戦場にかける橋のレビュー・感想・評価
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ギネスと早川の構築する、敵味方を超えた複雑な関係性が魅せる
アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門を受賞し、映画史に名を残した戦争映画。捕虜となった英国人兵士(アレック・ギネス)と日本人将校(早川雪洲)が、互いに主義主張を譲らぬ中でいつしか妥協と協力を繰り返しながら橋建設を進めていく。最初は全く折り合えなかった二人が一つの目標に向けて視線を同じくしていく姿には、決して敵味方の二元論で割り切ることができない戦争というものの複雑さを垣間見せる。そんな二人にも皮肉な結末が待っているという、ますますもって複雑な余韻を残すこの映画。世の中に「敵の顔」が全く見えない戦争映画が多い中、本作は新たな境地を切り開いたとみていい。ギネスと早川、アカデミー賞にも絡んだ二人の演技は、ある意味、「戦場のメリークリスマス」の坂本龍一とデヴィッド・ボウイのようなものと言えるのかもしれない。クライマックスの鉄橋爆破シーンは映画好きなら一度は目に焼き付けておきたい歴史に残る名場面だ。
評価高すぎませんか?
戦場における軍人としての矜持
実は、鑑賞の終わり部分では、ニコルソン大佐が連合国軍の爆破作戦を予期していたのかと、ずっと考えていました。
すなわち、この橋は、いわゆる泰緬鉄道のルート上に位置して、日本軍の東南アジア進出(侵略?)には、欠かすことのできない重要な交通手段だったはずですから、連合国軍が、その建設を阻止しないことは、あり得ないと考えていたからです。
もちろん、ニコルソン大佐も日本軍の捕虜として収容所に捕らわれている身の上、連合国軍の作戦行動の詳細は知ることのできる立場にはなかったことは明らかですけれども。
しかし、ニコルソン大佐も連合国軍の幹部(将校)であってみれば、連合国軍がこの橋の完成を容認しないことは、充分に理解していたと考えていたからです。
つまり、ニコルソン大佐としては、一見、橋の建設に協力するかのように見せかけて、捕虜たちの待遇を改善させ、それによって連合国軍捕虜たちの安全と生存とを確保しようと考えたのだと理解したからでした。
しかし、実際は、そうではなかった模様。
ニコルソン大佐としては、日本軍の敗戦(降伏)が、そう遠い将来のことではないことを見越して、地元住民の便利のために(自らの部隊の存在を後世に残すために)橋の建設に協力した―といったところでしょうか。
そう理解すると、ニコルソン大佐が、わざわざ橋に銘板を据え付けたことにも、合点が行きそうです。
いずれにしても、極限状態(戦争、そしてその戦争による虜囚の身の上)でも、斎藤大佐の理不尽な要求には屈せず、飽くまでも規律を重んじる軍人としてのニコルソン大佐の矜持は、「統率者」としての将校は、部下の前では、部下と同じ労役には従事できないということでしょう。
(ジュネーブ協定に規定があるから、というのはむしろ論理が逆で、ジュネーブ協定の規定は、その精神を体現するものと理解すべきだと、評論子は思います)
そういうニコルソン大佐の矜持を描く作品ということでは、「午前十時の映画祭」のラインナップに加わるにも十二分に値する、佳作としての評価が適切な一本だと、評論子は思います。
不朽の名作
いやはや傑作ですね
午前10時の映画祭で
ドクトル・ジバゴがあまりに良かったので、
観るつもりのなかった本作を観ました。
まぁラストはあまりに有名でオチは分かってましたが実際観てみるとウワッこんなストーリーだったの!?とハラハラドキドキの連続でした。アレック・ギネス演じる英軍のニコルソン大佐とウィリアム・ホールデン演じる米軍のシアーズが別々の行動しながら最後のクライマックスでの見せ場が凄いなぁ。
