天使の涙のレビュー・感想・評価
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【香港の夜に生きる孤独な5人の男女の、夫々の”Only You"の想いを、クリストファー・ドイルの手持ちカメラでスタイリッシュに描き出したアーティスティックな作品。】
■顔を合わせることはほとんどない殺し屋(レオン・ライ)とエージェントの女性(ミシェール・リー)。
エージェントは殺し屋に惹かれていたが、ある日、彼は突然姿を消してしまう。
一方、エージェントが住むマンションの管理人の息子で、幼い時に腐ったパイン缶を食べたために口が聞けなくなったモウ(金城武)は、ある日、失恋の傷が癒えない女(チャーリー・ヤン)に心惹かれて行くが・・。
殺し屋に妙に絡むハンバーガー屋で会った金髪の女(カレン・モク)。
◆感想
・というストーリーらしきものはあるが、今作に起承転結の物語を求めると、肩透かしを食らう。
・今作は、「欲望の翼」以上に、ストーリーを魅せるというよりは、クリストファー・ドイルによる、手持ちカメラでスタイリッシュな映像や、劇中に流れる5人の男女の心持をモノローグで流す手法を堪能する映画である。
<殺し屋とエージェントの女性、モウと失恋の傷が癒えない女性との関係性を、夫々の"Only You"の気持ちを絡ませて描いた、アーティスティックな作品。
ラストに流れる、”ヤズー”のカヴァー曲”Only You"が、見事に5人の男女の恋愛群像劇を締めくくった作品でもある。>
愛すべき人と町
異国の香港に想いを寄せる様になったのはこの映画がきっかけです
日本と似ているけどどこか違う、マクドナルドも出てくるのに
一つ一つがオシャレで、セリフも耳触りが良い
「子供のまま、父さんといたかった」
「帰るとき
彼に送ってと頼んだの
初めて人と こんなに近く
すぐに着いて分かれるのは
分かってたけど
今のこの暖かさは永遠だった」
「毎日雨が降ってくれればいいのにな」
捻りも暗喩も無いのに何故か忘れられないセリフ達です
この映画を見る度不思議な気持ちになります
初恋を思い出したり、年老いてく母を憂いる気分になったり、少し背伸びをした気分になったり、大人になりたくないって思ったり
これはただの恋愛映画ではありません
香港の町は今でもこんな感じの天使達が往来しているのでしょうか?
モウのバイクの後ろに乗るミッシェル・リーを
見てみたい、あのトンネルで。横目に見てそのまま通り過ぎてみたい。
ノーヘルはダメですけどね
炸裂する王家衛節!!
とにかくかっこいい。これに尽きます。
いや、もっとあるんだけど、やっぱり王家衛はかっこいい。
ミシェル・リー&レオン・ライの色気のある殺し屋組と、痛々しくて騒々しい金髪のカレン・モク、浮気された金髪アレンにプンスカしてるマギー・チャン&口の利けない金城武のラブコメ感のある組み合わせ。登場人物全員が魅力的で、とっても孤独。
「天使の涙」は元々「恋する惑星」の3つ目の物語になるものだったそうです。王家衛は脚本をほとんど書かずに撮影し、現場での化学反応を大切にする監督です。この地球上で起こりうる小さな偶然を繋げてお気に入りの物語を作り上げる。日常がちょっぴりロマンチックになるような映画を作る人ですね。
レオン・ライが殺しをするシーンはほんっっとに痺れる。流れる曲が最高すぎて、サントラ買いました。
