劇場公開日 2025年1月10日

「一度味わうとクセになるジュネ亭メニュー」デリカテッセン シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一度味わうとクセになるジュネ亭メニュー

2025年1月25日
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ジャン=ピエール・ジュネがマルク・キャロと共同で監督した作品で、とてもデビュー作とは思えないぶっ飛んだ世界観が魅力です。世紀末のパリで人肉を売る精肉店で働くことになった男の文字通り食うか食われるかのブラック・コメディです。なんと言っても、セピア調でドロっとした映像や不気味な小道具、エグさたっぷりの強烈なキャラの登場人物達と、ジュネの作品に共通するスタイルが既に完成しているのが凄いです。また、主役または準主役にどこか未成熟で不安定な女性が出て来るのも、後年の『ロストチルドレン』『エイリアン4』にも通じるジュネの嗜好性があって面白いです。直接的な残酷なシーンはなく観客に想像させながら、独特のグロテスクで歪んだ情念を感じさせる映像はインパクトがありますが、ストーリーを動かすのは男女の恋であるのがフランス映画らしい所です。役者では、以後の作品でも常連になるドミニク・ピノンが妙な味合いです。意外とまともに見えるのは妖艶な肉屋の女房役のカリン・ビアールで、観る側もジュネの毒に当てられたのかな。

シネマディクト