12モンキーズのレビュー・感想・評価
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改めて見つめると、至るところにギリアム流の趣向がぎっしり
あのタンゴが鳴り響くと、我々の頭にはすぐさま地球崩壊後の暗雲たる情景が広がっていく。救いのない未来絵図を独特のビジュアルとシニカルなタッチで描き出すのは奇才テリー・ギリアムのお家芸。だが、本作はそうやってギリアム臭を充満させながらも、企画そのものは彼とは別のところで始動してきた。つまりギリアムにしてみれば他人の企画に乗っかる形でスタートした作品なのだ。そのため強烈なギリアム色を欲する人には物足りないだろうが、クオリティ面で言うと極めてバランスのとれた名作に仕上がっている。ギリアムはこれくらいの距離感の方がうまく映画と間向かえるのかも。『ラ・ジュテ』の要素のみならず『めまい』から得たものも大きく、ラスト近くにはあからさまな目配せが用意されているのも楽しい。観客もこうして時間と距離を隔てて再見することで作品内に埋め込まれた趣向を俯瞰して享受できるのかもしれない。いわば一粒で二度美味しい良作だ。
SFとしての純度の高さ
先日観た本作の元となった『ラ・ジュテ』に続き、テリー・ギリアム流の解釈で文字通り"面白おかしい"サンペンススリラーとしてのSFになっていて素晴らしかった。
約2時間のなかにタイムトラベルの時間の流れに混乱することの心地よさが多分にあり、2035年の美術、ビジュアルもコテコテで外連味たっぷりで観ていて楽しい。一方、展開とその設定には緊迫感、緊張感がありハラハラする。ラストは予想できつつ後味悪くない、けど哀しさの漂う良いものだった。
俳優陣もぴったりで素晴らしい演技。ただ、やっぱりブルース・ウィリスはヅラを被ると面白すぎる。
いつまでも心に残り続ける12匹の猿
「12モンキーズ」は公開時に観ているはずなのだが、全く覚えていなかった。何やら今をときめく(当時)ブラッド・ピットが出演していると聞き及び、事前知識ゼロで観に行った、という些末な事は覚えているが、肝心の映画の方は事前知識ゼロが災いして理解が及ばなかったのだろう。
今観るとものすごく自分好みの映画だったことに軽く衝撃を覚えた。むしろ、なんで今このレベルのSFサスペンス・ミステリーが作れないのか、疑問に思うほど面白かった。
こんなん、未来世紀ブラジルでシャッターアイランドなメメントじゃん!
時を経て興味深いのは、未来の世界描写。テリー・ギリアム感と言えばそれまでかもしれないが、最近のSF映画ではまずお目にかかれないスチーム・パンクっぽさが一周回って新しい気さえするし、なんだかオシャレ。
そして漂うディストピア感。まぁ主人公は囚人なので当たり前かもなんだけど。
現代パートでも、画面に映るのは落書きだらけのダウンタウンだったり、やたら混雑した精神病院だったり、廃墟になった映画館だったり世界の全てが小汚くて幸せとは程遠い感じなのが良いんだよね。
つまり「今生きてるところに美点なんてなにもない」雰囲気が漂ってるところ。それが「もっと良い世界」への渇望に繋がっていくのかなと思う。
ジェームズが逃げ出そうとしたことも、勿論そうなんだけど、ジェフリーが画策したことの根拠も、そこにあるような気がする。
この映画は観終わったら「あれは何だったんだ?」とか「これってこういう事?」とか、色々整理していくのが面白いので、観たヤツ一人一人の解釈があって良い。
ただ1つ、私が感じたのは「何もかも明瞭に理解してスッキリする必要はない」ってこと。意味不明なことも、心に引っかかる色々なシーンも含めて、いつまでも「アレは一体何だったんだ?」と思えるほど心に残る映画はそうそうない。
むしろ何で公開時の私はそう思わなかったのか?それが「12モンキーズ」最大の謎だ。
監督の世界観に好き嫌いは有るかも知れないが、そういう映画なのだと思えば楽しめるはず。