ロケで本当の橋が出来るなんて・・・そこに列車が走るだけでも感動ものです。
午前10時の映画祭でデビッド・リーン超大作3部作の締め括りとして、これが観れた事は喜ばしいかぎりです。
アレック・ギネスの素晴らしさも堪能できました。(それまでSWの人という印象が強かったが・・・)個人的に彼の主演作「レイズ・ザ・タイタニック」をスクリーンで観てみたいです。
戦争映画によくある敵国の大将は悪役として描かれず早川雪舟演じる斎藤大佐は人間的に重みのある演技でした。
途中、日本兵がジャック・ホーキンス演ずるウォーデン少佐に刺殺され残った遺品が悲しかったです。日英合作でもないのに配慮が行き届いてるというか、やはり反戦映画なんですね。
戦争に英雄はいない
名作を初めて見ました。
このような作品を鑑賞でき、大変感謝です。
登場人物ではアレック・ギネス演じるニコルソン大佐に気を惹かれました。イギリス陸軍の大佐として誇りを持ち、規律と法を重んじ、捕虜となった部下に目標を与えて活かすために日本軍の橋の建設に協力する姿は、一本筋が通った行動に思えます。
橋が完成し、早川雪洲演じる捕虜収容所長・斎藤大佐に、ニコルソン大佐は自分の半生を話し、橋を見る。
この橋こそが、ニコルソン大佐が海外駐留した軍属生活の中で唯一、形になったもの。自分と部下が成し遂げた後世に残る資産である。感慨深く、誇らしいものだったことでしょう。
終盤、ウィリアム・ホールデン演じるシアーズ中佐などの破壊工作隊が現れたとき、ニコルソン大佐は橋を守ることを優先し、味方であるはずの破壊工作隊に敵対してしまいました。連合国から見れば裏切り、しかしニコルソン大佐にとっては部下の傷病兵を移送するためにも重要な鉄道であったのでしょう。
ニコルソン大佐は人道と、橋を作った誇りを優先したように思えます。
結末として主要人物がほとんど失われ、橋も壊してしまった。只々虚しい結果に、報われなかった登場人物たちの無念を偲びます。
不朽の名作、強烈な反戦映画
ただただ虚しい
午前十時の映画祭にて鑑賞。
クワイ河マーチが流れると私の脳内でサル、ゴリラチンパンジー🎵と変換されるので弱りました。
初めて鑑賞しましたが、一言で言うと戦争の虚しさを痛烈に感じる作品でした。
イギリス人捕虜ニコルソン大佐が誇りをかけて懸命に建設した橋をイギリス軍の316部隊が爆破しようとする矛盾。
せっかく脱走に成功したシアーズ中佐が316部隊に半ば強制的に参加させられ再び現地に戻る虚しさ。そして銃弾に倒れてしまう悲しさ。
ニコルソン大佐に結構肩入れして見てしまいましたが、結局彼も同じイギリス人ウォーデンの砲撃を受けて倒れ、倒れ込んだ瞬間に橋の爆破スイッチを入れることになり丁度通りかかった列車もろとも苦労して建設した橋が爆破されてしまうラストはただただやるせない結末でした。
ただ、日本軍を利する橋の建設にイギリス人捕虜があれだけ一生懸命に働くだろうか、と疑問を感じました。逆に最初はさぼり放題だし、日本軍の厳しいイメージがあれっという感じがしました。ジュネーブ協定を盾に労役を拒むニコルソン大佐なんか真っ先に銃殺されそうな予感がしましたが、意外と人間的な斉藤大佐の対応で正直ほっとしました。あと、斉藤大佐を演じる早川雪洲さんの流暢な英語には驚かされました。
ラスト、誰が満足したの?
午前十時の映画祭14にて鑑賞。
第2次世界大戦中の1943年、ビルマとタイの国境付近にある捕虜収容所で捕虜となっていたイギリス人兵士を使ってクワイ河へ橋を造ろうとする日本軍。捕虜のイギリス人将校と日本軍人たちの対立や交流を描いた作品。
名作らしいが、響かなかった。
ジュネーブ条約で将校は労働しなくて良い?捕虜になっても働かないって事?ピンと来なかった。
シンガポールからビルマのラングーンまで鉄道を敷こうとしていた日本軍に対し、英領インドへの影響を考えて反発したかったのはわかるが、せっかく自分たちで苦労して作った橋を爆破して満足だったのだろうか?
