ゾラの生涯のレビュー・感想・評価
全5件を表示
堅実で力強い、感動的な伝記映画だ。
前半は、親友の画家、ポール・セザンヌと屋根裏部屋で暮らしつつ、代表作を書いて作家として成功するまで、後半は、ドレフュス事件に関する公開状「われ弾劾す」を投稿して亡命し、帰国後にガス中毒で急死するまでを描く。
本作の公開当時(1937年)は、反ナチスを謳う映画がキャンセルされたり修正された時代。本作も、ドレフュスがユダヤ人であることや、反ユダヤ主義には触れておらず、「ユダヤ人」というセリフは出てこない。
とはいえ、本作は実在の小説家を取り上げ、敬意と堅実さに満ちた、人間ドラマに仕上がっている。主演のゾラを演じたポール・ムニは、大いに賞賛されるべき名演だと言って良いと思う。
歴史的に正確かどうかはさておき、1人の作家の成功と急死に至るまでを、生き生きと力強く描いており、感動的な伝記映画を超えた、良心に訴えかける映画だといえる。
イスラエル建国のシオニズムへの匂わしは無かったが…
イスラエルによるガザ地区侵攻の最中、
アカデミー作品賞を受賞したこの作品が、
ユダヤ人がパレスチナの地を目指すように
なる切っ掛けの一つとなった
“ドレフュス事件”を扱っていると知り
急遽初鑑賞した。
偽善的書物としてストーブに燃やして
暖を取ってむせぶシーン、
警察から当局批判記事の内容を警告され
それに反発して首になった出版社から
賃金を受け取る場面、
そして傘のエピソード等、
“高尚な”ユーモラスなウィットにニンマリ
させられた後には、
一転、優れたヒューマニズム的展開と、
さすがアカデミー作品賞受賞作との
納得の出来映えに満喫し、
未鑑賞の名作がまだまだあることを
痛感させられた。
友人セザンヌの言葉、
「芸術家は貧しくあるべきだ、
腹の膨らみと共に、才能にぜい肉がつく、
君はもうあの頃には戻れない、
でも忘れない」と語るゾラとの別れのシーンは
とても良い出来映えに感じた。
早々に作品から退場はするが、
セザンヌ役の彼こそが
本来はアカデミー助演男優賞に相応しかった
のではと思えた。
ゾラはセザンヌのこの言葉を心に秘めていた
ことから、逆風に耐えながらも
ドレフュス事件に対峙出来たのだろう。
映画の冒頭での断り書きもあったが、
ドレフュス事件の概要や
ゾラの生涯を垣間見ると、この映画での
フィクションもかなりありそうだ。
ゾラの最後の執筆、
「世界を征服するのは武力ではない、
自由に満ちた思想だ」は、
これも事実なのか、この映画での創作なのか
は判らないが、
世界中で紛争の増してきた昨今、
我々が目指すべき世界を
語っているようで重い言葉だ。
しかし、当初注目していた
ドレフュス大尉が
ユダヤ人との説明や台詞は全く無く、
この事件がイスラエル建国のシオニズム
への匂わしも無かった。
この作品の主題はあくまでも“ゾラの生涯”
なので、この事件の重要な要素ではあった
ものの割愛されたのだろうか。
この後に鑑賞予定のポランスキー監督の
「オフィサー・アンド・スパイ」では、
この点についてはどう描かれているのか
楽しみになった。
「私は 弾劾する!」
古い映画だったが、それが かえってゾラの時代の
フランスを 彷彿とさせる
私は「ドレフュス事件」のことが 知りたかったので 概要がつかめて、良かった
映画の主題も 彼の個人的成功より、この裁判で
彼の果たした役割にあるように、思う
(フランスの共和制を磐石にした)
冤罪だったドレフュス(ユダヤ人)には 苦しみ以外の 何ものでもないが、この事件が シオニズムに繋がり、イスラエル建国まで いくのだから
歴史的大事件である
ゾラの 新聞での 大統領宛の公開書簡と
裁判での 反論を読んでみたくなった
マーロン・ブランドが 尊敬する ポール・ムニ、
演技に対する執念みたいなものを 感じる
(今の時代から見ると やや重ではあるが)
全5件を表示