劇場公開日 1960年2月10日

渚にてのレビュー・感想・評価

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4.0世界が終わるとしても意外と人は普通に暮らす

2021年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アポカリプスものだけど、普通に日常が続いている。しかし、いつそれが終焉を迎えるのかわからない緊張感が漂う。主な舞台となる南半球はまだ無事だが、北半球はどうやら滅んでいるらしい。遠い異国の地が滅んでいるといわれても、ピンとこない。
後半、潜水艦で北半球に向かい、着いたのはサンフランシスコ。街が破壊された様子はないが、人がいない。死ぬときは生まれ故郷で死にたいと乗組員の一人が艦を抜け出す。
コカ・コーラのビンの使い方が本当にすごい。コーラは文明の象徴だろうか。人がいなくなってもモールス信号を送り続ける文明の残滓としてのコーラの空き瓶。
世界が終わる時、何をするか。だれもが一度は夢想したことがあるはず。自分の趣味に没頭するのか、穏やかにいつもの日常を過ごすのか。SFならではの壮大な終活だ。

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杉本穂高

3.0放射能汚染の地球にて…

2022年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

この映画のDVDジャケットが「エヴァ・ガードナーとグレゴリー・ペックの抱擁場面」だったのと、タイトルが『渚にて』だったので、「二人の恋愛ドラマかな…」などと勝手に思ってレンタルして来たが、観てみたら想定外のSF映画。

なんと、第三次世界大戦によって地球上の北半球は放射能汚染されており、南半球のオーストラリアに人々が地球人の最期を覚悟しながら暮らしている…という物語。

潜水艦には、艦長ドワイト(グレゴリー・ペック)や部下パーカー(アンソニー・パーキンス)、そして科学者ジュリアン(フレッド・アステア)などが乗っている。

サンフランシスコの街が無人であるという風景などを潜望鏡で見たりするが、第三次世界大戦が起こる場面は描かれないので、ジワジワ来る圧迫感という感じ。

オーストラリアでドワイト(グレゴリー・ペック)とモイラ(エヴァ・ガードナー)は愛し合うことになるが、地球の最期が迫ってくる…という物語。

フレッド・アステアは、だいぶ高齢なので、踊りはしないが、科学者でありながらスポーツカーで爆走するなど存在感を見せる。

潜水艦の中での会話…「平和を守るために武器を持とうとする。そして、果てしない原子兵器競争が続く…」という言葉から、あのウルトラセブンの『超兵器R1号』でのモロボシダンのセリフを思い出した。
ダンが「侵略者は超兵器に対してもっと強力な兵器を作りますよ」と言えば、「だったら、もっと強力な兵器を作れば良い」と言われたダンが、「それは血を吐きながら続ける哀しいマラソンですよ」と言う名ゼリフ。

本作が作られた1964年の米ソ冷戦下では、本作のように核戦争後の恐怖を感じていたのかと思ってしまう。
なかなか重たいスタンリー・クレイマー監督作品。

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たいちぃ

4.5核戦争を通して見える反戦への強い意志

2022年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

随分昔に観た作品であるが、昨今の不穏な世界情勢報道から、本作が真っ先に頭を過った。

本作は核戦争の末路を描いている。

1964年。第3次世界大戦=核戦争で、地球は徐々に死の灰に覆われていく。最後に残った南半球のオーストラリアにも死の灰が迫り、人類は滅亡の時を迎える。

死期が迫った人々は、苛立ちを見せながらも、最期まで、以前と変わらぬ生活をしていく。街は静まり返っている。暴動も騒乱も起きない。本当の絶望の前では活力は生まれない。

また、本作は、何故、核戦争は起きたのか、誰が起こしたのか等のプロセスについては殆ど触れていない。核戦争の末路に焦点を絞り込むことで、普遍的に核戦争の不条理を浮き彫りにしている。そして、静かに切々と反戦への強い意志を伝えている。

我々は、二度の世界大戦を経験している。
三度目は絶対に起こしてならないという反戦への思いを新たにした意義深い作品だった。

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みかずき

4.5見終わった後は、ニール・ヤングのアルバムを聴こう。

2022年4月26日
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悲しい

楽しい

怖い

久しぶりに心動かされる映画。
最後の時をフェラーリと駆け抜けるフレッド・アステアをはじめ、ワイン協会のくだりやサンフランシスコで途中退艦した乗組員など脇役の描き方もとても魅力的だ。
直接的な描写はほとんどないにも関わらず、牧歌的にみえるオーストラリアの風景に、着実にその日が近づいてくる演出が恐ろしい。
浮上ではじまり潜航で終わるラストには鳥肌がたった。
途中からノーマン・ベイツにしか見えなくなってくるアンソニー・パーキンスも不穏な空気に一役買っている。

