「永遠に色褪せない愛しき名画」天井棧敷の人々 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
永遠に色褪せない愛しき名画
『好いた者同士には、パリは狭いよ』
しかし、愛する者同士は、パリどころか遠く何年隔たれようとも、朝も昼も夜もずっと一緒だった。
劇中劇と劇中の物語が重なり遇い、音楽の調べにのせて男女の想いが身体性豊かに交差し奏でられる。
愛が無ければ、たとえ夜を共にしても孤独と嫉妬で心満たされず、月を追うように愛は指先に届かない。
貴賤が入り乱れる激動のパリを舞台に、天井桟敷に生き生きと渦巻く無名の市民を借景として、一人のアフロディーテを取り巻く男女の悲喜劇を捉えたこの作品は、愛の本質一点にフォーカスし、全編190分に渡り微塵の隙なく観る者の知的好奇心と感情のうねりを鷲掴む、永遠に色褪せない愛しき名画である。
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