劇場公開日 1981年7月4日

「マイ・アイズ・ベストワン・ロジャー・ボンド」007/ユア・アイズ・オンリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5マイ・アイズ・ベストワン・ロジャー・ボンド

2020年8月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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シリーズ12作目。1981年の作品。

まず、プレ・シークエンスに驚き。
ボンドが亡き妻の墓参り。
そんなボンドを、猫を抱いたグレースーツのスキンヘッドの男が襲撃する…!
暫く語られていなかった悲劇のエピソードや権利の問題で登場出来なくなった某首領(正確には確実にそのキャラではなく、それっぽいキャラ)が何故突然に…?
やはり007の世界って繋がってる…? それとも、ちょっとしたお遊び…?

前作で“進出し過ぎ”ちゃって、地球を守るスーパーヒーローみたいになっちゃったボンドだが、本作では本来のスパイ任務に復帰。

アルバニア沖でイギリスの電波監視船が沈められ、搭載されていたイギリス軍のミサイルを誘導する新兵器“ATAC”が行方不明に。もし、悪用されれば…。
海洋学者のハヴロック夫妻に引き上げを依頼するが、何者かに殺される。それを目の前で目撃した娘メリナ…。
事件を調査するボンドは、復讐に燃えるメリナと出会い、真相を追う…。

所在不明となった兵器に、背後に蠢く陰謀。
自国の命運を懸けた諜報活動、争奪戦。
ロジャー・ボンドはシンプルな相関図が多かったが、複数の人物が入り乱れ、誰が敵で誰が味方か。
ロジャー・ボンドの中では本来のスパイ映画としての面白さや醍醐味が充分。

と同時に、ロジャー・ボンドで一番アクションのボリュームたっぷり。
某首領(?)とのヘリ・アクションから始まり、
田舎町でのカー・チェイス、
スキーやボブスレーを駆使した雪山アクション(それにしても、雪山では必ず名アクション・シーンが生まれる)、
海中挺で海中戦、
敵基地侵入しての銃撃戦…。
いずれもこれまでのシリーズで何度も繰り返されたお馴染み定番アクションだが、見せ方やアプローチを変え、実写での爆破や特撮シーンなど、迫力と見応えあるアクション・シーンが次々と。
ピンチ、ハラハラドキドキもたくさん。
縛られ、珊瑚礁を船で引き摺られるシーンは絶体絶命…!
そして、断崖絶壁に立つ敵の本拠地に侵入するシーン。さすがにムーアによるノースタントではないが(トムクルなら言わずもがな)、でも本作で最も手に汗握るスリリングなシーンとなっている。

毎回毎回ボンドガールを紹介する時、歴代トップクラスとかメチャ美人とか繰り返すが、いや今回はマジでホントに!
メリナ役キャロル・ブーケの圧倒な美貌、スタイルの良さ、引き込まれるような瞳と魅力、なびく長髪…。
ムーア自身も最も印象に残ったボンドガールと語り、ファンの間でも。
ただ美しいだけじゃなく、復讐に燃え、自らボーガンを持って闘う勇ましさ。
またまた同じ事言うが、歴代トップクラスのボンドガール!
他にも、女優でありプロスケーターでもあるリン=ホリー・ジョンソン(納得の氷上パフォーマンス)、主題歌を歌うシーナ・イーストン(こちらも名曲!)、美女率が高いのも本作の特徴。
登場する女性全員とベッドインするような印象のロジャー・ボンドだが、本作はたった2回と驚きの控え目。女性の方から積極的に迫って来ても断るというある意味衝撃のシーンも。どうした、ロジャー・ボンド!?
メリナとは父性的な立場のように思えたが、ラストシーンではやっぱり。
お約束とは言え、親子ほどの歳の差のラブシーンは見るに耐えなくなってきた…。

黒幕もキャラ立ちしたようなのではなく、リアリティーある策士。ジュリアン・グローヴァーが巧演。
また、協力者トポルは、こちらは好演。
前作のレビューでも触れたが、撮影前に亡くなったM役のバーナード・リー。今回は休暇中となっているが、Mのオフィスに入る前、いつもならマネーペニーに花を渡すボンドが、Mにと。本作からの追悼のように感じた。

前作は宇宙にまで行って最大のスケールだが、本作だって負けていない。
海、雪山、イタリアのリゾート地からギリシャの山頂にある修道院まで。
本来で言ったら、本作の方こそ大スケール。

勿論ロジャー・ボンドらしいユーモアもあるが(ラストシーンで登場するは、鉄の女!)、グッとシリアスになり、荒唐無稽な前作から一気にどうした!?…ってくらい面白くなった。
ムーアも歳を取ってきたが、身体を張り、これまでで最もカッコ良くもあった。

『私を愛したスパイ』のレビューで同作がロジャー・ボンド最高作と書いたのだが…、
話の面白さ、スパイ映画としてもアクション映画としても見応えあり、そして美しいボンドガール…。
久し振りに見たら、こちらの方が好きかも!
ショーン・ボンドでは『ロシアより愛をこめて』で採点4・5を付けたので、ロジャー・ボンドだって付けない理由は無い。
大盤振る舞いで、4・5!

近大