「やるな、院長!」天使にラブ・ソングを… とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
やるな、院長!
最初に見た時は、歌と小気味の良いコメディにノックダウンされた。
歌はもちろん、あの動き。圧巻はデロリスだけれど、老若皆全身から音楽が奏でられてくる。皆、楽しんで歌っている。
私はキリスト者ではないけれど、人生への、命への賛歌ってこういうものなんだろうと思った。
けれど最近見直して。
堅物院長。融通の利かない深窓のシスターかと思ったら!(^^)!。
うっかりしていると聞き逃してしまうほどさらっと、すごいことを言うところが、この甘いストーリーの中で、黒胡椒的スパイスかと思っていたらそれだけでなく、
セスナ機長を口説き落とすシーン。いやはや、その手を使いますか。
リノでの名指揮官ぶり。
「シスターの衣装は、もう私たちを守ってくれない」って過去に何があったんだか。
生真面目で、でもしっとりとした情緒をにじませ、それなのに、なぜかくすくす笑っちゃう。これだけの多面的な顔を見せつつも、感情のふり幅が大きいわけでもない。バレエを踊っている時のように、体は変幻自在に動きつつも、姿勢と頭の位置は同じ。なんというセンスの役者なんだろう(感服)。
プラス、ヴィンス。
演じるカイテル氏。『ピアノレッスン』の寡黙な男に比べ、なんともまあ。
冒頭のナルシストぶりをはじめとして、渋く決めているはずなのに隙だらけ。やっぱりクスクス笑っちゃう。すごい役者だ。
この二人だけではない。
デロリスとの出会いを通じて、変わっていくメアリー・ロバート。
最初から最後までマイペースだが、良い風を吹かせてくれるメアリー・パトリック。
指揮のことで対立するが、(悪戯)仲間になっていくメアリー・ラザラス。
他にも個性豊かなシスターたち。
コーラスこそすごいが、一人一人はけっしてうまくはない。けれど、その楽しそうなこと。その様子を見ているだけで幸せになってくる。
そんなたくさんの個性のアンサンブル。
そして、そんなデロリスやシスターたちと、院長の表情のかけあい。
それを見ているだけで、初見はハラハラ。何度か見直して結末を知っていると笑いがこみあげてくる。
「離婚したら地獄の業火で焼かれる」・・・殺しはいいんかい(笑)。
「シスターの衣装は、もう私たちを守ってくれない」・・・この台詞が後半効いてくる(笑)。
そんな宗教ネタが、この映画の中では…。
そのあたりもほのぼのするし、エピソードとして効いてくる。
くさくさしているときでも、
あのシスターたちの表情を見ていると、
デロリスの軽快に動く様をみていると、
院長の毒舌に憧れて、
つい、何度も観てしまう!
生涯必携の1本です。