「祖国を愛する「詩人の魂」」ドクトル・ジバゴ(1965) jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
祖国を愛する「詩人の魂」
長いと思われる(読んでいない)原作を 手際よく 映画に仕上げていると思う
大味になりがちな 大河ドラマを 監督の細部へのこだわりが救っている
また「アラビアのロレンス」などで成功した監督のもとに 名優が集まり、原作者の国では決して製作されない映画を 完成させた
原作者パステルナークの心情は主人公ジバコに投影されている
(彼の詩集を読んでみたい)
時代の変革(動乱)期の 手法の残虐さと庶民の苦労に胸が詰まる
また、この時の 男達の生きざまが 興味を引く
医者と詩人の兼務で 生き延びる ジバコ
時代の変化を 嗅ぎわけ、実利を得ながら 生きる コマロフスキー
変革を目指す冷徹な イエブグラフ と純粋さが冷酷さに変化し、殺されるパーシャ
ラーラとトーニャだけでなく、ジバコ(ジバコの詩集)が 人々の心を捉えるのが判る
悪党 コマロフスキーさえも…
まさに「人はパンのみにて生くるものに非ず」である
俳優陣では
オマー・シャリフ(ジバコ) 育ちの良さと繊細
アレック・ギネス(イエブグラフ)
ラルフ・リチャードソン(父親) 上手い
トム・コートネイ(パーシャ)
ロッド・スタイガー(コマロフスキー)が 印象に残った
特に、スタイガーは複雑な悪党を 上手く演じていて、俳優としての凄味(熟成)みたいなものを感じる
クリスティとの絡みで、監督を怒らせたらしいが
(今だったらセクハラだよん、しれっと自白してるけど… 気の毒な クリスティ)
揺れるコマロフスキー、物語最後に やっぱり悪党に回帰 本質を再認識させる
大人になった ラーラの心の底からの「拒絶と不服従」が そうさせるのか?
彼女がフランス系というのも納得させられる
激動期に 複雑に絡みあう人々の心
階段から 降りてくる鼠にも、演技をつけたと言われる リーン監督
ベリキノ屋敷へ向かう 馬車の周りを 駆け回る 子馬の演技も、しばしの歓びを表し 詩的で愛らしい