スピリッツ・オブ・ジ・エアのレビュー・感想・評価
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奇才プロヤス、25歳の頃の才気爆発作
唯一無二のキャリアを築いた映画監督の長編第一作を紐解くと、後の作品へつながる胚芽が数多く見つかるもの。個人的に「最近のアレックス・プロヤスは元気ないなあ」と感じていた私にとって、近年デジタル・リマスタリングされた88年制作の本作は、限りある予算と条件を駆使して作られた、青臭くもビリビリ来るほどの表現欲求あふれる「野望の塊」のように思えた。「ダークシティ」や「ノウイング」などの商業映画に比べると構成面で退屈な箇所はあれど、しかし注目すべきはこの映像感覚だろう。何もないだだっ広い荒野と一軒家の対比、刻々と変わりゆく光と影、遠くにそびえる壁のような山々、そこに向けて羽を広げる奇妙奇天烈な男たちの姿など、見ているだけであまりにその絵力が強くてもうグイグイと引き込まれる。リアルタイムで鑑賞した人々が「こいつは必ず化ける!」と太鼓判押したのも頷ける。持ちうる全てを注ぎ込んだ才能の見本市のような作品だ。
地獄の荒野
他のレビュアーさんも書いていましたが、バグダッド・カフェやテリー・ギリアムの世界観に似ていました。ユダヤ教やキリスト教がでてきたので、出エジプト記をモチーフにしているのかと思いました。飛行機で天に行くか、神を信じるか、この荒野は地獄です。
アート感満載
90年代アート映画って感じの空気。グズグズなかなか進まない話、こんな長い90分を味わったのは初めて。砂漠と青空の絵がバグダッドカフェを思わせる。ちゃんとした監督らしいのでまさかとは思うけど超売れた映画に便乗したわけじゃないよね?当時はそれなりに価値のあった映画なのかもしれないけど不朽の名作って感じではないからわざわざ掘り起こす必要があったのか疑問。
リアリティのない妄想劇
1989年の幻の名作復活と聞いて観てみたが、余りの突飛な舞台、人物設定に只々困惑。
砂漠の中の一軒家、車もなく町からも遠い、水や食料はどうしているのだろう、ハインツのベイクドビーンズを食べていたが、とうてい長期に暮らせる訳はない。
飛行機の話と思ったら鳥人間コンテストに出てくるような簡素な人力飛行機、主人公は足が使えないのに何故作ろうとしたのだろうか。
登場人物も砂漠で厭世的に暮らす兄妹と謎の逃亡者の3人だけ、掘り下げもなくヒューマンドラマにもなっていません。
ことほど左様に全くもって意味不明。もっとも製作・脚本・監督とアレックス・プロヤス監督の独り舞台だからリアリティのない妄想劇に異を唱える者もいなかったのでしょう。
オーストラリアの独立系プロダクションが作った30年前の16㎜フィルムの妄想劇をなんで今頃になって再公開したのか、人や動物の骨が転がり、自動車がモワイ像のように直立した奇妙な風景、仰々しいBGMなどスピリチュアルな作風を褒める人もいるようですが、私には理解できませんでした・・。
go home or burn in hell 出エジプト記♥
go home or burn in hell?!