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movienoyuya

4.5短調 ワルチングマチルダ

2022年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

オーストラリアは長閑でいいなあ、という画面に入り込んでくる非情な現実。
「誰のせいでこうなった。アインシュタインのせいか。」
「武力で平和が守れると思いあがったのが発端
自分は痛い目にあわずに使おうなんて虫のいい話さ」
誰かの思い付きと誰かの決断の積み重ね。玉突き事故の最初にぶつかった車は悪いけど、車間距離取ってたら単独事故だよねみたいな。そんな諦めが共有されてる感じ。
今は複雑になった分、玉突き事故は防げない不安が。
悲嘆にくれるのはごくプライベートの時間のみ。公には淡々と終末を迎える。今のアメリカが舞台なら略奪と暴力の終末だろうな。ミッドナイトスカイのような世界観だがあれは最後に希望の種は撒いてた。
冷戦真っ盛りの1960年日本公開の映画。次の年にはベルリンの壁ができツアーリボンバが炸裂する。64年には博士の異常な愛情が上映。なんともツライ時代。

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HigeKobo

5.060年の時を超えて、21世紀の私達に向けてのメッセージを強く発している

2019年2月11日
Androidアプリから投稿

1957年刊行の同名原作はSFの終末物の名作として有名
本作は1959年の公開
キューバ危機が起こり世界が明日核戦争に突入するかも知れない
そんな恐怖におののいたのは1962年のこと
つまり本作の描く物語はSFの世界ではなくいつそうなってもおかしくない恐怖を具象化した作品であったのだ

全面核戦争の恐怖は1991年のソ連崩壊による冷戦終結によって去った
それは1988年にはINF条約という核軍縮条約の締結から始まった

それから30年が流れた
本作公開からは60年もの年月が過ぎた
核戦争の恐怖は前世紀のものでもはや過去のものなのだろうか?
本作は過去の題材の作品なのだろうか?

とんでもない
ロシアと中国はINF条約を無視して新技術の迎撃不能な新型の核ミサイルを開発していることが明らかになっているのが、21世紀の現状なのだ
対抗上米国はそのINF条約を破棄するとのニュースに接したばかりだ
そればかりか北朝鮮の核の火遊びはいつ再開されるかも知れないのだ

つまり21世紀の核危機は今始まったのだ
全面核戦争の危機は米ソ冷戦時代のレベルに舞いもどっているのだ

しかし核戦争の結末は何なのか
社会は、私達の生活はどうなってしまうのか
核で一瞬のうちに灰にならなくともどのような終末が待っているのか
本作の示すところを世界はもう忘れ去ってしまっているのではないか
今こそ本作を見なおさなければならない時にきているのだ

西側世界に育った私達はこのような核戦争の末路を描いた作品を観たり聞いたりして大人になってきた

しかし、ロシアや中国の人々はどうだろう
本作のような核戦争の恐怖を描いた作品を観て育って来ているのだろうか?
同じ認識に立っているのだろうか?
もし観てもいないし本作の存在すら知らないで大人に成っている人々ならば、この21世紀の核戦争の恐怖を互いに共有することができるのであろうか?

本作の終盤には教会の前の横断幕に大書きされた「まだ間に合う」の文言が写される
神にこの核戦争の誤りを悔い改めるにはまだ間に合うとのものだが、ラストシーンに再度写される
それは本作を観る私達に 向けてのものだ
核戦争を食い止める努力はまだ間に合うのだ
米ソ冷戦時代の当時の観客だけに向けてのものではない
60年の時を超えて、21世紀の私達に向けてのメッセージを強く発しているのだ

名優グレゴリー・ペックの名演はじめ、平穏を保つメルボルンが実は水面下で壊れそうのなるのを耐えているのだということを映像と演出で巧みに淡々と描ききったところは映画としても大変に優れている
素晴らしい名作だ

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あき240

4.0逃れられない運命をみんな同時に背負った時

2018年11月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

難しい

ものすごく有名だったから観た。たしか、村上春樹のエッセイにも書かれていたから。村上氏のいう通り、たしかに救いようのない映画であった。
SFチックながら、人物の情緒というか、間の取り方や厳選されたセリフの重みがすごい。これが本当の演技というものだ。
高評価で期待値は高かったが、それを裏切らない内容だった。冷戦下で、核戦争に対する差し迫った恐怖心がひしひしと感じられるような作品だった。

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a0064

3.5核戦争によって人類が滅亡する話。 数カ月後には放射能によって死滅す...

2015年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

核戦争によって人類が滅亡する話。
数カ月後には放射能によって死滅するのがわかっていて、どう向き合っていくのか…
パニックではなく、静かにその時を迎えるのがこの映画の演出。
実際もこうなのかな?

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伝馬町