12モンキーズのレビュー・感想・評価
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改めて見つめると、至るところにギリアム流の趣向がぎっしり
あのタンゴが鳴り響くと、我々の頭にはすぐさま地球崩壊後の暗雲たる情景が広がっていく。救いのない未来絵図を独特のビジュアルとシニカルなタッチで描き出すのは奇才テリー・ギリアムのお家芸。だが、本作はそうやってギリアム臭を充満させながらも、企画そのものは彼とは別のところで始動してきた。つまりギリアムにしてみれば他人の企画に乗っかる形でスタートした作品なのだ。そのため強烈なギリアム色を欲する人には物足りないだろうが、クオリティ面で言うと極めてバランスのとれた名作に仕上がっている。ギリアムはこれくらいの距離感の方がうまく映画と間向かえるのかも。『ラ・ジュテ』の要素のみならず『めまい』から得たものも大きく、ラスト近くにはあからさまな目配せが用意されているのも楽しい。観客もこうして時間と距離を隔てて再見することで作品内に埋め込まれた趣向を俯瞰して享受できるのかもしれない。いわば一粒で二度美味しい良作だ。
モンキーの巣の上で。 SFとパラノイアが融合した悪夢的カオスの世界にマクレーンが挑む!
未来から送り込まれた男コールが、人類の大多数を死滅させたウィルスの謎を究明する為に奮闘する様を描いたSFサイコサスペンス。
監督は『未来世紀ブラジル』『フィッシャー・キング』の、巨匠テリー・ギリアム。
主人公ジェームズ・コールを演じるのは『ダイ・ハード』シリーズや『パルプ・フィクション』の、名優ブルース・ウィリス。
精神病院の入院患者、ジェフリー・ゴインズを演じるのは『インタビュー・ウィズ・バンパイア』『セブン』の、名優ブラッド・ピット。
第53回 ゴールデングローブ賞において、ブラッド・ピットが助演男優賞を受賞!
コメディ集団「モンティ・パイソン」の元メンバー、テリー・ギリアム監督。「鬼才」と称される彼の作品を初めて鑑賞してみたのだが、うーん面白い…。
基本はSF映画でありながら、タイムトラベルとパラノイアを悪魔合体させる事により独自の悪夢的世界を構築し、観客も妄想と現実の狭間をブルース・ウィリスと共に強制的に巡らされる。
ひとつひとつの要素はありきたりである。精神病院の描写は『カッコーの巣の上で』(1975)、タイムトラベル要素は『ターミネーター』(1984)、動物園を解放するというのはジョン・アーヴィングのデビュー作「熊を放つ」(1968)、そして主人公ジェームズ・コールの泥だらけで頑張る様はどうしたって『ダイ・ハード』(1988)のジョン・マクレーンを彷彿とさせる。
とまぁこんな具合に、何処かで見た事があるあれやこれやで埋め尽くされている映画なのだが、ブレンドの加減がとにかく絶妙。先行作品の二番煎じに陥っていないどころか、公開からどれだけ時間が経とうが決して古びないであろう圧巻の強度を生み出す事に成功している。
ブルース・ウィリスとブラピの共演も見どころの一つ。本作が公開された1995年はプラピの代表作である『セブン』も公開された、彼が俳優として大躍進を遂げた年である。
頭のネジが外れた環境テロリストを演じ切り、演技派としての側面を見せつけたプラピ。このゴインズの役どころが、後に『ファイト・クラブ』(1999)のタイラー・ダーデンへと繋がるのかと思うと感慨深い。言ってる事とかやってる事、ほとんど一緒じゃん!
過去からやって来たマクレーンと、未来からやって来たタイラーが現在で激突する!こんな夢の対決が見られるのはこの映画だけっ!🫵
タイムトラベルは作品によってルールが違う。
目的がウィルスの蔓延を阻止する事ではなく、ウィルスの対処法を見つける事であるからも分かるように、本作では一度起こった事は過去に戻っても変えられないようだ。過去改変がモロに現在に影響を及ぼす『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)形式ではなく、どちらかというと『ドラゴンボール』(1984-)のセル編に近い感じなんだと思う。
過去・現在・未来を通して地獄巡りをさせられるコール。自由を掴む為に必死に足掻くも、結局は自らの死という既定路線を歩んでいるだけだった、というエンディングはニヒリズムに満ちており、1人の人間が世界の破滅を防ぐ事が出来るという幻想を打ち砕く。
しかし、コールの行動は全くの無意味だった訳ではない。幼少時の彼が見た黄色いレインコートの男はゴインズだったが、実際はピータースだった。僅かだが、確実に未来は変化しているのだ。
映画は悲劇として幕を下すが、環境問題は1人の英雄ではなく市井の人間1人1人の行動に掛かっているという、切実かつ前向きなメッセージが込められている様に思う。
コールとライリーのロマンスは完全にストックホルム症候群じゃねーかっ!!とか、終盤の手持ち無沙汰感とか、言いたい事が無いわけでは無いんだけど、それでも尚本作の面白さは揺るがない。
シリアスな物語でありながらコメディの要素もちゃんと含まれていて観やすく、アストル・ピアソラ作曲のタンゴ「Suite Punta del Este」(1982)をベースにしたテーマ曲も如才無く映画を彩っている。いやはや、テリー・ギリアム監督お見それしました🙇
脚本、映像、音楽、キャスト、全てが一級品の傑作。SF映画ってこういう事だわ!