彼はエジプトの方だからね。
トイレののぞき窓が三日月だった。
3人の預言者がやがてやって来る。
MADMAX、バグダッド・カフェ、エル・トポ、少女終末旅行を連想した。
飛べフェニックスのように単なる脱出のストーリーではないと見ると大変にメッセージ性が高く、ひょっとすると現状にピタリ。まさかね♥
【独特過ぎる荒涼たる世界観と独自性が凄い、絶望と希望を描く孤高のファンタジー。ピーター・ミラーの荘厳な音楽も印象的である。】
■荒野にある小さな家に住む足の不自由なフェリックスは、手作りの飛行機で空を飛び、この場所からの脱出を夢見ていた。
一方、妹のベティはここを一生離れてはいけないという父の遺言を守り、十字架に囲まれて暮らしていた。
ある日、ひとりの逃亡者スミスが現れ、フェリックスと共に飛行機で、荒涼とした土地からの脱出を繰り返す。
◆感想
・フライヤーは手元に有ったので、気になって居た作品である。
・鑑賞前は半信半疑で有ったが、物凄い独自性を持つ映画であった。荒涼とした土地の一軒家。家の軒先には無数の十字架が掛かっている。
・精神を病んだかのような、ベティの白塗りの顔。
<以下、フライヤーより。
撮影地として知られるオーストラリア、ブロークン・ヒルで登場人物は3人のみ、4年半の月日を費やし制作。
「空を飛ぶこと」に憧れを持つ男を軸に、絶望と希望、夢と現実の寓話を描き出す。
・・どこか、マッドマックスを思わせる荒涼感。テリー・ギリアム作品を想起させる世界観。
この作品が、1988年の制作とは・・。
凄い映画を観た。>
カルト的ファンタジーの鳥人間コンテスト奮闘編
砂漠の真ん中にポツンと佇む小屋。外には錆びた車3台が頭から地面に突き刺さっていたり、やたらと十字架のオブジェが多い。赤い土と真っ青な空。どことなく『バグダッド・カフェ』の映像にも似ている。そんな小屋に住む足が不自由な兄フェリックスと狂信的な妹ベティ。そこへスミスと名乗る男がフラリと訪れる。
「北に向かっている」とスミス。「北には砂漠から出ることはできない。高い壁があるからな」とフェリクス。スミスに対してはとても優しく、逃亡者の雰囲気があるのに数日泊まっていけと、もてなす。彼は手作りの飛行機を作ることで頭がいっぱい。やがて、壁を飛び越せるほどの飛行機を完成させたいのだ・・・
スミスをとにかく追い出したい妹ベティ。ちょっとファンキーだが、部屋の中は十字架だらけ。スミスのことを悪魔と呼ぶくらい毛嫌いしていた。彼女の弾くジャイアント二胡がまた独特の雰囲気を醸し出していた。
飛行機は失敗、また失敗・・・と、まるで鳥人間コンテストに初めてトライする大学生みたいで楽しい。また、スミスに対しては体を鍛えるようにとロンドンブーツを渡す。どんな鍛え方やねん!
まぁ、映像や飛行機の造形などを見ると、カルト作品なんだろうし、スミスが一体何者で、誰に追われてるのかもさっぱりわからない。ストーリーが単純なだけに、だらだらとした進み方には多少眠気も覚えてしまいました。ちらっと登場した巨大櫓はいったいどこへ・・・
映像の中を漂う何か
ほぼ3人だけ、何の説明もなく。
ものすごく引き込まれた。
物語に、ではなく映像の中に漂う何かに。
そして、オーストラリアのポッカーンとした空と赤い大地、乾いた風、にも。
家や室内を飾る沢山の十字架、ベティの衣装、メイク、飛行機、垂直にそそり立つ車、ロウソク、音楽も、細部にわたって非常に見どころの多い映画だった。
物語は少しもスッキリしませんが、ファンタジーということでしょうね。
2020年3月13日 映画館たった2人で鑑賞
画も美術も、衣装も才気や持てる全てを注ぎ込んだのが明らかに分かるの...