すでにスターの仲間入りをしていたブルース・ウィリスは、この映画では捜索者・操り人形であり、自分の記憶の中の謎に迫る役どころ。相変わらず汗まみれ、泥だらけの苦労の連続で違和感はないが、今回はスーパー・ヒーローではなく、時に怯え、悩み、手探りで真実を掴もうとする男の役で、その「求める」悲壮感は一見の価値はあると思う。
一方、まだ客を呼べる俳優だと認めてもらっていないブラッド・ピットは、本当に変で妙な役を与えられたが、物語の鍵となる行動をしているから注意。この映画のブラピを好きになれない人もいるのも事実だが、「セブン」と同じ年に公開された1995年は、ブラピにとって良い年なのかも知れない。
テリー・ギリアム監督の世界は
必ず味のある映像を見せてくれる。
だから気になってしまう。
※
今となっては少し陳腐だが狂気さが味を出している
プロット展開としては、複雑なタイムトラベル系の作品は世にたくさんあるので、いま見ると陳腐に感じてしまう。当然映像も当時のものなので古くさい感じがある。
それでもこの作品で退屈しなかったのは、要所要所にある狂気的な演出だろう。ブラピ演じるジェフリーのようなわかりやすい狂人だけでなく、タイムトラベルで頭が混乱しているジェームズの様子もおかしいし、キャサリンだって、拉致られた側なのになんか飄々としているというか。他にもたくさん「なんかちょっと変」な演出がたくさんあり、こうした狂気じみた感じと(上映当時からすると)斬新なプロット展開が熱狂的なファンを作ったのかなと思いました。
ブルース・ウィリスの全盛期、 ブラッド・ピットは今ほどかっこよくない。 マデリーン・ストウ(38才)が美しい。 前半はちょっとわかりにくくて我慢が必要かもしれないが、 後半から面白くなるから大丈夫。
動画配信で映画「12モンキーズ」を見た。
劇場公開日:1996年6月29日
1995年製作/130分/アメリカ
原題:12 Monkeys
配給:松竹富士
ブルース・ウィリス
マデリーン・ストー
ブラッド・ピット
クリストファー・プラマー
デヴィッド・モース
21世紀初頭、
全世界に蔓延したウイルスによって、
人類は絶滅の危機に瀕していた。
新型コロナウイルスかなと思ってちょっとドキドキした。
2035年、科学者グループは
囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)を過去に送った。
ウイルスの原因を取り除くためだった。
囚人を1996年に送ったつもりが実際は1990年だったとか、
脚本が面白い。
たぶんブルース・ウィリスの全盛期で、
ブラッド・ピットは今ほどかっこよくない。
マデリーン・ストウ(38才)が美しい。
前半はちょっとわかりにくくて我慢が必要かもしれないが、
後半から面白くなるから大丈夫。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
映画力に満ち溢れた怪作
テリーギリアムのチャチなおもちゃ箱のようなイマジネーションの世界が、
脚本といい形でマッチし、傑作になった稀有な例ですね。
彼の独自の世界は、良くも悪くも、ぶっ飛んでおり、映画力と芸術力と、妙な特撮に偏った
尖りきった作品が多く、難解で、一定数のコアなファン(私もです)に留まる、
メジャーになりえない、非常に非常に惜しい作家性なのですが、
今回はたまたま、企画がよかったのか、この良くできた脚本との融合により、(ギリギリですが)
比較的、マトモでメジャーベースにも載せられる、良作品に仕上がっています。
とはいえ、オープニングのディストピア感満載の未来世界の映像は素晴らしいですし、
(予算が尽きたのか⁉ というほど、それっきり描かれなくなるのが残念=脚本がうまい)
美しくも歪んだ映像表現、捻りの効いたシニカルな選曲(ピアソラなんか大好き)、
オーラス近くの12モンキーズの犯罪の場面(笑)など、
非常に卓越したセンスと、演出力と、爆発的な映画力に満ち溢れております。
この映画力だけで、観るに値する作品だと思います。
