「「なるべく静観」」チャイナタウン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
「なるべく静観」
世上は冤罪との声もありますが、ケネディ大統領の暗殺犯として警察当局に逮捕されたオズワルドは、その第一声を取材しようとして押し寄せたマスコミ記者に対して「どなたか私に法的な支援(リーガルアシスト)を」と叫んだと聞きます。
英米では、それほど問題の法律的な解決ということが市民の間に根づいていることに比べ、日本を含む東洋系の国では、当事者間の話合いや、いわゆる「顔役」による調停によって問題を解決しようということが、令和の今でも広く行われています。 (ちなみに、各都道府県には一以上の国立系大学がありますけれども、そのほとんどが「ものつくり」に関連する工業系の学部が中心で、少数派の中でも単独の法学部を擁しているものは、更に指を折って数えるほど。先進国でありながら、今の日本でも、それほどリーガルサービス、ないしは、その前提となる法学教育が軽視されている。)
まして、当時(1930年代)のチャイナタウンにしてみれば、アメリカ国内とはいっても、同じような状況で、当時のアメリカ人には、奇異な社会に見えたことは、想像に難くありません。
おそらくは、その「不可解さ」がロス市警当局をして「なるべく静観」という態度をとらしめたのだと思います。評論子は。
高級官僚による、ありふれた単なる浮気調査だったはずが、どんどんと利権の渦に巻き込まれていく様には「痛い」ものがありましたが、そのお陰様で、2時間を超える長尺映画であったにもかかわらず、疲れることなく、十二分に感情移入しながら見入ることができました。
面白い一本であったと思います。評論子は。
(追記)
必ずしも法律や形式的な正義に束縛されない私立探偵のギデスとしては(警察官時代はいざ知らず)、チャイナタウンでの出来事について「なるべく静観」という態度に出たことは、本件の場合については無理からぬかなぁと思います。評論子は。
同じく私立探偵としての設定では、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』のパトリック探偵(ケイシー・アフレック)がああいう判断をしたこととは好一対かなぁとも思います。
どちらの場合にも、考え方には、賛否の両論があるとは思いますけれども。
見終わって、そんなことにも思いの至った一本になりました。評論子には。