金城武の役柄が個人的には1番好きです。しつこいけど純粋でコミカルな感じがかわいい。「毎日大勢の人とすれ違うが、その中の誰かと親友になれるかもしれない」というセリフがとっても好きです。
ネオンの香港で暮らす5人の若者たち
5人の若者たちの視点を描いたこの映画。
殺し屋(レオン・ライ)、エージェント、失恋女、金髪女、そして口の聞けない男(金城武)。
それぞれが交錯する中、芽生え始めた恋。 ラストの金城さんと失恋女のバイクシーンが切なく感じました。
ウォン・カーワイのゴールド
スタイリッシュでピュアな作品だ。
恋をすると女は皆、天使になるのだろうか。
女たちの恋する心は天使のようにピュア。
殺しのエージェントを稼業にしていても、天使のような金のクルクルパーマの派手な頭で遊び人を気取っていても。
黒髪の平凡な女が人を信じすぎて金髪アレンに彼氏を横取りされても。
3人とも簡単には諦めきれない位に一途。
そして、恋を失い天使は涙を流す。
人の店を勝手に開けて夜中に営業する変な稼業をしているモウの遅れ馳せの恋もとても純粋だ。
黒髪の彼女を乗せてサッカー場までバイクでひとっ飛び。試合が終わって照明が落ちるまでの短い恋。
モウにアイスクリームを大量に食べさせられたりする毎回ターゲットにされるヒゲ男は気の毒だが、めちゃくちゃコミカル。大家族でアイスクリーム屋の車に乗って疾走するシーンが素敵だ。
モウが豚の背中に乗ってマッサージするシーンも。
何よりモウとお父さんとのさり気ない日常が微笑ましい。モウが撮ったホームビデオの映像はグラグラ揺れてぶれまくっているけど、ビデオの中のお父さんはとてもいい笑顔だ。ブレてるから余計に素敵なんだ。
モウにビデオの楽しさを教えてくれた居酒屋の斉藤さんありがとう!
モウはお父さんの前ではいくつになっても子供だけど、遺品を整理していて初めて大人だったと気がついたところも好き。
金城武は口がきけない設定になった分、恋する惑星よりも面白い演技をしている。
パイナップルの缶詰の食べ過ぎの設定や、平凡だった女の子が変身してスチュワーデスの制服で現れた時にはくすりとさせられた。
エージェントの女は強そうに見えてもやっぱり女。
モウに送って貰うバイクの背中で刹那の温もりを感じる。この終わり方がめちゃくちゃおしゃれだなー。
エンドロールが終わっても、OnlyYouが耳について離れない。
香港フラワー
台詞がないのが面白くていい。少しあるけど基本的にモノローグ。最初の男の子は殺し屋にしてはあまりに幼い顔で嘘でしょ?と思いました。金髪の女の子が出てきてから面白くなってきた。一番よかったのは口がきけない男の子とお父さんの関係です。お父さんの仕事ぶりや寝姿まで(お父さん嫌がってるけどまんざらでもない)ハンドカメラで撮影して。ここは泣けてしまった。
女の子3人の顔も髪型もメイクも衣装もアクセサリーもストッキングも靴も全部よかった。
「恋する惑星」見てません。でもこの監督の特徴と言われてるカメラワークは面白くてかっこよかったです。とにかくスタイリッシュ!カラーの中のモノクロ挟み、アップの程よい多用(何か変な言い方)、スピードの緩急。特にモノクロのザラザラ感は森山大道みたいで好みでした。
駅は人が居ないといい。特に地下鉄。無機的な地下鉄は凄くかっこいい。
そう、この映画見て「香港フラワー」ということばが唐突に頭に浮かんだ。自分で使ったことがないのに知ってることば。映画の中で、ビニールのカーテンを見たからだろうか?