あの音楽は
俺たちの過去も映画を見るのと同じ
・ブラッドピットさんの演技が凄まじく精神崩壊的な部分をどう表現したのか考えた結果ああなったのかなと思った。ただ、物語が未来になると少ししっかりしてきて、その辺のギャップ感もさすが名優と思った。
・この映画もSF洋画であるある(?)のどんでん返し的な結末だったので見ていて飽きなかったし、伏線というか筋がしっかりしていたから真犯人についても納得した。ただ、若干場面転換(時代)があるので落ち着いて鑑賞しないと1回では理解が追いつかない気もした(それが当たり前の話は前提で、例えばなにかをしながらついでにこの映画を見るとかだと多分本編の理解度が遅くなる気がした)
・テーマソングを聴いて、この音楽12モンキーズなのか!と知った。というのもかなりテレビで使われていて子供の時から耳に残ってたメロディだったから。たまたま12モンキーズを観よう!ってならなかったらあの音楽に出会えるのがかなり先になったと思うとラッキーだった。
未来は変えられない
【ウイルス蔓延により生き残った人類の1%が地下で暮らす2035年から1990年に送り込まれた男が経験する数々の事。今作は脳内フル回転で観る映画であり、テリー・ギリアムワールドを愉しむ作品なのである。】
■1996年に発生した謎のウイルスにより全人類の約99%が死滅した未来。
地下に住んでいた人間たちは原因を探るため、“12モンキーズ”という謎の言葉を手掛かりに1人の囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)を過去へ送り出す。
しかし、彼が送られたのは事件が起きる6年前の1996年だった。
◆感想
・自身の罪を軽くするために2035年の科学者たちから1990年に送られたジェームズ・コールが、未来、現在、過去の第一次世界大戦時にも送り込まれる中で、精神科医の女医キャスリン・ライリー(マデリーン・ストー)と出会い、真実に近づく過程を、非常に分かりにくく描いた作品。
・但し、その中での複雑なる人間関係と見せつけられるタイムトラベルサスペンス及び、各年代の猥雑とした美術には、如何にもテリー・ギリアムらしさを感じる作品である。
<今作は、短編であるクリス・マルケル監督の「ラ・ジュテ」を見ておくと、多少分かり易いのではないかと思う。
今作は脳内フル回転で観る映画でもあり、その過程でテリー・ギリアムワールドを愉しむ作品なのである。>
12monkeys
SFとしての純度の高さ
いつまでも心に残り続ける12匹の猿
「12モンキーズ」は公開時に観ているはずなのだが、全く覚えていなかった。何やら今をときめく(当時)ブラッド・ピットが出演していると聞き及び、事前知識ゼロで観に行った、という些末な事は覚えているが、肝心の映画の方は事前知識ゼロが災いして理解が及ばなかったのだろう。
今観るとものすごく自分好みの映画だったことに軽く衝撃を覚えた。むしろ、なんで今このレベルのSFサスペンス・ミステリーが作れないのか、疑問に思うほど面白かった。
こんなん、未来世紀ブラジルでシャッターアイランドなメメントじゃん!
時を経て興味深いのは、未来の世界描写。テリー・ギリアム感と言えばそれまでかもしれないが、最近のSF映画ではまずお目にかかれないスチーム・パンクっぽさが一周回って新しい気さえするし、なんだかオシャレ。
そして漂うディストピア感。まぁ主人公は囚人なので当たり前かもなんだけど。
現代パートでも、画面に映るのは落書きだらけのダウンタウンだったり、やたら混雑した精神病院だったり、廃墟になった映画館だったり世界の全てが小汚くて幸せとは程遠い感じなのが良いんだよね。
つまり「今生きてるところに美点なんてなにもない」雰囲気が漂ってるところ。それが「もっと良い世界」への渇望に繋がっていくのかなと思う。
ジェームズが逃げ出そうとしたことも、勿論そうなんだけど、ジェフリーが画策したことの根拠も、そこにあるような気がする。
この映画は観終わったら「あれは何だったんだ?」とか「これってこういう事?」とか、色々整理していくのが面白いので、観たヤツ一人一人の解釈があって良い。
ただ1つ、私が感じたのは「何もかも明瞭に理解してスッキリする必要はない」ってこと。意味不明なことも、心に引っかかる色々なシーンも含めて、いつまでも「アレは一体何だったんだ?」と思えるほど心に残る映画はそうそうない。
むしろ何で公開時の私はそう思わなかったのか?それが「12モンキーズ」最大の謎だ。
監督の世界観に好き嫌いは有るかも知れないが、そういう映画なのだと思えば楽しめるはず。
すでにスターの仲間入りをしていたブルース・ウィリスは、この映画では捜索者・操り人形であり、自分の記憶の中の謎に迫る役どころ。相変わらず汗まみれ、泥だらけの苦労の連続で違和感はないが、今回はスーパー・ヒーローではなく、時に怯え、悩み、手探りで真実を掴もうとする男の役で、その「求める」悲壮感は一見の価値はあると思う。
