「トマス・ハーディの小説『ダーバヴィル家のテス』の映画化で、初公開時...」テス りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
トマス・ハーディの小説『ダーバヴィル家のテス』の映画化で、初公開時...
トマス・ハーディの小説『ダーバヴィル家のテス』の映画化で、初公開時にも観ています。
原作も10~15年ほど前に読みました。
19世紀末、英国東北部ドーセット地方のマーロット村。
子だくさんの貧しい行商人ジョン・ダービフィールドは、新任の牧師に「サー・ジョン」と挨拶される。
連日の「サー」敬称に不審に思ったジョンが尋ねると、「君は由緒ある貴族ダーバヴィル家の末裔だ。滅んでしまったが・・・」と答えた。
離れた土地にダーバヴィルという邸があることを聞きつけた母親は、少しばかりの援助を頼もうと、長姉テス(ナスターシャ・キンスキー)を使いに出す。
いやいやだったテスだが、邸の女主人から「養鶏場の使用人としてなら雇いたい」との返事が来、家計を助ける意味からテスは邸勤めを決意する・・・
といったところから始まる物語で、溝口健二監督の西鶴『好色一代女』と同じで、美貌ゆえに不幸になってしまう女性の話。
テスはもともと気位が高い性質で、冒頭描かれる野で集団ダンスに余所者が加わってきたときに、相手にしない。
(このひとりが、のちのテスの運命の男性エンジェルである)
そんなもともとの性質に加えて、貴族の血脈というものを信じたゆえに、気位はますます高くなってしまい、放浪の身となった際、ダーバヴィルの息子が援助の手を差し伸べても固辞してしまう。
(ダーバヴィルの息子に手籠めにされ、私生児を産み、すぐに喪ってしまうという過去はあるが)
と二重三重ともいうべき不幸の連鎖は観ていて楽しいわけはない。
が、80年代くらいまでは、この手の悲劇も堂々とした映画として映画化され、一般劇場で大々的に公開されたものだ。
ナスターシャ・キンスキーの美しさはとりもなおさず、フィリップ・サルドの音楽、ジェフリー・アンスワースとギスラン・クロケによる撮影、衣装、美術とどれをとっても一級品。
製作は、この後しばらくして『愛と宿命の泉』という文芸大作を監督するクロード・ベリ。
文芸大作を堪能するとともに、文芸大作がつくられた時代を懐かしく思いました。