「本人の嗜好や悩みも描いているのでは」タイトロープ parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
本人の嗜好や悩みも描いているのでは
イーストウッドは、妻が出て行って離婚し、二人の娘を育てているブロック刑事役。この時期、一度めの奥さんとの離婚話が出ているはずなので、本人の体験も色濃く反映されているように見えた。イーストウッドは、自分の体験をそれとなく映画に盛り込むのが上手いので、妻が出て行って性欲に困っていること、仕事をしながら子供たちを育てる大変さ、娘がおませになってしまうこと等、盛り込んでいるのでは。ストーリー自体は、若い女性の連続
殺人事件なのだが、犯人を追い始めて捜査していくと、何故かブロック刑事が聞き込みをしたり、火遊びした女性たちが殺されていき、「次は誰かわかるな」という殺人予告のカードが届く。自分が起こした行動が、自分の周囲の人間を危険に晒す展開は、プレイボーイだった彼が犯してきたことが、今、自分に返ってきていることを示唆しているようにも見えた。彼の演技は、ここではマッチョではなく、妻に未練を持ち、娘たちのことを大切にしていて、女性に対しても比較的消極的で、決して暴力的でないように見えるからだ。(それでも、娼婦に誘われて手錠までして関係するのは、性的な嗜好を捨てきれないのを描いているのかも。実際、彼のそれまでの映画は、女性に対してはかなり暴力的で、サディスティックな感じなので。お気に入りの愛人だったソンドラ・ロックの扱い方、二度も中絶させ卵管結紮を受けさせていたことからして、性的欲求はかなりのものだったろうと推測)そうやって、彼の嗜好を反映した作品と思えば、鑑賞の仕方が変わってくる。
彼が出演・監督した作品は、その時代の社会を背景としながら、自分自身の問題も取り込み、俳優に多くを語らせないが、設定やストーリーから読み取れる部分が巧みで、そこが大きな魅力なのだろう。自分が作りたい映画を作っている感じがする。
それにしても、娘をこのような映画に出させるかねって。犯人に暴行される映画に。