画も美術も、衣装も才気や持てる全てを注ぎ込んだのが明らかに分かるのもとてもいい。けれど主要人物が全員頭がおかしいので全く映画世界に入っていけない。つらい。
鳥人間コンテスト
設計している段階、何度も挑戦する描写に"飛ぶ"説得力が微塵も感じられなくて、飛んだ後もアレで飛べてしまう演出の雑さ。
発狂しているだけの妹、兄も次第におかしくなり、ヒステリックな兄妹にイライラする。
映画全体のLOOKに映像の色が綺麗で、雰囲気や世界観は素晴らしいのだが、淡々過ぎる進まない話の展開に興味の持続力は低下する一方で。
アレックス・プロヤス、無意識にも「クロウ/飛翔伝説」と「ダークシティ」は鑑賞済みで、ファンタジー要素とディストピア感満載な誰かに似ている監督ってイメージは本作を通しても変わらない。
大人の寓話
色褪せて赤茶けた大地、乾いた青空、廃墟のようなオブジェ、立ち並ぶ十字架、ゴシックな装いの女。何処を切り取っても、アート作品のように美しく完成されたビジュアル。
世界背景は詳しく語られない。ディストピアめいた荒野の一軒家に住む、足の不自由な車椅子の兄と、精神的に不安定な妹。兄は飛行の夢に取り付かれ、妹は父に倣って聖書に傾倒している。何者かに追われ北を目指す男がそこに辿り着くが、荒野の北は、壁の如き崖が立ちはだかり、人力で越える事はできない。兄は男に、崖を越えるため飛行機作りへの協力を持ちかけ、妹は、悪魔よ立ち去れと罵声を浴びせる。
稚拙な飛行機。失敗続きの実験、ヒステリックな妹の挙動、兄の盲信、ヒタヒタと近付いてくる追跡者の影。吹き抜ける風、軋む建屋、不安なストリングス、食器の擦れる音、空を埋め尽くす渡り鳥の羽音。
絶えず不安を掻き立てられ、私は、早くこの場所から解放されたいと思いつつ、本当に飛行機は飛ぶのかと疑念に苛まれる。映画の世界に引き込まれながらも、居心地の悪さにいつまでも尻が落ち着かない。
飛行決行前夜、妹は頑なに旅立ちを拒み、男の殺害を主張する。「何故心を開かないんだ。ほんの少し空を見上げてみるだけでいいんだ!」兄は叫び、喧嘩別れで終わったものの、妹を見捨てて旅立てない。残る決意をし、翌朝男を一人で空に送り出す。
飛び出した飛行機は風を捉え、必死に宙へと浮き上がる。閉鎖世界から漸く解き放たれる解放感と同時に、凄まじい喪失感が私の胸を握り潰す。
小屋の扉も、柵も、使える木材はあらかた、飛行機と滑走路に費やしてしまった。再びまともな飛行機を作り直す事は恐らく不可能だろう。成功の歓声を上げながら、遠ざかる飛行機に手を振り、「じゃあな。…じゃあな。」と小さく呟く兄の瞳の切なさ。私も多分、空に飛び立てず、見送る側の人間だから。
いつか生の終わる時、彼の魂は大気に解き放たれ、雲となって自由に漂えるだろうか。
作品の世界観には、何処か宗教的なメタファーも多く感じる。
十字架、聖書、追手の三人の人影は、東方の三博士を連想させる。だとすれば、ナザレの男は、自己犠牲を選んだ兄か、天に飛び立った男か。
乾いて淀むような世界の感触と、瞼に焼き付く赤と青の風景、神経を逆撫でするストリングスを思い返しながら、いつまでもつらつらと思索に耽っていたいと思わせる。
映画を好きな者として、これ以上贅沢な時間はない。
スピリッツ・オブ・ジ・エア!!
観た人ならわかる。
ファンタスティック映画というジャンルがもし正当な地位を得ているとするならば、
この映画がバグダットカフェに並ぶ20世紀屈指の名作であることを。
そんな映画が現在どのメディアでも入手不可能だという状況は信じがたいものがありマス。
ブルーレイで出せとは言わない。せめてビスタサイズで、残存フィルムからデジタルリマスターしてDVDで出してくれ。
売れなくてもそれだけのことをする価値がある。後世に残すだけの価値がある。
もし出してくれたら、すぐさまレンタル屋でレンタルする(だってどこにもないんだもん!)。
つーか手に入るようでしたらどなたか是非教えてください。
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