「人生のドライブ」ドライビング・MISS・デイジー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人生のドライブ
頑固な老婦人とお抱え黒人運転手の交流を描き、1989年度のアカデミー賞で作品賞に輝いたヒューマン・ストーリー。
数あるアカデミー作品賞受賞作の中でも非常に好きな一作。
この作風が好きなのだ。
まるで松竹の名作映画を見ているよう。
本当に大きな出来事は何も起こらない。
いや、一応些細な出来事は起こるのだが、日常の一コマの積み重ね。
そんな淡々とした語り口の中で描かれる二人の交流がじんわりと心に染み入る。
頑固なミス・デイジーと陽気なホーク。
最初は悪態ばかりついていたミス・デイジーも、ホークの実直な献身ぶりに徐々に心を開き、主従関係や人種を超え、大切な友となっていく。
加えて、二人のやり取りも軽妙でユーモラス。
言うまでもなく、名優二人の名演が素晴らしいのだ。
頑固で辛口だけど気品が漂うジェシカ・タンディの名演は、アカデミー主演女優は納得…どころか、当然。
舞台でも同役を演じていたモーガン・フリーマンにとってはハマり役。近年の渋い重厚演技とは違う陽気な役柄は今見ると新鮮かも。
ミス・デイジーの親思いの息子役ダン・エイクロイドも好助演。
舞台は1950年代の南部。主人公二人はユダヤ人と黒人。
劇中の警官の台詞でも皮肉られるように、人種問題もさりげなく織り込む。
25年という月日が過ぎていく。
確実にやってくる老いや死。
ボケてもなお覚え、寄り添ってくれる存在。
二人の25年の人生のドライブはかけがえのないものであった。
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