友よ、風に抱かれてのレビュー・感想・評価
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メアリー・スチュアート・マスターソン見たさ
『恋しくて』で、メアリー・スチュアート・マスターソンの魅力にすっかり虜になった私は、彼女の出演作品をチェックし、良さそうなものをいくつか見たのでした。青春を前面に押し出した、ラブコメディなんかを期待していたのですが、とても重たい戦争を題材にしたもので、おまけに彼女の役柄は、戦地に赴く若い兵士の婚約者だか、花嫁だか。美しいドレス姿を披露していますが、夫は帰らぬまま戦死してしまい涙にくれるという、とても不幸な役まわりに、見ているこっちまでつらくなったものでした。
銃後映画
ベトナム戦争中を舞台に、戦死した兵士を埋葬するアーリントン墓地の儀仗兵士を描くという“銃後”映画。コッポラというとなんといっても70年代の『ゴッドファーザー』と『地獄の黙示録』(どっちも未見)だが、80年代後半はスランプに陥ってもう過去の人という感じだったな。
この映画もとにかく地味で普通の映画といった感じ。同時期の『プラトーン』や『グッドモーニング、ベトナム』に比べるとあまり面白くない。好きな女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが脇役で出てるからという理由で観たんだが、てっきり出征していく若者たちが主人公だと思ってたら、ベトナム戦争に疑問を持ちながらも彼らを鍛え見送る歴戦の曹長を主人公とした中年映画というか初老映画だった。なので主人公が可愛がるかつての戦友の息子の新兵と結婚するという役どころのマスターソンの出番は多くない。マスターソンの代表作『恋しくて』に不良学生役で出てたイライアス・コティーズも出てた。他の映画では見たことないけど今でもいろいろと出てるようだ。
地獄の黙示録の裏側で
戦争映画ではあるが、戦争シーンは演習風景を含め、ほんのちょっとだけ。コッポラが激しい戦闘シーンはもう描き切ったために、家族や周囲の人だけを中心にしたともとれる。
「戦争は憎いが反戦運動はもっと憎い」と主張するクレル・ハザード曹長(ジェームズ・カーン)。新兵であるジャック・ウィロー(D・B・スウィーニー)はベトナム戦死者を弔う儀式にはうんざりして、名誉勲章も階級ももっと上を目指したいがためにベトナムの前線行きを願っているのだが、「ベトナムに前線なんてない!」と言うクレルの忠告も受け入れようとしないのだ。
一方、バツイチのクレルはマンションの同じ階に住むサマンサ・デイビスと仲良くなるのだが、彼女はワシントン・ポスト記者でもあり、反戦家。戦争推進派ではないため、2人の恋も上手くいくのだが、このアンバランスさが面白い。クレルとしては「本当に戦争を憎んでるのは兵士だ」と筋を通していて、これ以上部下を死なせたくない一心なのです。
一見平和なバージニア州アーリントン。しかし、そこで訓練された兵士は否応なくベトナムへと送られる。徴兵ではなく士官学校まで進むジャックなんてのは、今でいう平和ボケなんじゃないかと思うくらいの野心家兵士。戦地の恐ろしさおぞましさを知ってる曹長たちは、いかに生き残るかを教えることしかできないもどかしさも感じているのです。
かなり呆気ない展開で無意味な戦争を描いているけど、それほど強い反戦メッセージは感じられません。ただ、皮肉とも言える意外な名誉勲章授与があったり、ローレンス・フィッシュバーンが無事に帰還したことなど、記憶には残る映画でした・・・
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