「かくもかなしき強い人の運命かな」ドラゴン危機一発 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
かくもかなしき強い人の運命かな
1971年香港映画。100分。32才という若さで急逝したブルース・リーの記念すべきデビュー作でございます。この時の彼は30才ですが、2年後の最後となる作品と比較すると若々しいのが逆に痛々しい。
内容は、地元の水害でタイに出稼ぎに出てきた青年(ブルース・リー)は、「二度とケンカをしない」という母親との約束を守り、更正を誓います。だが彼の働く工場はマフィアで運営されており、不当な扱いを受ける日々。そして仲間が次々と姿を消していき、その原因を追及すると麻薬密売をしているという事実を発見。さらに、それを知った仲間は皆殺されていた。そして、とうとう主人公は母との誓いを破って、復讐に走るという按配でございます。
ブルース・リーの作品は4作しかないのですが、そのどれもに共通するのが悲しい物語だということ。何が一番そうさせているかというと、彼が強すぎる故にいつも悲劇を起こしているのです。
本作も彼が工場に働き始めると事件が起き、まるで災いをもたらしているかのよう。そして彼は闘うことを選び、憎たらしい敵をやっつけるのですが、鉄拳を振りかざした代償をいつも払わせるというオチが待っています。
ここがアメリカ映画と違うところ。アメリカ映画の多くは強いゆえに、いつもハッピーエンディングを向かえますが、彼の作品は強いがゆえに悲しい結末になるのです。だから彼の作品は心に染みるのです。
ブルース・リーの存在感はこのデビュー作から異彩を放っています。なんというか画面中に彼がいると、彼の周りだけ違う次元なのですね。その後、彼の生涯を知るとそれも納得。彼のオーラーは肉体だけでなく知性も極めた人のオーラなのだ。普遍性とは心技体一体となって何かを極めることなのだと思わされます。
わたくしは小学校二年生の時にはじめて彼の映画を観て、一週間後には空手をはじめました。それから高校で足を手術するまで続けたのですから、影響力って凄いものです。ブルース・リーはわたくしの永遠のヒーローです。
現在、巨匠ウォン・カー・ウァイが、青年だったブルース・リーに大きな影響を与えたといわれている師匠を主人公にした映画を制作中だとか。そして、その師匠役を演じるのがトニー・レオン。この二人は笑ったときの雰囲気がそっくりだから、不思議な作品になりそうです(ウォン・カー・ウァイ作品のブルース・リーを観たかった)。
ちょっと流血が生々しい作品なので、血の弱い人は要注意。