今では何でもアリのCGより、よほど、味のある、そして合成感の(あまり)ない、素晴らしい特撮に仕上がっています。
技術的にも恵まれた、ちょうど良い時代だったのでしょうね。
この作品の素晴らしいところは、タイムスリップものでありながら、時間の不可逆性には逆らわず、
タイムリープもの的な脚本の構成の上手さもあいまって、ちゃんとしたSFに落とし込んでいるところですね。
これが滅茶苦茶になると、更に台本が混乱し、わけの分からない映画になってしまうのですが、
ご都合主義でまとめられたバックトゥザフューチャーのようなライトSFな作風にならずに、
ハードSFから逃げずに勝負しております。
そのため、決して万人向けではなく、難解な印象が強い作品になっています。
とはいえ、思わせぶりな伏線があいまって、「妄想か、正気か」という、非常に曖昧なテーマを
上手にミスリードに繋げてゆくあたり、とても上手いのですが、
個人的には、
その精神性の歪みには、ちゃんと肉体性が伴っており、
要は、血が流れたり、怪我をしている状態の登場人物はマトモではなく、揺らぐのに対し、
健康な肉体には健康な精神が流れたりするため、進行するため、主人公は(わざと)流血させられる、怪我をするという
物語上の必然があり、役者は当然、ダイハードのブルースウィルスですから、思わず笑ってしまいます。。というメタ的な仕掛けが好きですね。
この映画は、先述のとおり、時間の不可逆性に支配されておりますから、当然、世界はラストシーンで救われることはなく、
定められたとおり、あのまま、世界は一度滅びるのでしょう。
保険のおばさんと(笑)、ボランティアの皆さん(笑)により、救われる(変わる)としたら、
あのディストピア世界のその先の未来なのですが、
そこは描かれることもなく、「この素晴らしき世界」、ルイ・アームストロングに繋げるあたり、
お洒落というか、非常にキツいシャレのきいた、シニカルな作風が好きです。
7割理解でも面白い
話が現在過去未来を行ったり来たりするので初見で完全把握は難しいですが、7割くらいは理解できますのでそれでも十分楽しめます。
未来の科学者シーンは博士の異常な愛情の影響大です。テンポのよさ、やたら流れる小ばかにしたアコーディオンの間奏、ブラピの気チガイ演技が見ものです。
独特な感じ。クラシック的な感じも雰囲気が出ている。 展開についてい...
独特な感じ。クラシック的な感じも雰囲気が出ている。
展開についていくのが大変だけど、先が気になってしまう。
みんな狂ってる感とブルース・ウィリスも常に辛そうで、ちょっと疲れました(笑)
張り巡らされた無数の伏線、その複雑さがクセになる
初めて鑑賞した後は少しモヤモヤ、なんとなく納得できずっていうのが素直な感想。だけど2回目、3回目と何度も観るうちにその考えはガラッと変わった。
作品と向き合うたびに新たな発見ができ、独特な世界観に酔いしれる。数多くの伏線が張られ、しっかり見入ってなければ比較的難易度高めな感じなのかなと個人的には思う。完璧な伏線の何とも言えない絶妙な複雑さがクセになる。それらが観客に何を伝えたいのか理解できた時、この作品の本質を心の底から楽しむことができるだろう。
またテリー・ギリアムの鬼才っぷりにも驚かされる。終始作品が放つ世界観に圧倒され、本編とエンドロールの不一致さにいい違和感を覚えるのもまた面白いところ。
There's no right, there's no wrong,
映画の日ということでずっと楽しみにしていた12モンキーズを観ました。
レビュータイトルは映画の中で私が特に好きなセリフで本当はこの後にthere's only popular opinion.と続きます。ジェフリーが病棟で就寝前に興奮し演説しているワンフレーズです。
