじわと・・。若い夫婦との取り合わせも対照的で効果的なのだが、突出しているのがエリザベス・テーラー。清純で逞しいテキサス移住妻を演じた20代のテーラーとのギャップと合わせて見物。原作者オールビーもテーラーもバートンも英国出身だがあの誠実な雰囲気はどこから来るのだろう。
ともかく「ジャイアンツ」と共にお勧め。