「本編より裏事情の方が…」007/オクトパシー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
本編より裏事情の方が…
シリーズ13作目。1983年の作品。
東西ドイツの国境でロシアの秘宝“レディーの卵(ファベルジュ・エッグ)”を追っていた009が殺され、売り専門の貴族カマルが必死でそれを手に入れようとしているのを知ったボンドは、オークションで偽物とすり替え、カマルを追ってインドへ。カジノでも競い合う。
カマルの裏にはサーカス団で密輸をする美女オクトパシーが居たが、さらにカマルは、ソ連のタカ派将軍と結託して核爆弾による恐るべき計画を実施しようとしていた…!
東西ドイツ、核爆弾。
当初敵側だったボンドガール(と彼女率いる美女軍団)が味方に。
プレ・シークエンスの飛行機アクション、今回の舞台であるインド市街地でのチェイス、列車やサーカス、ラストを飾るはプレ・シークエンスと同じ飛行機アクションなど、見せ場もそつなく。
勿論、複数の女性とベッドイン。
話もお約束も、これぞTHE007! いや、THEロジャー・ボンド!
主題歌“オール・タイム・ハイ”やそのスタッフ/キャストのタイトルバックも印象的。
気楽に楽しいのは楽しい。
でも、個人的にロジャー・ボンド最高作だった前作と比べると、平凡過ぎ。
インド描写もステレオタイプと言うか。
市街地でのアクションはウケ優先のドタバタ。
あのゲテモノ料理は『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』にレシピでも渡したのか?
ボンドは逃げるジャングルでターザンの泣き真似。
サーカスに侵入し、009と同じピエロ姿。
再び、荒唐無稽なロジャー・ボンドに。
『黄金銃を持つ男』に続き、モード・アダムズが2度目のボンドガールに抜擢。これはシリーズ初。
正直もうボンド“ガール”という歳でもなく、ボンド“ウーマン”と呼んだ方がいいかもしれないが、前作の親子ほどの歳の差のラブシーンを見るよりかはまだマシ。(当時、ムーア56歳、アダムズ38歳)
にしても、語り継がれる(?)“オクトパシー”という名前。だって、英語表記すると、そのままだもん…。
そのムーアだが、前作で降板を仄めかし、ボンドにもボンドガールにもMにもマネーペニーにも別のキャスティング案があったらしいが、二転三転して、この布陣に。(Mは本作から2代目に)
本作の製作が始まった頃、思わぬ事が!
別会社が全くの別作品として、あの初代007=ショーン・コネリーを担ぎ出して、映画化権を持つ『サンダーボール作戦』のリメイク『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の製作を発表。公開もほぼ同時期。
初代vs3代目!
ファンには嬉しい夢の対決だが、製作側にとってはこれ以上ない厄介なライバル。
しかし!
結果的には本作の圧勝だったとか。
この当時はもう、本家007はロジャー・ムーアであった。
(かく言う自分も『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は昔一度見たきり。せっかく今シリーズ再見しているので、併せて久し振りに見てみよう)
何だか本作は本編より、裏事情の方が訳ありで面白いという皮肉…。