誓いの休暇のレビュー・感想・評価
全5件を表示
ソ連の時代の作品らしいが
よくこのような作品を作ることができたなと感心する。反戦映画だが、あたたかな気持ちになれる。とはいえ、このような映画を作った国の末裔がウクライナで何をしているのかと思うと、胸が痛い。
映画史に残る大傑作!
シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。
ウクライナ生まれの映画監督グリゴーリ・チュフライによる反戦映画・青春映画・家族映画の傑作!
冒頭、広大な場所に立つ母親の姿が映されて、母親が「ここに来るにも、戦場へ行くにも、この一本道を通る…」という思いで遥か彼方の墓に眠る息子のことを考えている。
そこに「この母親の息子が知らない姿を…」という語りが入って、戦場で闘う息子が描かれる。
息子アレクセイは19歳、戦場で戦車に追われて逃げるのだが、この戦車と少年の追跡シーンが物凄い迫力あり、逃げる少年と追う戦車の流れるようなシークエンスは天地逆転するまで描く見事なカメラ!
こんな素晴らしい追跡シーンは観たことない。
そしてアレクセイは4台の戦車のうち2台を爆破した手柄から、「行きに一昼夜、母親と過ごす一昼夜、帰りに一昼夜」の6日間の休暇を上官から貰う。
アレクセイは「必ず期限には戻ります」と上官と約束する。「誓いの休暇」である。
アレクセイは「休暇をもらった」と母親の住む実家を目指すのだが、見知らぬ仲間兵士から「愛する妻に石鹸を渡してほしい」と頼まれて寄り道したり、軍用列車に隠れて乗っていると若い女性シューラが乗りこんで来てお互いに恋の芽生えを感じたり、と母親の元に帰るのが遅くなり……という一連の物語が素晴らしい。
観ているこちらは、「アレクセイ、早く実家に帰らないと…」と思ってしまうのだが、アレクセイとシューラはわりとノンビリしている感じ。これが切迫感を観客に感じさせる上手さに繋がっていると思う。演出の妙。
しかし、賄賂を貰って軍用列車に忍びこませる兵士、夫が戦場にいるのに浮気する妻など様々なエピソードも盛り込んで、何度観ても新たな発見があるような「深い映画」になっていると思う。
映画史に残る大傑作!
影画的反戦映画
戦争で手柄を上げ、数日間の休暇をもらった若い兵士が故郷の母親に会いに行く話。
いったん戦場を抜け出した兵士の行方なんか誰にもわからないというのに「数日以内に帰ってこい」という上官命令を死守しようとするアリョーシャ少年はちょっと律儀すぎるんじゃないかという気もするが、それが誇り高きロシア兵としての矜持なのだろう。
とはいえまだまだ体も心も少年のアリョーシャは、戦争の外側にあるさまざまなできごとに心を動かされる。貨物列車で出会った同世代の女の子とのやりとりは何とも等身大で微笑ましい。脚を失った男の荷物を持ってやるシーンも印象的だったな。
誰に対しても優しく振る舞いすぎるアリョーシャは、そのせいで何度も列車に乗り遅れてしまう。挙句の果てには線路が爆破され、通りかかったトラックの運転手に故郷の村まで送り届けてもらうことに。
村へ着いた頃にはもう折り返さなければいけない時刻。アリョーシャは母親と刹那の再会を果たすと、すぐさまトラックの荷台に乗って去っていく。母親の痛切な表情と、村から伸びる美しい一本道のビジョンが強く心に残る。
登場人物にしばしの日常を経由させることで影画のように戦争の悲惨を描き出した反戦映画の傑作だった。
ソビエト共産党下の制作でも普遍的な価値を持つ反戦映画の名作
個人的には「西部戦線異状なし」「禁じられた遊び」に並ぶ反戦映画の代表作で最も好きな作品。群衆の中のある兵士のバラードを綿々たる抒情性で描くも、好青年アリョーシャの模範的行動の一つひとつが常に微笑ましくいじらしい。初見の中学時代の感動から何度も見直していて、年を重ねてもその想いは変わらない。アリョーシャのような人間になろうと欲して結局なれずに今の自分があるが、理想の青年は映像の中で永遠の命を保ち輝き続けている。
ロードムービーとしても、反戦映画としても傑作
ロード・ムービの傑作にして反戦映画の名作です。
個人的には観たのは僅かに一度だけ、それも既に25年以上も前に観ただけなのに今でも鮮明に覚えているのですから…。
昨今では劇場を出たらもう中身を忘れてしまってしまう映画が多いのですが、流石に時代に生き残った作品の力を思い知らされます。
ストーリーはシンプル以外の何物でも無く。若い兵士が休暇を利用して故郷の母親に会いに行く、「母を訪ねて三千里」
それ以上でも以下でもありません。
勿論ロード・ムービの為に旅先では若い女性との恋愛場面や、様々な人達との出会いが待ち受けていて、果たして母親と会えるのかどうか観ている観客にはハラハラドキドキしてしまいます。
反戦映画でありながらも決してそれを声高に叫ぶ事は無く、観た人には鑑賞後にジワジワと心に沁み入って来る余韻を与えてくれます。
お金は掛かっていません。
決して反戦を叫んでもいません。
それでいてこれだけの作品が生まれるのですから。
是非とも一度は観て欲しい作品です。
全5件を表示