劇場公開日 1998年11月14日

「トゥルーマンも、クロちゃんも、同じ人間なんだ!」トゥルーマン・ショー ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0トゥルーマンも、クロちゃんも、同じ人間なんだ!

2025年2月13日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

いやあ、面白い。
奇想天外の設定、先が読めない展開、魅力的な登場人物、
主人公の心の変化、変わらない想い、
終盤に向けての試練、ラストシーンのセリフ。

ここまで完璧なエンタメ作品は、早々、思い浮かばない。
1998年日本初上映の作品を、2025年に観ても、
十分、色褪せずに、面白かった。
ミルクボーイの「コーンフレーク」の漫才を、初めて観た時ぐらいの満足感はあった。

ただ、トゥルーマン・ショーのような、
監視バラエティと呼ぶべきエンタメ作品は、
振り返ると、結構存在しているように思う。

たとえば、水曜日のダウンタウンにおける、
「クロちゃんシリーズ」は、この作品の延長線上のような作品だ。
ドッキリバラエティ全般は、この系譜になる。

ただ不思議な事に、インターネットで、

「トゥルーマン・ショー 監視 気持ち悪い」

で検索すると、
「人権侵害だ」とか「胸糞気分悪い」などと、
この作品に批判的な声が、少なくない事に気づかされる。

一方で、

「クロちゃん 監視 気持ち悪い」

で検索すると、
クロちゃんシリーズへの批判はほとんど無く、
クロちゃんの行動や発言に対しての、
批判ばかり出てくるのは、不思議で仕方がない。

トゥルーマンとクロちゃんの、一体何が違うと言うのか。

同じ人間だろ?

フィクションである、トゥルーマンの騙され具合に嫌悪し、
ノンフィクション側の、クロちゃんの騙され具合に嫌悪しないのは、
偽善ではないのか。

この作品に批判的な連中は、
作り物のトゥルーマンには人権があり、
人間そのもののクロちゃんには、
人権がないと言うのだろうか。ナンセンス過ぎる批判だ。

まるで、「アメリカン・フィクション」で観た、
黒人に寄り添うように見せかけて、
実際は白人の罪悪感を、有耶無耶にしたいだけの、
意識高い系白人の浅はかさと、白々しさを彷彿とさせる、
ブラックコメディのような話だ。

この作品は、つべこべ言わず、楽しめば良い。
劇中で観た、トゥルーマン・ショーのテレビ視聴者のように。
笑って、泣いて、同情して、応援すれば良いだけなのだ。

主人公は外の世界に出たらきっと、
「進め!電波少年」の、ユーラシア大陸横断直後の、
猿岩石みたいな出迎えを、幸か不幸か、受けることになる。
あの時も、かなり盛り上がったなあ。

余韻がたまらない作品だった。

ソビエト蓮舫