天井棧敷の人々のレビュー・感想・評価
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4時間は長いかも
第二次世界大戦中という制作当時のコンテクストの中で批評すれば、ここには現在の恋愛劇のありとあらゆる要素や、パターンが織り込まれており、非常に重厚な恋愛大河ドラマになっていると評価することができる。
しかしながら、あまたの映像作品の中に、様々な恋愛模様や人生を見てきた、現在の観客の目からみれば、4時間という上映時間を使って表現するには、少し冗長な印象を抱かざるを得ない。
ただし、セットの中を縦横に動き回るカメラワークが生み出す映像と、編集の妙は、スピード感があり、長い時間でも楽しむことができる。物語の筋を追うだけの現代の鑑賞者には退屈な作品でも、映画的な文法を心得、それを追うことのできる向きには、これぞフランス映画の原点という印象が残るだろう。
そうは言っても、やはり4時間は長い。長いからこそ、何度も繰り返し見る必要がありそうだ。
60年前の映画なのに構えずに見れる
この映画は文字通りの歴史に残る名作の中の名作で、第二次世界大戦中にナチスドイツの占領下にあったフランスで、約三年の歳月を使って撮影された作品です。近所のミニシアターで二年前に上映されました。
ストーリーは二部構成で、簡単に言えば貧しさゆえに愛よりもお金をとった人々の悲しいラブ・ストーリー。ラブ・ストーリーといっても、今の恵まれた時代にあるものより、展開はリアルです。貧困の生活では、愛ですら権力や財力を前にすると、一瞬にしてかすんでしまうのですから。フランス映画の精神の原点は、この映画にあるような気がしました。ぎりぎりに追い詰められると、愛は必要条件の一つであるが、十分条件ではないのだ。そして、それが人生というもの。ということになるのでしょう。
モノクロ映画を見るといつも思うのは、画面の力がカラーよりもあるということ。それは時として吸い込まれそうなくらい危険なほどですが、本作のような重いストーリーでは何故かホッとする。マルセル・カルネ監督はじめ撮影に関わった人々の、画面の細部にいたる細部にまで心を砕いた跡がうかがえます。
画面に語る力を秘めた映画つくりをできる人は、この人とフェリーニ、タルコフスキー、そしてスピルバーグくらいでしょう。
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