一方、まだ客を呼べる俳優だと認めてもらっていないブラッド・ピットは、本当に変で妙な役を与えられたが、物語の鍵となる行動をしているから注意。この映画のブラピを好きになれない人もいるのも事実だが、「セブン」と同じ年に公開された1995年は、ブラピにとって良い年なのかも知れない。
テリー・ギリアム監督の世界は
必ず味のある映像を見せてくれる。
だから気になってしまう。
※
今となっては少し陳腐だが狂気さが味を出している
ブルース・ウィリスの全盛期、 ブラッド・ピットは今ほどかっこよくない。 マデリーン・ストウ(38才)が美しい。 前半はちょっとわかりにくくて我慢が必要かもしれないが、 後半から面白くなるから大丈夫。
動画配信で映画「12モンキーズ」を見た。
劇場公開日:1996年6月29日
1995年製作/130分/アメリカ
原題:12 Monkeys
配給:松竹富士
ブルース・ウィリス
マデリーン・ストー
ブラッド・ピット
クリストファー・プラマー
デヴィッド・モース
21世紀初頭、
全世界に蔓延したウイルスによって、
人類は絶滅の危機に瀕していた。
新型コロナウイルスかなと思ってちょっとドキドキした。
2035年、科学者グループは
囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)を過去に送った。
ウイルスの原因を取り除くためだった。
囚人を1996年に送ったつもりが実際は1990年だったとか、
脚本が面白い。
たぶんブルース・ウィリスの全盛期で、
ブラッド・ピットは今ほどかっこよくない。
マデリーン・ストウ(38才)が美しい。
前半はちょっとわかりにくくて我慢が必要かもしれないが、
後半から面白くなるから大丈夫。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
映画力に満ち溢れた怪作
テリーギリアムのチャチなおもちゃ箱のようなイマジネーションの世界が、
脚本といい形でマッチし、傑作になった稀有な例ですね。
彼の独自の世界は、良くも悪くも、ぶっ飛んでおり、映画力と芸術力と、妙な特撮に偏った
尖りきった作品が多く、難解で、一定数のコアなファン(私もです)に留まる、
メジャーになりえない、非常に非常に惜しい作家性なのですが、
今回はたまたま、企画がよかったのか、この良くできた脚本との融合により、(ギリギリですが)
比較的、マトモでメジャーベースにも載せられる、良作品に仕上がっています。
とはいえ、オープニングのディストピア感満載の未来世界の映像は素晴らしいですし、
(予算が尽きたのか⁉ というほど、それっきり描かれなくなるのが残念=脚本がうまい)
美しくも歪んだ映像表現、捻りの効いたシニカルな選曲(ピアソラなんか大好き)、
オーラス近くの12モンキーズの犯罪の場面(笑)など、
非常に卓越したセンスと、演出力と、爆発的な映画力に満ち溢れております。
この映画力だけで、観るに値する作品だと思います。
今では何でもアリのCGより、よほど、味のある、そして合成感の(あまり)ない、素晴らしい特撮に仕上がっています。
技術的にも恵まれた、ちょうど良い時代だったのでしょうね。
この作品の素晴らしいところは、タイムスリップものでありながら、時間の不可逆性には逆らわず、
タイムリープもの的な脚本の構成の上手さもあいまって、ちゃんとしたSFに落とし込んでいるところですね。
これが滅茶苦茶になると、更に台本が混乱し、わけの分からない映画になってしまうのですが、
ご都合主義でまとめられたバックトゥザフューチャーのようなライトSFな作風にならずに、
ハードSFから逃げずに勝負しております。
そのため、決して万人向けではなく、難解な印象が強い作品になっています。
とはいえ、思わせぶりな伏線があいまって、「妄想か、正気か」という、非常に曖昧なテーマを
上手にミスリードに繋げてゆくあたり、とても上手いのですが、
個人的には、
その精神性の歪みには、ちゃんと肉体性が伴っており、
要は、血が流れたり、怪我をしている状態の登場人物はマトモではなく、揺らぐのに対し、
健康な肉体には健康な精神が流れたりするため、進行するため、主人公は(わざと)流血させられる、怪我をするという
物語上の必然があり、役者は当然、ダイハードのブルースウィルスですから、思わず笑ってしまいます。。というメタ的な仕掛けが好きですね。
この映画は、先述のとおり、時間の不可逆性に支配されておりますから、当然、世界はラストシーンで救われることはなく、
定められたとおり、あのまま、世界は一度滅びるのでしょう。
保険のおばさんと(笑)、ボランティアの皆さん(笑)により、救われる(変わる)としたら、
あのディストピア世界のその先の未来なのですが、
そこは描かれることもなく、「この素晴らしき世界」、ルイ・アームストロングに繋げるあたり、
お洒落というか、非常にキツいシャレのきいた、シニカルな作風が好きです。
7割理解でも面白い
張り巡らされた無数の伏線、その複雑さがクセになる
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