「いつの世にも戦争は庶民の生活を破壊」第七天国(1927) talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0いつの世にも戦争は庶民の生活を破壊

2025年1月31日
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鑑賞方法:その他

「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」という言葉は、トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」の書き出しとして、あまりにも有名ですけれども。

当時の世相(第一次世界大戦前夜のフランス)では、下水道清掃人というのは社会の最下層と位置づけられていたようで、道路清掃人の方が、いわば「格が上」の仕事(職業)だったようです。

ひところのフランス(パリ)では、街中の至る所に人糞が放置されていたようにも聞き及びますので、そういう環境での「清掃」という仕事は、決して社会的なステイタスの高い仕事ではなかったのだろうとも思います。
(別作品『せかいのおきく』になぞらえて言えば、畑に撒く肥料として人糞を商っていた矢亮のようなイメージでしょうか)

そんな中で芽生えた二人の愛も、戦争(第一次世界大戦)によって、もろくも打ち砕かれてしまう―。
戦争が庶民の生活を完膚なきまでに破壊してしまうことは、洋の東西・時代の古今を問わないのかも知れません。

ラブ・ストーリーの展開としては、ベタといえばベタな筋の一本なのですけれども。
しかし、上記のような社会情勢(第一次世界大戦前夜)のという製作年次を考えると、決して低い評価に値するというものではなく、それなりの良作と評価すべきと、評価子は思います。

(追記)
本作は無声映画ですけれども。
評論子が入っている映画サークルの今回の上映会(ホール上映)では、ピアノの生演奏とのコラボレーションというアレンジでの鑑賞になりました。
台詞ではなく、その含意をピアノの即興演奏で表現するという試みで、その曲調から台詞の内容は何となく感得することはできましたけれども。
2時間あまり、ずっとピアノの演奏を聴き続けるというのは、耳(聴覚)には、けっこうな負担にもなったようにも思います。

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