「3分間待ってやる」チャイナタウン ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
3分間待ってやる
「"なまけ者の街"だ」
午前十時の映画祭14にて鑑賞。
深刻な水不足に悩む1937年のロサンゼルス。人々はダム建設を求めるが水道電源局長モウレーは軟弱な地盤を理由に頑としてこれに反対していた。その最中、私立探偵ジェイク・ギッテス(演:ジャック・ニコルソン)に"モウレー夫人"と名乗る女性からモウレーの浮気調査の依頼が来る。依頼通りモウレーの身辺調査をし、彼が夫人以外の女性と会っている現場を撮影したジェイクだが、後日その写真がなぜかスクープとして新聞に載る。すると今度は実際のモウレー夫人であるイヴリン(演:フェイ・ダナウェイ)が現れ、ジェイクを告訴すると言い出すが、その矢先にモウレーが溺死体となって発見されるのだった...。
自分の職務に忠実な市井の人間達が巨悪によって翻弄される姿が何ともやりきれない。タイトルの"チャイナタウン"とは、ジェイクが警察官だった頃に担当していたエリアであり、その頃を自虐気味に"なまけ者"と称しているが、この表現には多少なりともチャイナタウンの華人に対するアングロサクソンの上から目線も含まれているのだろう。ジャック・ニコルソンのニューシネマには剥き出しの人種差別が付きまとう。
本作について、ある知人から事前にもらった忠告は「1秒たりとも見落とすな」というものだった。この物語では、何の変哲もないひとりの水道電源部長を通していくつもの人間模様が展開される。モウレー本人の話はすぐに察しがついたが、フェイ・ダナウェイに関しては読めなかった。本作のモウレー夫人にフェイ・ダナウェイが起用された理由はジャック・ニコルソン曰く「何をしでかすか分からない感じがするからプロデューサーのロバート・エヴァンスに推薦した」とのことだが、彼の言葉通り2周りも3周りも遠いところを行かれた。
劇伴も決して多くはないが、ジェリー・ゴールドスミスによるメインテーマがいつまでも尾を引く。この劇伴によって、観終わってしばらく経ってもまだ静まり返ったロサンゼルスの通りに取り残されたような気分になる。
映像表現が進化しても、やはり最後に作品の出来を決めるのはホンだよなぁと、改めて思わせてくれた、そんな作品だった。