「哀愁のメロディが有名な異色西部劇」大砂塵 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
哀愁のメロディが有名な異色西部劇
原題のタイトルロールであるジョニー・ギターは主人公ではなく、狂言回しのサポーティングロールです。
主役はジョーン・クロフォード扮する酒場の主人ヴィエナ。貫禄の演技、冒頭のパンツルックがとてもカッコいい。まさに彼女のための映画。
敵役はマーセデス・マッケンブリッジ扮するエマ。ヴィエナとは土地利権、恋のさやあて、兄の死の復讐(これは冤罪)と対立関係にあり、吐き捨てるような台詞回しに激しい憎悪を感じます。
ただその一方で男性優位のこの時代に、女性同士の激しい負のエネルギーの連帯のようなものを微かに感じます。
最終的にはこの二人の一騎打ちになるのですが、取り巻く双方の集団の人物描写がかなり丁寧になされます。ヴィエナ側の悪党四人組はそれぞれにキャラがたち、やがて仲間割れに至ってしまいますし、エマ側の自警団はエマに翻弄され、魔女狩り的暴挙に走りますが、それでも少数の穏健派がいるところにリアリティがあります。
「誰かを吊るしたいだけなのよ」というような、赤狩りを暗示させる台詞も出てきて、政治的意味合いも多分にあります。
さらにシャンデリアとピアノ演奏、燃え上がる建屋、異世界への入り口のような滝などビジュアル的にもかなり凝っています。
いろいろな意味で異色の西部劇であることは間違いないです。
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