香港行きたくなってきた
昔見た時はどうしても『恋する惑星』と比べてしまい、ダークなこの作品を好きになれなかった。
でも年とってから観るとこっちもいい。
殺し屋、かっこよすぎだろ。
女の立場からしたら複雑だけど惹かれてしまうのは仕方ない。
美人でもフラれるのだ、人生そんなにうまく行くわけない。
金城武パートはビデオのくだりが好きだけど、あんまり印象に残らないのが少し残念。
でもエンディングがいいから許す。
●香港の刹那。
公開当時は九龍城取り壊しとか、香港返還とか、混乱の真っ只中で。
そんな時にスゲー香港映画キターってなって、背伸びして観たけど正直よくわからんかった。
唯一、エンディングの’only you'に惚れてCD買って。あと賞味期限切れのパイン食うのやめたな。
「恋する惑星」とセットなのね。陰と陽。昼と夜。青春群像とかって作品じゃないよね。こりゃあ。
モウが発話障害だったり、パートナー替える替えないとか、親父との関係とか。英国?中国?って勘ぐりすぎか。
猥雑で鬱屈していて刹那的。いまみると、そんな香港の瞬間を切り取って魅せてくれているスゴさに唸る。
ウォン・カーウァイ特集にて十何年かぶりに鑑賞
高校生くらいのときに見ました。かっこいい映像の映画だったというのはなんとなく覚えていました。
モウ(金城武)がビデオを撮るシーンがよかった。撮っている人の目線が伝わる絵や映像っていうのはとても好きです。
賞味期限切れのパインを食べて口が利けなくなった子が、恋の賞味期限について語る場面がおかしくもあり悲しい。
誰かが言っていましたが、やっぱり世界は片思いでできているようです。そんなことが大人になった今日わかって鑑賞できた気がします。
王家衛謝謝
相変わらずの気怠さとテンポの悪さ、最高。
英題はFallen Angelsなので皆天使ということ?
わけわからんとこめっちゃあったけど、もう無視!笑
ストーリーを理解しようとせずに脳みそ自由にしてなんとなく身を任せてるだけでその世界に浸れて眼福で気分も良くなる映画、ほんま貴重。
てか音楽もいいし。最高すぎほんま謝謝。
ホームビデオ
この作品の宿命として、「恋する惑星」との比較は避けて通れない。
まず、この二作品を象徴するのが、前作において多言語社会香港を体現していた金城武が、次作においては失語症の若者モウを演じている点であろう。
これは、ホウ・シャオシェン監督が「悲情城市」を撮ったときに、広東語という異言語の持ち主であるトニー・レオンの役を唖者にしたことと無関係ではあるまい。
ホウ監督は、当時香港のTVスターだったトニー・レオンを起用するにあたって、台湾語や北京語のベースがない彼の為に、主人公を唖者にしたと言っている。
ウォン・カーウァイはこの2連作において、金城武が実際にそうであるようにマルチリンガルの役と、その対極のノーリンガルの役を演じさせている。しかもこれはトニー・レオンが主役のエピソードを挟んでいる。
そして、金城武から発話を奪ったことは成功している。
口の利けないモウが夜中に他人の店で勝手に商売をするというおかしな話なのだが、やっている本人は大まじめ。真剣そのものである。これは言葉を口から出さない金城武のパントマイムとなり、観る者を失語症の青年モウに感情移入(同情ではない!)させる。
前作において、香港という街の様々な側面を、それぞれ登場人物に仮託して描いてたとすれば、金城武の演じた二つの役はそれぞれ香港の器用さとしたたかさを表してはいないだろうか。
言葉を失っても、人生を楽しみ、恋をする力強さがモウという青年には備わっている。だから、観客はこの障害者に同情するのではなく、感情に寄り添うことになる。
挙げればきりがないほどの両作品の共通項が気になり、モウ以外の登場人物にはさほど興味や共感が湧かない「天使の涙」で、もう一人、切なさの琴線に触れてくるのがモウの父親である。彼は、台湾からやってきて、安宿の管理人をやりながら失語症の息子を育ててきた。
白いランニングシャツをいつでも着ている、小太りのおっさんであるが、この人物こそが映画をかろうじて心に残る一本にしているのだ。
物語のラストでも繰り返し観客が観ることとなる、ステーキを焼く父親を息子が撮影したホームビデオには胸が熱くなる。あの笑顔。演技であれだけ屈託のない、幸せな表情をができるものなのだろうか。このような笑顔で父親に見つめられる息子は幸せだ。
そして、この作品の名カメラマンはクリストファー・ドイルではなく、じつは金城武なのだ。
なんという皮肉であろうか。
前作「恋する惑星」とは異なり、この映画のカメラはドイルの単独クレジットである。広角レンズの多用など全編にわたりドイルのやりたい放題の感がある。
しかし、最も観客の心をつかむカットは、ドイルの撮影に挟まれた、素人の撮影によるホームビデオなのだ。
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