劇場公開日 1957年12月25日

「在タイ日本人として」戦場にかける橋 p27さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0在タイ日本人として

2025年2月12日
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鑑賞方法:映画館

午前十時の映画祭にて鑑賞。

タイに住んで10年、映画の舞台となるクウェー川の鉄橋、泰緬鉄道最大の難所で多くの犠牲者を出したヘルファイアパス、記念博物館へも何度も足を運びました。
今でこそ観光用に整備されていますが、少し足を踏み入れればまさにジャングルで、泰緬鉄道の車窓から眺める実に自然豊かな景色を前に、よくぞこんな場所に鉄道を通そうと思ったものだと言える場所です。
劇中で完成目標とされていた5月は1年で最も暑い時期で、体感温度50℃を超える中での労働は、映像以上に過酷なものだっただろうと想像に難くありません。
本作では日本人とイギリス人捕虜との交流も描かれており、映画化にあたって日本軍の描き方には相当な配慮があったのではとも思います。
捕虜となった人々の家族や子孫が今でも強い感情とともに現地へ追悼に訪れており、記念館の展示も開発に使われた道具や写真などとともに辛い記憶として残されています。
また本作で有名になったこともあり、捕虜として従事した西洋人にクローズアップされがちですが、現地タイ人の死傷者数の方が甚大でした。
日本の戦争映画では日本の被害を描くことが多いですが、このようなことにも目を背けずにいられたらと改めて感じました。

1つの映画作品としての評価としては、やはり名作と言われるだけのことはあり、細かな感情の動きや葛藤がよく描かれており、思わず息を潜めてハラハラと見守ってしまうシーンの連続で、良い意味で気の抜けない鑑賞体験となりました。
また、生きることやその意味、戦争の是非など、考えさせられることも多く、大きなテーマを問いかけられたような心持ちです。

色褪せることのない作品として、これからも多くの人に長く愛され、考えるキッカケになってほしいと願っています。

p27