「あのラスト、なんで運命の伏線を入れとかないのよ…」女王陛下の007 osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
あのラスト、なんで運命の伏線を入れとかないのよ…
やっぱりボンドムービーの真髄はオープニングに尽きる!
あの痺れる音楽が流れるガン・バレル!からの〜アヴァンタイトル!
本編は殆ど長〜いオマケ。
随分と昔、テレビで観て殆どラストシーンしか記憶に無かった本作。
オープニングのレーゼンビーの登場は、微かな記憶以上に、思っていた以上に、予想以上に、クールで渋い。
ガンバレルでの殆どチンピラ風なウォーキングからの〜真正面への片膝撃ち!の瞬間も最高にカッコいいが、アヴァンタイトルにおける登場までの演出が憎い。
アーストン・マーティンDBS(コネリーのDB5よりも断然カッコイイ!)を走らせながら、
タバコに火を点け、口元のアップのショットが続く。2代目ボンドの顔は、なかなか現れてはこない。
女を助けに走り出すシーンもバックショット。
その海へ向かって走り出す背中は、もう中年の域だったショーン・コネリーより、だいぶ若々しく感じる。
海から助けた女を抱え上げるシーンで、やっと容姿が現れるが、記憶していたよりも全然イケてる。
そして、お約束の格闘シーンの後、女に逃げられ、あの自虐ネタ(2代目のオレはコネリーじゃ、ねえよな…)の笑える台詞「This never happend to the other Fellow」(字幕の翻訳!もっと気を利かせてくれよ!)
そして、オープニングタイトルが始まり、本作のテーマ曲が流れる。
このオープニングタイトルのデザインの方は、初期の頃に比べると特に良い出来ではないが、やはりジョン・バリーの音楽は気分が上がる。
しかし、というか…
やはり、というべきか…
アノ無理筋プロットで2時間半は長すぎる。
今回のボンドの設定(ギャングの娘の婿になるよう唐突に半ば強要され… なんじゃ?そりゃ?な展開)も、コネリーくらいは荒唐無稽なまでのセクシャルな神通力がないと無理な話だ。
二人組プロデューサーの片方ハリー・サルツマンの意向によって今回は原作に近い内容だったらしいが…
そもそもコネリーによって完全に出来上がってしまったイメージから、元々フレミングが描いていた人物像へ根本的に刷新させるほどの意欲は無い。
まあ、元々のボンドのイメージソース自体が、あのデヴィッド・ニーヴンだからねえ。
それをレーゼンビーにやらせるのも無理な話なわけで、そんなことは、スタッフの誰も考えて無かっただろう。
あと諸々のツッコミどころは、いつものボンドムービーではあるが、あのラストシーンだけは、もうちょっと、なんとかして欲しかった。
突如バックミラーに映る車が、なんとも絶妙に不吉な予感で…
しかし実は陽気な連中で、目一杯祝福されて、メデタシメデタシ…
のはずが…
といった、あたりまでは上手かったが…
コネリーの頃には防弾ガラスだったボンドカーが弾丸を貫通させてしまうからには、それなりの伏線は作らんと!
あのシーンのボンドだって、掃射された直後、貫通してるだなんて、全く思ってもないような反応だった訳だし。
なぜ、あのフロントガラスは、M16自動小銃の弾丸を弾けることが出来なかったのか?
というか、なぜ、自動小銃なのに貫通したのが、一発だけだったのか?
そして、なぜ、あんな運命になってしまうにも関わらず、ブロフェルドをキッチリ仕留めず、呑気に逃してしまっていたのか?
やっぱり、こういうところは、しっかり丁寧にやらんと!
特に今回は、今後のボンドの人生を決定づけた悲劇的な、ある意味シリアスなラブストーリーだった訳だし。
最後でジョージ・レーゼンビーが見せた虚無的で哀しい演技が、記憶していた以上に、とても素晴らしかったゆえ、なんとも勿体なかった…
あと今回、待ってました!の4Kリバイバル上映ではあったが、さほど4K感は無かったかな。