「そうまでして受けたいの・・」トップ・シークレット odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
そうまでして受けたいの・・
ジム・エイブラハムズ&ザッカー兄弟:通称ZAZの脚本・監督の映画とくれば笑いを取ることに必死過ぎてストーリーなんて二の次、三の次、真面目に観ると頭をやられてしまいます、ご注意ください。
頭から007ばりのアバンタイトル、オマーシャリフ扮する英国諜報員とドイツ軍人との爆走する列車の屋根での格闘シーン、棒立ちの軍人は迫りくる陸橋にあたって一件落着かと思えば壊れたのは陸橋のほうだった(奴はターミネーター?)。こんなのは序の口でオマーシャリフさんは車ごとプレスされてブリキ人形状態でホテルに登場、引き受けた方もどうかと思うが名優を笑いのネタに惜しみなく投入。列車が発車したかと思ったら動いたのは駅の方だった、こんな馬鹿バカしいギャグのために駅舎もどきの貨車まで作るとはなんという超お馬鹿監督たちでしょう。
繰り出すギャグは雨あられ、頭30分、気づいただけで33個、ドイツ兵がバイクを止めて柵に縄で繋ぐ(まるで馬)、ヘルメットを取っても顎ひもはそのままとか一瞬のカットだから瞬きしたら気づかない。散弾銃を空に撃ったら飛行機を撃墜、やりそうなネタだが落ちる戦闘機は戦時中の記録映像を使う凝りようは尋常じゃない、セリフにしてもいい加減、彼女に名前を訊くと”ヒラリー”、変った名だねと彼氏のニック(クリントン夫人の名でしょうに)、ドイツ語で”おっぱい垂れない女”という言う意味よ、あなたの名は?と尋ね返すと”おやじが髭を剃っていてつけたらしい”(それじゃシックだろう)。料理の名前も”豚足の●玉添え”とかワインを注いだグラスが溶ける(どんな劇薬?)とか、大真面目なバレー鑑賞、ダンサーの股間の盛り上がりが皆異常、それを貴婦人がオペラグラスで覗くとか、もう病気としか思えない、まだまだあるが書ききれない。小ネタばかりか大ネタも、彼女と盛り上がったところで身の上話、なんとブルック・シールズ「青い珊瑚礁」の丸パクリ、二人がカメラ目線で「まるで三流のメロドラマみたいでしょう」とのたまう自虐ネタ。大脱走のマックイーンばりのオートバイでの柵越えや迫りくる牡牛はジョーズのテーマ、どれだけパロっているのか数えきれない。
喜劇と言うとオーバーアクションのコメディアンに頼る監督が多い中、あえて主役は軽めのプレスリー風お兄ちゃんに地味なお嬢ちゃん、エキストラは惜しみなく脇は芸達者で固めるそつのなさ、恐れ入りました。ZAZの良いところは必死さと未熟さが同居している確信犯ということでしょう、まだまだ伸びしろを感じます。乱れ撃ちから笑いのスナイパーへの転身も観てみたい。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言いますが日本ではギャグも不発?、2週間で打ち切りのいわくつき映画です、笑いのツボが合わなくて全弾外れの人もいて当たり前、笑わせる筈が怒りだす人まで出るかも知れない難しさ、それもコメディ映画の宿命なのでしょう・・・。