ブラピ演じるジェフリーは狂っていますが、最後に彼が取った行動を見るとやっぱりあのジェフリーのままだと安心して思わず微笑んでしまいました。どうしても憎めない人間としての不思議な魅力を備えたジェフリー・ゴードンは私の好きなキャラクターベスト3には入ってしまいます。そして筆者、なんとこの映画を観ている途中まで彼を演じているのがブラピだと気づかなかったんです。そのくらいキャラクターが全面に出ていて、ブラピの凄さを感じさせられる映画でもありました。
シナリオも整っていて、初めはコールを中心に話が進んでいくのですが後半はもっと客観的な視点から幅広くスポットが当たっていて物語が膨らんでいく中で綺麗に伏線を回収していくという一見矛盾しているかのような演出に心を奪われました。
12モンキーズは明らかにキーではあるのですが核心ではないにも関わらずそこをタイトルにしているのも粋だなと思います。
それにしても人類は元々ウイルスネタが好きだったんですね笑
散りばめられたヒントの絶妙
公開当時劇場で鑑賞したものを、再鑑賞する。
未来と過去を行き来する主人公。
タイムトラベルの中で謎を解いてゆく、という二重構造がかなり複雑な物語ながら
すんなり頭に入って来る超絶テクニック構成。
この、要所要所にヒントをのぞかせなつつも、
明かされ、つじつまがあった時、鑑賞者に「あれか!」
と思わせる見せ方がとにかく上手くて震える。
のせられて物語にのめり込めば、噛み合ったとき立つ鳥肌はもう格別だ。
そのためのミスリードの効き具合も凄まじい。
前半、ブルースウィリス演じる主人公が妄想に憑りつかれた変人のように描写されるが、
後半では女医のヒロインがそのように描かれ、主人公がマトモに見えてくる辺りも
事態のひっ迫感をあおり、引き付けられた。
公開当時はあのラストに、主人公はミッションに失敗したのだ、
と愕然として劇場を出たが
今回、見てみるともしや、その失敗を経てさらに送られて来た人が?
と思える描写があり、しかしそこでカットアウトされるところから、
なおさらエンドロールに深みを感じることができた。
しかしうまい。
シナリオとその構成に乾杯。
キャサリンの微笑み
タイムトラベルトリックとして秀逸。ミステリー、SF、ロマンス、アイロニーと様々な要素が詰まっていて、難解で実に面白い。
ギリアムは大昔に「未来世紀ブラジル」を一度観たきりだが、このあえてチープな未来感がギリアムなのだろう。
クライマックスのキャサリンの全てを悟ったあとの微笑みが慈愛に満ちていてたまらなく好きだ。そしてラストの機内、全て仕組まれたことだったというオチがよい。
物語の傍流だが、惑星オゴに旅をする男が『俺にとっては全てはリアルだが実際はオゴは俺の想像の世界だ』というセリフが核心を突いていると思う。自分が信じるリアルが妄想かもしれないということを私は常に恐れている。
何て贅沢なミスディレクション。
ブラッド・ピットの圧倒的な演技力に、冒頭からいきなり全部持っていかれる。アカデミー助演男優賞の怪演は必見。
タイムループを度々繰り返すので、何が本当なのか、何が現実なのか、数多の伏線もあり、なかなか頭の整理がつかない。
四半世紀近い昔にパンデミックを題材に、パニック映画にせず、まさかのサスペンス映画に。新型コロナを予言したかと思うくらいの設定と、その世界観に驚かされる。
未来(という現在)を救う為に、過去に挑むのだが、未来を変えるのが目的ではないのが秀逸。ドラゴンボールのトランクスに近いタイムループ。設定は非常に興味深いが、2035年の地下世界、地上の描写、もう少し時間をかけても良かった。未来での危機が希薄かつ独特過ぎてしまったか。
違和感と不安を煽る音楽、演出は素晴らしく、そこにルイ・アームストロングの名曲が、最後に沁み入る懐古的な感覚はとても心地良い。
ラスト30分には賛否分かれているが、現実はリセットは出来ない。思い込みの怖さ、各々が持つ正義と常識、
考えさせられるラストのワンシーン。スッキリするエンディングではないので、ハッピーエンドに期待はせずに。
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