「子供の気持ち」友だちのうちはどこ? monogusataroさんの映画レビュー(感想・評価)
子供の気持ち
小学生のアハマッドが帰宅して気がついたら友達のノートを間違えて持ってきてしまっていた。実は、その友達は今日学校で宿題をノートに書いてこなかったことで先生から厳しく叱責されていた。『今度同じことをやったら退学だぞ」と。彼は遠い隣村まで何とか返しに行こうとするが…。
とにかく子供達の演技が真に迫りすぎています(どうやら演出に仕掛けがあるらしく完全に演技というわけではないらしいですが)。悲しみ、不安、焦り、真剣さが画面からビンビン伝わってきて苦しくなるほどです。
見ていて自分も幼い頃の気持ちを思い出しましたね。大人にとってはどうということもないことかもしれないけれど、何気ない言葉かもしれないけれども、子供にとっては一大事。
出てくる大人たちが、これまた彼の話を聞いてくれないんですよ(苦笑)。それは、電化製品や輸送機械などが殆ど普及していない中で壮年達は日々の生活に精一杯だったり、また「子供は年長者の言うことを黙って聞くのが当たり前」という伝統的な価値観が根強かったりするためで、日本でもひと昔前はこんなだったんでしょうね。
一人だけアハマッドの話を親身に聞いてくれて案内を申し出てくれた老人がいました。でも散々歩き回った挙句たどり着けませんでした。後から考えるとその老人も行き先を本当に知っていたのかいささか怪しい。元々はドア作り職人だったらしいその老人は、歩きながら「あそこのドアは昔ワシが作った」だの「今は鉄製のドアばかり売れるようになってしまった」だの問わず語りに話します。それどころではないアハマッドとの噛み合わないやりとりが笑えるのですが、どうもその老人は話し相手が欲しかったのではないかな?「若い者は皆街に出て行ってしまう。ワシは街は嫌いだ」みたいなことを言っていたし、孤独に暮らしているらしい描写もある。
伝統的な共同体の中で人々が生きる様子と、一方でそれが少しづつ崩れつつある姿。そうした社会背景も伺うことができます。
ともかく主人公と一緒にハラハラドキドキしながらの85分。粋なラストでほっこり。