劇場公開日 1996年11月30日

「傑作中の傑作。定期的に観たくなる不思議な映画。」トレインスポッティング tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作中の傑作。定期的に観たくなる不思議な映画。

tさん
2018年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

興奮

魂の叫びのような映画

これでもかというほど、主人公の悲惨な状況が描かれる。
イギリスという国は歴史もあって王室もあってすごく洗練されているイメージが強いが、洗練されているかこそ、階級社会であり閉鎖的な側面もあるのだろう。
とてつもなく貧困というわけでは無いのだが、主人公と関わりのある人間がみんなダメ人間で、左を向いてもクソ、右を向いてもクソ、主人公自身も特別な才能があるわけでもなく、立ち直るキッカケが完全に失われている状態。
現実に、これと似た境遇にいる人は結構いると思う。だからこそ、この映画は多くの人の支持を得ているのだと思う。

この閉塞感が、とてつもなくリアルで重い。だからこそ、ラストはすごい爽快感がある。

ドラッグなハマる若者の悲惨な現実が描かれるが、映画はコメディ色が強いので、笑って観られる。過酷な現実を笑い飛ばす。
だからこそ、ドラッグにハマってる人間と我々は対して違いはないのだなと思わされる。

我々の多くは、特別な才能も無く、強運でも無く、周りの友達は皆平凡で、そんなにお金に困っているわけでも無く、死も身近に無く、何をやってもうまくいかず、自分の価値を見出せず、人生に退屈している。
それを埋め合わせるためにこの映画の主人公はドラッグをやっているに過ぎない。果たしてドラッグをやる人間は特別非難されるべき存在なのだろうか?
我々も同じではないか。
退屈を埋め合わせるために、YouTubeにハマったり、スマホゲーにハマったり、アルコールにハマったり、ギャンブルにハマったり、FXにハマったり、仕事にハマったり、映画にハマったり、金儲けにハマったり、・・・。
同じじゃん。
この映画を観てると、映画の中のキャラクター1人1人の物語がとても他人事とは思えない。

退屈な人生。我々はどう生きるべきか?この映画では、その答えもちゃんと示される。
一言で言うと、子供が大人になっていく「卒業」が描かれる。

ただのスタイリッシュでクールな若者向け映画ではない。
どこか懐かしく、平凡な我々の人生を静かに祝福してくれる。
誰でも経験するでしょ?途中下車して、そこから中々先に進めない状態。
そんな状態の人は、この映画を観てみると良いかもしれない。
何かのキッカケにはなるはずである。

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