劇場公開日 2020年10月23日

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「愛すれど獲得できぬ愛」天井棧敷の人々 eichanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5愛すれど獲得できぬ愛

2018年4月24日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

名作の聞こえ高く長年観たいと思っていた本作をこの度レンタルショップで借りて来て漸く観た。普遍的な主題を扱った矢張りの名作だと思った。作品全体の雰囲気が格調が高く登場人物たちのセリフがとても詩的である。設定時代のパリの街の様子も詳細に再現している。そしてこの作品で描かれるのは恋い焦がれても実らぬ愛である。登場人物たちは愛する異性に精一杯焦がれ煩悶する。甘言も、富や地位も、そして脅迫も、どの手段を用いても相手の愛を獲得するには至らない。お互いが愛し合うというのは、それほどの奇跡なのである。唯一相手の愛を得る手段があるとすれば、誠実に愛することのみであるが、それすらも絶対ではない。時には他者の幸福を壊すことに臆してしまうからだ。今の時代の日本のみならず世界にも、この映画の登場人物たちと同じ思いをしている者が夥しくいることだろう。本作は時間と空間を越えて普遍的な価値を持つ映画である。

eichan