劇場公開日 2023年1月6日

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「ファムファタルを体現した美しさ」テス あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ファムファタルを体現した美しさ

2019年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ナスターシャ・キンスキー、本作撮影時18歳
その美貌は3時間近い長い物語を飽きさせずに画面に目を釘付けにするほどのもの

ふっくらととした女性らしい柔らかい身体の線は胸にも腰にもない
だからセクシャルな官能的な美しさではない
両手を彼女の腰に回せば、左右の指が触れそうなほどに細い
そして背筋は後ろに反った美しい湾曲したラインを描いている
硬い果実のような処女を映像にするならば彼女がそのものだ

しかし、それはロリータとはまた違う
男を翻弄するような小悪魔的でもないし、子どもでもない
テスは自分を持った分別のある大人の女性だ
アレックに襲われてしまったのはまだ男の怖さを知らなかった、経験値が足らなかっただけのこと

ファムファタルという言葉がある
運命の女とも宿命の女とも、魔性の女とも訳される
クリムトの絵画にも描かれている
その絵画はもう少し柔らかい線の女性だが
ナスターシャ・キンスキーはもっと硬いまだ少女のラインを持つ身体であるが、疑いもなくファムファタルそのひとだ
ファムファタルとして有名なギュスターブ・モローの絵画サロメよりも、彼女はまださらに細く硬い

男は彼女を一目みれば運命を変えられてしまう
迂闊に近づけば心を奪われ身の破滅を招く女性だ
賢明ならば自分には関係のない女性だと、想いを抱いてしまう前に頭から追い出さないといけない
そんな美人のこと
本作のナスターシャ・キンスキーの画面に写る姿は、そのレベルの美しさを体現している
果たして、本作に登場する二人の男性は身の破滅に至るのだ

テス自身は異性に対して奥手であり、慎み深い女性であることは冒頭の草原でのクラブダンスのシーンで最初に語られる
しかしエンジェルは別れ際に二度見どころか三度見して去っていく
彼女の美貌は磁力の様に男を引き寄せてしまうのだ
彼女は普通のどちらかといえば奥手の貧しい農家の娘にすぎないのにそうなってしまうのだ

美しい、ただそれだけで得する女性もいる
しかし美女もあるレベルを超えると却って不幸になってしまうのだ
それが彼女だ

普通の男性は危険を感じて避ける様になる
近寄って来るのは、美女をモノにする事だけに関心のある碌でもない男
またはその美しさを女神の様に清純そのものの存在として崇めて、生身の女性として見れない一点の汚れも許せなくなる男
この二種類の男しか寄って来なくなるのだ
正に本作の二人の男だ

テスは何一つ悪くはない
ただその美しさが勝手に男を狂わせてしまうのだ

本作はこのファムファタルの美しい魔力の有り様を見事に映像にしてみせている
ナスターシャ・キンスキーでなければできなかっただろう
そしてポランスキー監督が彼女のその美しさ、そしてそれがもたらす恐ろしい力を見事に描ききっている

美人なのに、良い彼氏ができない、近寄ってくるのは碌でもない男ばかりとお嘆きの貴方に、ぜひ観て頂きたい作品です
普通の誠実な男性を望むなら、貴方が逃げ腰の彼を積極的に引き寄せて、逃げてしまわないように、あきらめてしまわないようにむしろ積極的になる努力が普通の女性以上に必要なのです
そして早い段階で本当の貴方をさらけ出さないといけないのです

それなりのあなたには、普通で良かったと安堵できる作品ではないでしょうか

あき240
Mさんのコメント
2023年4月11日

なるほど!
男たちがとんでもない男ばかりと思っていたが、そんな男たちを呼び寄せる女性だったんですね。

M