「駆け巡る、走馬灯のような」タクシードライバー 加藤プリンさんの映画レビュー(感想・評価)
駆け巡る、走馬灯のような
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オープニングからラストまで
駆け巡る、走馬灯のような映画。
よく議論になるラストシーンは、
私の見解ですが、トラビスの死に際に見た幻なのでしょうね。
皮肉な形であれ、どうあれ、
彼の潜在的な理想が形になることなど、あり得ない
叶えてしまったら、あの映画のテーマに背くことになってしまう気がしますね。
首を撃たれた時点で彼はもう死んでいて
そのあとはすべて、幻だと思います。
下手をすれば撃たれたあとは、すべて幻なのかも
そうなれば、彼はただの押し入り強盗、殺人を犯した犯罪者ですよね。
店を襲い、そのまま何事もなかったかのように処理された
あの強盗のように、なにも残さずに終わるだけのこと
仮に指のピストルで自殺まで出来たとしたら、彼にしたら上出来なのではないでしょうかね。
それ以降の栄光や名声など、臨むべくもなく
それすらも、トラビスにはうまく想像できなかったような気がしますね。
新聞に取り上げられるが、それ以上のイメージが彼の中にないから、形になってこない。
アイリスの両親の顔が出てこないこと(見たことがないから)も含め
彼の髪型含め、表情も肉体も精神も「あの頃」のままで
彼女に振り向かないというのが、彼の死に際にまで見た理想だったのでしょう。
最近はこのような、結末や展開を観客に委ねる作品が少なくなりましたね。
わかりやすい答えを求める観客が増えた所為と
商業主義的に結末まで編集できるようになってしまったからでしょう。
こういった名画に類する作品は貴重だし、今後更に稀少になってゆくのでしょう。
美しい映画です。
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