戦争って誰も幸せにならない、と言うメッセージなのかなぁ。
斉藤大佐役の早川雪洲の英語は流石だった。
それと、クワイ河マーチは印象的だった。
映画作品としては素晴らしく面白いが主人公たちの言動は、今となっては理解しかねるところもある。
この作品の数年後に制作された「大脱走」と比較してみると面白い。「大脱走」でドイツ軍収容所に収容されているイギリス軍の指揮官ラムゼイ大佐は捕虜になった将兵は脱走が義務であるとする。一方、本作のニコルソン大佐は脱走を否定して規律正しい労務提供を望む。この差はどこから生じるのか。「大脱走」における英軍の相手はヨーロッパの近代国家であり戦争も一定ルールにおけるゲームである。本作における相手は野蛮な未開国であり同じゲームテーブルにつくことはできない。指揮官かジュネーブ協約を平然と破り捨てる国である。脱走よりもむしろ橋梁設計、建築技術における能力差、規律正しい労務管理の違いを見せつけることにより英国人、英国軍の誇りを保持し続けることが戦争で優位にたつことと等しいと判断したのであろう。
早川雪洲演じる斎藤大佐以外の日本兵の描写、そして斎藤大佐の人物設計でさえ確かに悪意と偏見は見て取れる(あんな変な掛け軸のある床の間を司令官室に設ける日本人将校はいない)
ただし残念ながらこのあとのビルマ戦線やインパール作戦の経過を鑑みる限りでは一面の真実ではあったのかなと思う。
デビッド・リーンという人は、文明と、戦争や革命の対立、政治と個人の対立を常に描いた人である。ロレンスもジバゴもそう。そして個人が戦うために、あるいは運命に逆らうために必要な資質としてヒューマニズムを常に掲げていた。例えば本作でニコルソン大佐が重んじる「Principle」とは詰めて定義づければヒューマニズムのことになるのだと思う。
でも、そのヒューマニズムを表現するために、東洋(日本)やアラブやロシアといった遅れた人々(と彼が考えていた)との比較を意図的に用いたと私は思っている。これは差別的であり今の基準では認められない。異文化への愛情や共鳴というものが全く感じられないのである。
今回久しぶりに観た本作を観て感じたことをそのまま書きました。
余談だが、今回、午前十時の映画祭で使われたフィルムだが映像はもちろんデジタル化されているものの字幕は昔のままだった。今日出海。作家の今東光の兄で初代文化庁長官。今の人は誰も知らないだろうけど。いい訳です。
戦争の愚かさを描く壮大な寓話の傑作! 原作者は「猿の惑星」の作者! 日本軍人にも敬意をはらい「人」として描いているのもまた素晴らしい なお、セッシュウといえば…
第二次大戦下、タイ、ビルマ国境の日本軍捕虜収容所を舞台にした壮大な風刺人間ドラマ。
原作は、フランスの小説家ピエール・ブールは、何とあの「猿の惑星」の作者でもあります!!
厳しく捕虜を扱いながらも、その捕虜の英国人将校に理詰めで説得されてしまい、人知れず涙する日本人。
捕虜であり、敵軍の施設であるにもかかわらず、軍人としての規律を保つため、人としての尊厳も保つため、後世に残るほど立派な橋をかけようとする英国軍将校。
病院でも女性と付き合い、臨機応変に対応するも、使命は最後まで真っ当しようとする米国人。
誰しもが考える典型的な日本人、英国人、米国人、それぞれの性格を見事に表現し、アンサンブルを形作る物語の妙。
せっかく作った橋が、完成し初めて汽車が走るその時に、自らの手で破壊しなくてはならない理不尽さ。
1957年製作と聞いて驚いた。
この実にシニカルな展開と結末!
今観ても、全く古くない!!
いや、時代に関係なく、こんな話が他にあるでしょうか!
