「「シェルブールの雨傘」とは異なり過去を選択した男」天井棧敷の人々 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
「シェルブールの雨傘」とは異なり過去を選択した男
かつてのNHKBS放送録画分を再鑑賞。
この映画、
同じ仏映画「シェルブールの雨傘」の
男性主人公と比較して観てしまう。
ラストシーンで妻子を捨ててまで
ガランスを追う、つまり現在よりも過去
を選択するバチストだが、
一方、「シェルブール…」の男性主人公は、
“心の中”で過去よりも現在を選択する、
というか過去を切り捨てる。
男性主人公の対照的な対応だが、
では「シェルブール…」の彼は
バチストよりも彼女への想いは
弱いだろうか。いや少なくとも、
ガソリンスタンドに現れた彼女が
自分の子供を連れているのを知った上での
決断だ。
この「シェルブール…」は
カトリーヌ・ドヌーヴが主演のため、
ついつい彼女にウエイトを置いて
観てしまうが、
何の落ち度も無い彼の立場で観ると
良く理解出来る。
この作品で観客は、
男性主人公が現在の縁を大切に、
過去を断ち切る“心の中”の決断を目撃する。
そこに私は、より涙が溢れた。
最初に「シェルブール…」を鑑賞した時、
一緒になれなかった男女が、
お互いの想いを秘めたままの再会と別れに
感傷的に感動していたが、
この「天井桟敷の人々」を観て、
「シェルブール…」再鑑賞時の、
過去を断ち切り、現在を選択する男性の
気持に感動を覚えたことを思い出す。
結婚後のバチストの感情描写がほぼカット
されていることもあり、妻子を振り切っての
ガランスへの行動に共感出来る方は
私も含めなかなか少ないかとは思うが、
一方で、
総体としての各登場人物の丁寧な描写から、
そんな想いもあり得るのかなと観た。
男女の恋愛感情は難しく、
常識論では捉えきれない。
一見、全ての登場人物に破滅が訪れた
如くのフィナーレではあるが、
人間何が幸せなのか、
何かと考えさせる映画だった。
この映画に一時とてもはまりました。映画館で見てビデオまで買って何度も何度も見ました。人生を達観してるような諦めているような、そんなガランスに惹かれたのかなあ。