しかも、日本人にも偏見が全く無く、敬意すら持ちつつ、正確に描かれてる。
カルカチュアやデフォルメがない。
ちゃんとした発音の日本語を話しているのにも驚いた。
余談ですが、映画や舞台で使う「箱馬」のことを「セッシュウ」と業界用語で呼ぶそう。
語源は、本作出演の日本人俳優が外国人俳優(アメリカから見Ýたら逆ですが)と並んだとき、背が釣り合うように箱馬に乗っていたということから。
本作の冒頭、捕虜を前に演説するシーンで、いきなり箱馬に乗る早川雪舟のシーンがあって、思わずニヤリとしました!
在タイ日本人として
午前十時の映画祭にて鑑賞。
タイに住んで10年、映画の舞台となるクウェー川の鉄橋、泰緬鉄道最大の難所で多くの犠牲者を出したヘルファイアパス、記念博物館へも何度も足を運びました。
今でこそ観光用に整備されていますが、少し足を踏み入れればまさにジャングルで、泰緬鉄道の車窓から眺める実に自然豊かな景色を前に、よくぞこんな場所に鉄道を通そうと思ったものだと言える場所です。
劇中で完成目標とされていた5月は1年で最も暑い時期で、体感温度50℃を超える中での労働は、映像以上に過酷なものだっただろうと想像に難くありません。
本作では日本人とイギリス人捕虜との交流も描かれており、映画化にあたって日本軍の描き方には相当な配慮があったのではとも思います。
捕虜となった人々の家族や子孫が今でも強い感情とともに現地へ追悼に訪れており、記念館の展示も開発に使われた道具や写真などとともに辛い記憶として残されています。
また本作で有名になったこともあり、捕虜として従事した西洋人にクローズアップされがちですが、現地タイ人の死傷者数の方が甚大でした。
日本の戦争映画では日本の被害を描くことが多いですが、このようなことにも目を背けずにいられたらと改めて感じました。
1つの映画作品としての評価としては、やはり名作と言われるだけのことはあり、細かな感情の動きや葛藤がよく描かれており、思わず息を潜めてハラハラと見守ってしまうシーンの連続で、良い意味で気の抜けない鑑賞体験となりました。
また、生きることやその意味、戦争の是非など、考えさせられることも多く、大きなテーマを問いかけられたような心持ちです。
色褪せることのない作品として、これからも多くの人に長く愛され、考えるキッカケになってほしいと願っています。
結局職場は人間関係
人間らしく生きることが一番素晴らしい。
私は、登場人物の中ではシアーズ少佐が一番好きで、このいい加減さ、自分に忠実なところを持ち続けているのは、下士官だからかな?と想像しました。
タイトルのセリフも、ジャングル行軍中にしれっというところがいいです。
反面、斎藤大佐もニコルソン大佐も、自分を曲げず、面倒な人たちだなーと観ていました。
そういえば、シアーズはアメリカ人で大陸の人、斎藤とニコルソンは日本人とイギリス人で島国の人。
特性が出ています。
斎藤とニコルソン、敵対関係にあるふたりが協力関係を築くとき、相手の尊厳や背景を踏みにじってはうまくいかないんだよなあ。
観客として観てるとそれはよく理解できるのだが、渦中にいると、お互いに意固地になってしまう。
私も、気を付けて、一歩引いて観察しよう。
一番ニュートラルで尊敬できたのは、医師の青年。
斎藤大佐にも、ニコルソン大佐にも、臆することなく、より高い視点からの進言をしている。
戦時下で、こういう行動をとることは命の危険を伴う。
ホント、尊敬に値する行動で、見習いたいと思った。
日英の協力により鉄橋ができ(想像以上に美しく立派な橋で、私のテンションが上がりました!)、喜んだのもつかの間、全てが水泡に帰す圧倒的迫力のラストを迎える。
このための2時間半だったのねーと拍手を送りたくなりました。
さすがの名作。
そして最後にしみじみ、何のために命がけの争いをするのかと虚無の気持ちになりました。
一度でいいから、地球上から戦争や紛争が亡くなったらいいなあ。
そのためにできることを、していきます。
ずっと後回しにしていた名作、ついに映画館で鑑賞。小学校の朝礼や運動...
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